第57話 女子を助けてこそのハーレム王

「えー、何それ、だっさ」

「なんとでも言え」


先生に連れられ、屋台に戻った俺は小森に馬鹿にされていた。


「あんなに浮かれてたのにね」

「俺のピュアな心を弄びやがって」

「ははっ」


今は何を言われてもいい、結果的に笑っているのは俺だ。

まずはここを抜け出さなければならない。


「ユウキー、なんか話したい人が居るって」

「考え事してるから無理」

「女の子だけど·····」

「今行く」


ま、まぁ、無視をする訳には行かないもんな。

可哀想だしな。


「はーい、御影です」

「 み、御影君ですか·····?」

「そうだけど」

「凛ちゃんを助けてあげて」

「は?」


このメガネ女を引っぱたいてやろうかと思った。


「俺が助けて欲しいの! 以上」

「は、話を聞いて·····」

「えー、良いよ」


なんだか俺がいじめているみたいじゃないか。

鋭い視線が刺さってるぞ。


「凛ちゃんは、お父さんのせいで男の子に対してあんな風になっちゃったの」

「そーなんだ」

「お母さんに暴力を振るうお父さんを見て、全ての男が敵だと思っちゃったんです」

「なんだいそれ」


少なくとも、父親が悪い奴なのはわかった。

でも、無差別に男子を攻撃する理由にはなっていない。


「お母さんは出ていっちゃって、お父さんとずっと暮らしていたの」

「なんでお前がそれを知ってるんだ?」

「私は凛ちゃんと小学校からの友達だから·····」

「·····そうか」


彼女は、これ以上凛が周りを傷つけるのを、見たくないのだろう。

辛そうに俯いた。


「お父さんは凛ちゃんにも暴力を振るったの」

「最低じゃねぇか」

「しばらくするとお父さんも出ていって、凛ちゃんは1人になった」


父の暴力に耐えられずに、母は出ていった。

それから父も消えた。

全てを受け入れるには、まだ幼すぎた。


「なんで、あんな事をするようになったんだ?」

「·····分からない」

「そっか、ありがとな」


なんだよ、助けたくなってきたじゃねぇか。

辛い事がある人は、必ず他人を傷つける。

だったら誰かが助けてやらないと、それは続く。


「俺に任せろ、協力はしてやるよ」

「ありがとうございます」

「で、お前の名前は?」


名前も知らない奴と、協力出来るか。

て言うか、知らないまま喋ってたのかよ。


「黒崎花、よろしくお願いします」

「あぁ、まじで協力頼むぜ」


古川凛と、男子たちを救うべく、2人は動き出した。

一方、ユウキのクラスの屋台では·····。


「御影はどこに行った」

「し、知りません·····」

「見つけ次第、徹底的に絞ってやる·····」


鬼教師も動き出していた。





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