拾参 最終配信 其の二
77 侵入の巻き
猛スピードで竹島に近付く一隻の
「あんなスピードで突っ込んで来るなんて、玉砕覚悟みたいだな」
徐々に大きくなる揚陸艦を見た視聴者は、韓国の覚悟の大きさを知ると同時に、半荘を褒め称える声があがった。
スマホの画面に映し出されたその書き込みを見た半荘は、照れながら答える。
「よせよ。たまたまだ。たまたま日本艦隊を止めたから、両国の戦争には至らなかっただけだ」
どうやら視聴者は、半荘の「竹島を売る」発言が、この事態を踏まえた発言だと思っているようだ。
「さてと……これ以上近付かせると、陸に乗り上げるまで止まりそうにないな。ちょっとお引き取りをお願いして来るよ」
それだけ告げた半荘は、胸元にスマホをしまい、岩山を滑り降りる。
そして、さらにスピードを上げて海面をひた走る。
そんな半荘の行動に、揚陸艦は指をくわえて見ているわけがない。
半荘に照準を合わせて艦砲を放った。
半荘も予想していたので進路を変える。
そうすると、元居た進路に着弾した玉が水しぶきを上げた。
もちろん一発で終わらず、次々に艦砲は放たれ、そのつど水しぶきが上がる事となる。
半荘はジグザグに海を駆け、艦砲を避けきると、次なる攻撃が降り掛かる。
機関砲掃射だ。
連続して放たれる弾丸は、数秒で100発に達し、右に左に薙ぎ払われる。
当然半荘は避けているが、海の上を走る行動自体が疲れるのか、たまに当たりそうになった。
しかし、ゴールは半荘に向けて進み続けている。
半荘と揚陸艦は対面して移動しているので凄い速度で距離が詰まり、機関砲で狙えない角度まで接近した。
揚陸艦に乗る韓国兵は探そうと自動小銃を構えて船の下を覗くが、半荘の姿は無い。
両サイド、後方と手分けして探すが、半荘は消えている。
「ワーワー」と騒ぎ声があがる中、揚陸艦の
『うわ~~~!』
半荘が、韓国兵をぶん投げた声だ。
半荘は揚陸艦の真下まで走るとジャンプした。
平地ならば揚陸艦ぐらい飛び越えられたのだが、海の上ではジャンプ力は半減。
水面から甲板の真ん中辺りに張り付く事となった。
つるつるの側面には、【ヤモリの術】とかいうオリジナル忍術で対応。
手の平に窪みを作り、真空状態にして、吸盤となった手でくっついた。
さらに、【隠れ身の術】の合わせ技。
揚陸艦と同じ色の布を頭から被って、韓国兵の目を騙した。
そのまま側面を腕の力だけで登りきり、揚陸艦に乗り込むと、下を覗いていた韓国兵の襟元を掴んで放り投げたのであった。
「あ~。えっと……多すぎない??」
甲板に立った半荘は質問するが、誰も答えてくれない。
何故、質問したかと言うと、覗き込んだ韓国兵は多数いたにも関わらず、自動小銃を構えた韓国兵がずらーっと並んでいたからだ。
それは当然。
半荘が船を沈めまくったから、いつもより倍以上の韓国兵が乗り込んでいたからだ。
その韓国兵は、仲間の韓国兵が射線から外れると、引き金に指を掛ける。
『放て~~~!!』
そして、隊長の合図で一斉射撃。
「わっ!」
パラパラと放たれる弾丸は半荘にも向かっているが、両サイド、甲板ギリギリまで向かっている。
要は、無駄玉になっても構わないと、並んだ位置から真っ直ぐに放ったのだ。
これでは半荘の【分身の術】も、横に避ける事もままならない。
半荘の逃げ道は上か下しかないので、しゃがんで避けるが、そうも上手くいかない。
『二列目、下方10度に放て~~~!!』
隊長の命令で、下にも逃げ場が無くなってしまった。
「くっ……この!」
この展開には、半荘は二本のクナイを構えて対応。
弾丸を斬るまではいかないが、そっと当てて軌道を逸らしている。
半荘の人間離れした動きにどよめきが起こるが、隊長は声を張りあげ、統率を乱さない。
『前列、交代だ! 一瞬も弾丸を途切れさせるな!!』
数百、数千の弾丸が途切れる事なく襲い、半荘は後退を余儀なくされる。
上半身だけならクナイで守れるが、下半身に向かう弾丸は下がるしかない。
かと言って、上に跳ぶのは愚策。
逃げようの無い空中では、狙い打ちされるのがオチだ。
「くっそ~……こうなったら!」
悔しそうに呟いた半荘は、韓国兵の交代のタイミングで右手のクナイを懐に入れた。
そして、背中に手を入れると同時にしゃがみ込む。
『撃ち方、やめ~~~!』
その直後、韓国兵は、半荘を見失うのであった。
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