番外編 女子3人トリオ
「ねぇ、ユウキは?」
「指名手配されてる」
「何やってるのよ、本当に」
残された人たちは、一心不乱にたこ焼きを売っていた。
ユウキの指名手配の話題でいっぱいだ。
「御影君って、本当に厄介事に首を突っ込むわよね」
「そうだね、ユウキは昔からお節介だからね」
美月が昔、買っていたハムスターを外に逃がしてしまった時の事だ。
「ユウキー! ハムスター逃げちゃった」
「えぇ? 大変じゃん」
「探すの手伝ってよ」
「良いよ」
それから数時間探しても見つからなかった。
美月は野生に帰ったのだろうと、諦めて帰った。
ユウキももう諦めて帰っただろうと思っていた。
夜遅くに、家のピンポンが鳴った。
「美月! お前のハムスター、見つかったぞ」
泥だらけで、洋服が破れていた。
それでも笑顔だった。
「ま、まだ探してたの?」
「当たり前だろ、居なくなったら困るだろ」
ずっと変わらない。
彼は自分がどうなろうと、他人を優先する。
これは彼の才能だと思う。
私はあの日からずっと──。
「おーい、美月」
「う、うん?」
「なんか虚空を見つめてたよ」
「昔を思い出してた」
「ユウキとの事?」
小森は色々と、感覚が鋭い。
危険人物の1人である。
「そ、そ、そんなんじゃないよ! たこ焼き作ろっと!」
「へー」
「辞めてあげなさい、小森さん」
更にからかおうとする小森を、小倉が制止する。
「可哀想でしょ? あんまりいじめたら」
「そっか、ごめんね美月」
「余計な詮索しないでー!」
このトリオでは、美月が常に弄られる。
まぁ、色々あるからね。
「このお客さんで最後だ」
夕方となり、一日目が終了した。
結局、ユウキは最後まで帰ってこなかった。
滞在してた時間は5分程度だろう。
「ユウキは本当に何してんだろうね」
「またユウキの事だ」
「仕方ないじゃん! だって指名手配犯だよ」
ちげぇよ、とツッコミを入れたかったが間違いではない。
「彼は、──タコ星人になっていたわ」
「「タコ星人!?」」
普通に生活してたら、聞くことの無い言葉だ。
小倉は一部始終を、2人に説明した。
「本当に凄いじゃん、それ」
「タコ星人カッコイイな·····」
ぼそっと美月が呟いた。
「み、美月·····、タコ星人だよ?」
「カッコイイ訳ないわ」
間違ったことを、しっかりと注意できるのが、友達だ。
だから必死で注意した。
「じゃあ普通のたこは?」
「カッコイイ」
「イカは?」
「あんまり」
美月がたこ好きなだけだった。
2人は安堵した。
「良かった、まだ感性は死んでないみたい」
「それでもタコよ? 死にかけじゃないかしら」
こうして一日目は終了した。
小倉と小森にはタコのかっこよさが理解出来なかった。
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