第67話 半死人の御影ユウキ

「いやぁー、幸運だったな、小倉」

「·····」


2日もユウキと、泊まらなければ行けない小倉は、言葉を失っていた。


「·····そんな嫌か?」

「ち、違うわよ、誰だって男子と2人じゃ嫌でしょ?」

「ほんとかよ」


取り繕った嘘に聞こえたが、どうでも良い。

今は、自分の幸運を褒めることにした。


「何を持っていくか·····」


家に帰宅し、沖縄旅行へのパッキングを行う。

沖縄など初めてなので、何を持っていけば良いのかが分からない。


「水着はマストだろ、後は·····」


歯ブラシ、着替え、トランプと必要な物は詰め込んだ。

足りない物は現地で揃えれば良い。


「いよいよ明日か·····」


期待に心を踊らせた。


「俺、飛行機初めてなんだよね」


ユウキは、本土から出たことが無いので飛行機は初めてだ。


「まぁ、平気だろ」

「お前は、そうだろうけど·····」


よく飛行機に乗る凌太は余裕の表情だ。


「それじゃあ搭乗だぞー」

「·····」

「口数減ってんぞ」


ワクワクよりも、恐怖が勝っている。

ネットのクチコミのせいだろう。


「そんな怖がんな、ジェットコースターとかと一緒だって」

「そ、そうなんだ」


ユウキはジェットコースターも苦手である。

余計に平気では無くなった。


「ユウキ、いよいよ離陸だぞ」

「·····」


離陸時にユウキは一言と発さなかった。

なぜなら、思いっきり気を失っていたからだ。

起きたら起きたで、吐きまくるので最悪だった。


「おぇぇぇぇええええええ」


機内のトイレから聞こえてくる嘔吐の音は、全員の気分を害す。

何度もトイレの往復を繰り返し、着いた頃には少し痩けていた。


「し、死ぬかと思った·····」

「半分くらい死んでたけどな」


顔面蒼白で、半死人。

その死人ですらも、生き返らせてしまうのが沖縄の景色である。


「うぉぉ! 海だ」


沖縄での一日目が始まる。











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