県営市民迷宮

あやしげ

ぶきやぼうぐはそうびしないといみがないぜ

 小学校時代からずっと続けてきた剣道で一番になりそこねたのは、高校も卒業しようかって頃だった。

 一番じゃなくちゃ意味がないとは思わないけど、それまで頑張ってきた反動が一気に押し寄せてきて、何もやる気にならなくなったのは事実だ。

 おかげで大学受験なんかも最初から放棄しちまって、担任が頼み込むように持ってきた公務員試験ぐらいしか受けなかった。

 どうせこっちもダメなんだろうと思ってたら、よくわからないコネで合格してたらしい。

 世話になった担任の顔を立てるつもりで市役所の面接に行った。

 なんでも4年くらい前に開設した施設で空きが出てしまったらしく新卒を大量に募集しているそうだ。

 進学しなけりゃバイトかニートって考えてたから、働き口があるならありがたい話だと考え直して、真面目に応募したところ一次面接は通ったらしく、研修の案内が届いたというのが昨日の話。

 しかしなんで剣道の防具と竹刀一式持っていかなきゃなんないのかね?

 俺は使い込んでボロボロになった防具と竹刀を持って市役所に向かった。

 市役所の窓口で挨拶をすると暫く待たされたあとに会議室に案内された。

 どうやら研修前の事前説明があるらしい。

 会議室には10人前後の俺と歳の変わらないような男女が集められていた。

 服装に関しては普段着で構わないとの事だったためいつものカーゴパンツとパーカーで来たけれど気合入ったカッコの奴もたまにいて特に目立ったのは白衣のメチャ可愛い女だった。

「結構またされるね。何が始まるのかな」

 声もスゲエ可愛い。来てよかった。

「さあ、わかんないけど説明とかあるんじゃない?」

「そうだね。あ、私は星空果奈ほしぞらはてな。君は?」

「俺は佐倉暁さくらあかつき。よろしくな。」

 名前も可愛い…?ハテナ?

 とか考えてると会議室のドアが開いてスーツを着た職員が入ってきた。

「みなさんおはようございます。本日はお集まりいただきありがとうございます。只今から赤紫県立東雲市民迷宮の施設講習を始めます。」

 そんな名前の施設だったのか。

 今考えたような名前の施設だ。

「まずは自己紹介から。私は本施設の責任者代行を任されております鋼塚はがねづかと申します」

 スーツに銀縁メガネという当たり障りのない格好の職員はそう名乗った。

「本施設は国民の能力向上を旨として四年前に設立されましたが、深刻な人手不足になやんでおりまして、今回大規模な新卒採用に至った次第であります。」

 なるほど。道理で俺みたいなのにも声がかかった訳だ。

「今回は研修ということで本施設の運営をまずは来場者の立場から体験していただき、同時に適性検査を行い適宜部署に配属させていただくという流れになっています」

 おいおい、ちょっときな臭くなってきたぞ。

 この研修次第では変なところに配属されたりするわけか。

 こりゃ気合いれてかからないと駄目だな。

 説明は小一時間程で終わり、休憩を挟んだ後に四人で組を作らされた。

 ある程度の能力をみて組み合わせされたみたいだけど

 さっきのハテナちゃんが一緒のチームに入ったので一人足りない事はあまり気にならなくなった。

 俺のチームは

 佐倉暁(俺)

 星空果奈 (かわいい)

 蒼原慧あおはらけい (メガネ)

 この三人らしい。

 ハテナちゃんは国立癒し大学二回生で

 インターンとしてこの施設で働くらしい。

 なんでも現場経験を積まないと進級出来ないとのことらしいが大変だな。

「蒼原です。七本足魔法魔術専門学校を卒業しました。よろしく」

 メガネが喋った。

「おう、よろしくな。しかしこれから何やるんだろうな。」

「あれ?佐倉くん知らない?」

「アカツキでいいよ。知らないって何を?」

「これから僕ら迷宮に潜るんだよ。一人足りないのは痛いねー」

 迷宮に?潜る?

 どういうことだ。

 市民の体力向上の施設じゃねえの?

 なんかスポーツジム的な施設を想像してた俺は面食らった。

「専門学校の時にも研修で来たことあるんだ。あ、武器と防具は装備しないと意味がないぜ?」

 それで竹刀とか用意しろって言ってたのか。

 よくわからんが面白いことになってきたぞ。

「それではこれから迷宮に潜ってもらいますが研修初日なのであまり無理はしないように。食料や武器は中でも調達出来ます。最下層でまたお会いしましょう。では幸運を。」

 案内された迷宮の入り口は異様に大きくそびえ立っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る