拾弐 最終配信 其の一

72 反撃の巻き


「さて、この島が拙者の国になったのだから、韓国に反撃しま~す!!」


 全世界で忍チャンネルを見ている人が「マジで!?」と思った発言に、半荘はんちゃんは言葉足らずだったと付け足す。


「あ、さっき忍の国になったから、反撃はおかしいか。これまで何度も攻撃をして来た韓国艦隊がそばに居る限り、平穏は無いから追い返そうと思います」


 言い直した半荘のセリフに、全世界の視聴者はこう思ったらしい。


「「「「「問題はそこじゃない!」」」」」



 世界中で騒ぎが起こるが、騒いでいるのは島の外だけじゃなく、ジヨンも騒いでいた。


「いい加減にして! そんな事を言ったら韓国が本気と受け取って、いますぐ攻撃して来るかもしれないじゃない!!」


 ジヨンは食って掛かり、説教を始めるが、半荘は聞く気がない。

 それどころか、指示を出し始めた。


「まぁまぁ。あの艦隊が攻撃する前に、何隻か沈めておこうぜ。カメラを、俺じゃなくて艦隊に向けてくれよ」


「だから、あおるような事を言うな!」


「急いでくれよ~。じゃないと、ここは火の海になるぞ~?」


 そうして説得を繰り返す半荘は、ジヨンの両肩を後ろから掴んで撮影位置に移動させた。


「そこな! ちょっとの間、動かないでくれよ!!」


 半荘はそれだけ言うと、竹島の頂上付近に移動し、ブルーシートをバサッと外して準備をする。

 そして、声を出しながら行動を起こす。


「まずは韓国艦隊の両サイドを、一隻ずつ沈めるからな。船の人~! 死にたくなかったら、いますぐ海に飛び込んでくださ~い!!」


 暢気のんきなアナウンスは、Vチューブに乗って韓国艦隊にまで伝わった。

 もちろん韓国艦隊の乗組員は、「武器も無いのに何を言ってるんだこいつ?」と笑っている。


「じゃあ、行きます!!」


 Vチューブの映像には、一本の光の線が一瞬見えただけで、カメラを構えていたジヨンも何も気付かずに撮影を続けている。


「よし! 命中!!」


「え?」


 半荘の嬉しそうな声に、ジヨンは振り向く。


「何が『命中』なの?」


「見てたらわかるよ。じゃあ、次々行くぞ~!!」


 半荘の答えに、ジヨンは首を傾げながら艦隊に視線を戻すのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 その少し前、韓国艦隊の一番端に配備された船の中では、隠し持ったスマホで、笑いながらVチューブを見ている韓国兵の姿があった。


『あははは。船を沈めるんだってさ』


『ここから独島まで、どれだけ離れていると思っているんだ』


『俺達の銃すら届かないぞ。あははは』


 笑う韓国兵が大多数の中、忍チューバー中毒の男がボソッと呟く。


『忍チューバーなら、やれるかもしれない……』


『はあ? どうやってだよ』


『ほ、ほら、クナイで1キロ先の扇を居抜いた動画を知らないか?』


『知ってるけど、フェイク映像だろ? 仮に事実だとして、ここまでは届かないし、外れるに決まっている』


『いや、あの時の映像で、忍チューバーは本気を出せば5キロはいけると言ってた。正確に計れないからやめたとも……』


 男の発言で笑いが止まるが、それでも信じられないと笑みを浮かべる韓国兵は反論する。


『あはは。5キロ? スナイパーでも届かないし、当てられるわけがないじゃないか』


『いや、あの忍チューバーだそ?』


『そもそも、投げるのはクナイだろ? この鉄の装甲を貫けるわけ……』


 韓国兵が反論していると、突如……


 ギンッ! バリバリバリバリ


 と、船内に金属音と何かが破れる音が響き渡った。


『いまの、何の音だったんだ?』


『ま、まさか……』


 韓国兵達はスマホの映像に注視するが、すぐに答えはわかった。


『おい! 忍チューバーが命中とか言ってるぞ!!』


『やっぱり何かしたんだ!』


『うわ! さっきの音がまたした!!』


『し……沈むのか??』


 韓国兵達が息を呑んだその時、けたたましく警告音が鳴り響き、艦内放送に変わった。


『緊急事態、緊急事態。本艦は忍チューバーの攻撃を受け、船底から浸水している。復旧の見込み無し。直ちに脱出されたし。これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない』



 艦内放送を聞いた韓国兵は慌てふためいて、次々と甲板から海に飛び込むのであった。

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