拾 相談

60 手紙の巻き


 時は、竹島にドローンが到着した場面。

 半荘はんちゃんはクナイを構えてドローンを凝視していた。


「う~ん……何も積んでないのか?」


 ドローンにはカゴが取り付けられているが、中には何も入っていないように見える。

 ドローン自体が爆発する可能性もあるが、半荘は近付くのを待つ事にした。


 そうしてドローンが竹島の港付近まで来るとホバーリングして、カゴの中に入っていた封筒を落とした。

 半荘は首を傾げながら封筒に近付くと、ドローンは180度旋回して、韓国艦隊の方向に飛んで行くのであった。


「手紙……かな?」


 封筒を拾った半荘は、破いて中身を確認する。

 文字は日本語だったので読めたのだが、半荘は難しい顔をしながら基地へと戻った。


 食堂に入ると、暇そうにしているジヨンの対面に座り、テーブルの上に手紙を広げる。


「なに? 外で戦闘があったんじゃないの?」


「いや、ドローンが飛んで来て、これだけ置いて帰って行った」


「それだけ?」


「それだけだ。ちょっと読んでみろよ」


「ええ……」


 手紙を読むように勧められたジヨンは、目を通すと驚いた表情に変わった。


「謝っているわね……」


「まぁ丁寧に謝罪文は書いてあるな」


「あとは、出て行けって書いてあるわね……ていうか、今までどうして気付かなかったのよ!!」


「あははは」


 テーブルを叩いて立ち上がるジヨンに、半荘は笑って答えるしかない。

 それは当然。

 韓国からの手紙には、謝罪と共に、脱出方法が書いてあったからだ。

 それも超簡単。

 日本艦隊が近くまで来ているのだから、竹島にあったゴムボートでも十分届く。

 半荘も今頃気付いたので、呆けていたのだ。


「いや~。その手があったんだな~。あははは」


「笑ってるし……それで、どうするのよ?」


「悩んでる」


「悩む? ボートで日本の船に拾ってもらえば、すぐに帰れるじゃない?」


「まぁ……手っ取り早いんだけどな。でもさ~。俺達が居なくなると、ここはどうなる?」


「う~ん……睨み合いが続くかしら」


 ジヨンの答えに、半荘は頭を掻く。


「それだといいんだけどな~。絶対、どちらかが動くだろ? 十中八九、韓国だ。そうなったら日本も島を守るために、大砲を撃つかもしれない」


「あ……戦争……」


 ジヨンも最悪の事態を想像し、息を呑み込む。


「な? すんなり出て行っていいのか悩みどころだ」


「で、でも、可能性の話でしょ? どちらも動かないかもしれないわ」


「それだといいんだけどな~。とりあえず、東郷さんに連絡してみるよ」


 こうして日本艦隊の東郷に、スマホで連絡を取る半荘。

 手紙の内容を伝えると、東郷の領分を超えた内容だったらしく、上に確認を取ってから折り返す事となった。


 それから半荘とジヨンはダラダラと待って、日が暮れた頃、定時連絡の時間になったので、スマホを金属製の箱から取り出す。

 その30分後、スマホを取り出しても一向に掛かって来る気配がなかったので、半荘からリダイヤルする。


「どうだった?」


「う~ん……それがな~」


 さっそく確認を取った半荘なのだが、東郷の歯切れが悪い。


「まだ返答が無いんだ」


「お~い。何時間待たせるんだよ~」


「ちょっと難しい状況になっているようなんだ」


「難しい??」


「民間人に言っていいのかどうか……」


 ますます歯切れの悪くなる東郷に、半荘は苛立った声を出す。


「民間人でも、当事者だろ? なんなら、後先考えずにそっちに行こうか?」


「ちょ、ちょっと待て。いまは困る」


「じゃあ、包み隠さず教えてくれよ」


「……わかった。絶対に、動画を上げるんじゃないぞ」


 半荘の脅しに負けて、東郷は念を押してから語り始める。


「韓国本土から、いまの倍以上はある艦隊が出港した」

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