第61話 ユウキ救出作戦

「お前はここでじっとしていろ!」


俺は独房室のような所に、入っていた。

鍵が外からしか開かない為に、逃げる事はほぼ困難。


「はぁ、せっかくの文化祭が·····」


外からの楽しそうな声に、精神を抉られる。

自分が悪いことはわかっているが、それでもあんまりだろう。


「あいつは何がしたかったんだよ」


古川凛は、ユウキを捕まえた事によって、事情聴取から逃げたことが許されていた。


「あと9時間か·····」


文化祭終わりの花火までの時間だ。

何とか逃げ出さなければいけないのだ。


「絶対逃げてやるからな」


凛には、一泡吹かせてやりたい。

その後はどうとでもなれば良い。


「え!? ユウキが捕まったの?」

「噂話だけどね」


ユウキが捕獲されたという話は、すぐに広まった。


「しかも古川さんに捕まっていたわ」


小倉は、全てを見ていた。

凛の圧倒的な力の前に、ユウキが伏せられていた所を。


「なんでユウキは、あの子を助けようとするんだろうね」

「優しいからじゃないかしら」


ユウキは困っている人が居れば、誰でも助けようとする。

人に自分の優しさを分け与えられるのだ。


「そう言えば、風夏ちゃん、ユウキに対する接し方変わったよね」


最初は強く当たっていたのに、今は凄く優しくなっている。

何かあったのだろうか。


「べ、べ、別ににも無いわよ?」

「そっちに行っちゃったんだ」


小森はじーっと、小倉を見つめた。

恋愛センサーが発動。


「祭りでなんかあったね、こりゃ」

「「え!?」」

「美月のは知ってたけどさ·····」


まさかの図星だった。

わかりやすい反応、ありがとうございます。


「話は変わるけどさ、ユウキを助けない?」

「どうやって?」

「花火くらいの時間になったら、先生はみんなそっちに集中するじゃん」


毎回、花火の時は羽目を外しすぎた生徒が怒られている。

年々監視が厳しくなっている。


「その時間だったら、ユウキを助けられる·····?」

「でも、場所が分からないわ」


問題はユウキの居場所だ。

思い当たる節は3つ。

会議室、校長室、説教室だ。

説教室とは、反省文や指導などの時に使われる。


「どれも鍵が必要だよね」

「私が何とか言って貰ってみるわ」

「お願いね」


女子3人の作戦は完璧。

後は、小倉が鍵が貰えるかどうかだ。


「色々、借りがあるから·····」


ユウキの救出作戦が動き出した。

時間は飛んで夕方、ユウキは校則を読み上げていた。


「人に迷惑をかけない!」


文化祭も終わりを迎えている頃、ユウキは校則を何度も往復して読まされていた。

これで40往復目だ。


「だぁぁ! やってられっかよ」


時間はもう5時を迎えていた。

約束の時間までは、あと1時間。


「もう無理か·····」


ユウキは諦めて、天を仰いでいた。


「どうしたの? 屋上は禁止だよ」

「いいから、今年は屋上が良いの!」


凛と花の2人は、屋上に到着していた。


「僕は怒られても良いけどさ、花はダメじゃないの?」

「へ、平気だよ·····?」

「ほら無理してるじゃん」


本来、禁止されている屋上で、花火を見たらそれは凄く怒られる。

慣れていない花は、だいぶ無理をしている。


「私は凛ちゃんと、屋上で見たいの」

「·····なら良いよ」


何か裏がある事には気づいたが、あえて凛は乗ることにした。


「花火楽しみだなー」



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