第77話 民泊サバイバル

「なぁ、ここ本当に家か?」

「家の形をした何かね」


2人がここまで酷評する家。

至る所から蔦が垂れていて、家と呼ぶには穴が開きすぎている。

ちなみに小さい。


「すいませーん、誰かいますか?」


一回目は応答がなかった。


「すいませーん!」

「聞こえとるわ! 何回もうるさい」


2回目にして、半ギレの爺さんが出てきた。

ほぼホームレスだ。


「これって家ですか?」

「見たらわかる」

「見ても分からないから聞いているのだけど」

「おい」


小倉は臆することなく向かっていく。

なんだろう、こいつは。

空気が読めないんだろうか。


「家だよ、ところで君べっぴんさんだねぇ」

「おい、態度が違くねぇか?」

「当たり前だろ、男はみんな女の子が好きなんじゃ」


こいつから犯罪者臭がするんだが。

なんで民泊とかやってんの?


「雨が降ってるから、まぁ入れ」

「お邪魔しまーす」


早速中に入れてくれた。


「ここにどう泊まれば良いんだよ·····」


この家には、一部屋しかなかった。

ちなみに狭い。


「平気じゃ、わしはあっちの方にある家に泊まる」

「民泊の意味は?」

「んなもう無い」

「開き直んな!」


このじじいと喋っているだけで、体力が持ってかれる。


「それじゃあな」

「お、おい! 待てよ」


俺がどれだけ止めようと、じじいは止まらなかった。

もう意味が分からない。


「·····どうする?」

「この学校の防犯体制が気になるわね」


民泊するには、この家は向いて無さすぎるし、爺さんは犯罪者すぎる。

来年からは、もっとちゃんと選んだ方がいい。


「どうします? ご飯とかは」

「なんか張り紙があるわよ」


壁にでっかく、貼ってあった紙にはこう書かれていた。

食材は毎食届けます。

風呂は露天風呂があるので、頑張って沸かしてください。

PS、布団は1セットしかないです、ごめんね。


「あのじじいをどう調理してやるか」

「釜茹でとかどうかしら」

「悪くねぇな」


あの爺さんの調理方法で、盛り上がる。

ていうか、無責任過ぎない?


「なんか届いてるぞ」


大きな箱には、採れたての野菜が入っていた。


「今日は野菜か·····」

「なんか素っ気ないわね」


せっかくの沖縄なのに、全然ただの野菜炒めじゃん。


「私が料理するから、あなたが露天風呂を沸かしてね」

「それは良いけどさ·····」


なんか、新婚みたいじゃね?

思っても口には出さなかった。














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