55 やっちゃったの巻き
鈴木(仮)を撃退した半荘は基地に戻り、心配そうにしていたジヨンと少しお喋りしていたら、ジヨンが船を漕いでテーブルに突っ伏した。
このまま寝かせてもよかったのだが、半荘はジヨンをお姫様抱っこし、個室にてベッドに寝かせる。
念のため、ジヨンに疑われた時の予防に、額当てに付けられたカメラで動画を撮影していたようだ。
それから半荘は基地の玄関に寝袋を持って行き、そこで眠りに就くのであった。
翌朝……
予想していた夜襲はその後は起きず、寝るのが遅かった半荘はお寝坊。
だが、急に飛び起きた。
「な、なに!?」
起きた理由は、ジヨンが近付いたから。
半荘は飛び起きたと同時に、天井の隅に張り付いたものだから、ジヨンも驚いている。
「なんだジヨンか。驚かせるなよ」
そう言って半荘は天井から飛び降りる。
「それはこっちのセリフよ。探したらこんな所で寝てたから、起こしてあげようとしたのに」
「……どうやって起こそうとした?」
「あはは。これは料理してたからよ」
ジヨンの右手には包丁が握られていたのでジト目で質問をすると、笑いながらはぐらかされる。
「せっかくキスで起こしてあげようと思ったのにな~」
「うっ……」
ジヨンの投げキッスに、男の性が反応してしまう半荘。
「なんか寒気がした……」
「なんでよ!」
いや、ジヨンに襲われそうだと思って寒気がしたようだ。
そもそも飛び起きたのも、ジヨンがただならぬ気配を
それからジヨンの用意してくれた料理を食べる半荘だったが、包丁のいらないレトルト食品だったため、命を狙われたのではないかと疑いの目を向ける。
もちろんジヨンはそんな事をしていないと反論し、レトルトの袋が開けづらかったから包丁を使ったと説明していた。
いちおうは用意してくれたので、礼を言ってから食べ始める半荘だったが、ジヨンにずっと見つめられているからか、食べづらそうにしていた。
食事を終えると、今日更新予定の動画を撮影し、昨日の動画と共にアップする。
一仕事終えた半荘達がまったりしていたら、けたたましくスマホが鳴り出し、半荘はタップして受話器を耳に付ける。
「何してるんだ~~~!!」
突然の大声に、半荘は耳がキーンとなって受話器を遠ざけてしまった。
「決死の覚悟で隊員を送り込んだのに、何を撃退してるんだ!!」
受話器の向こうに居るのは、日本艦隊総司令官、東郷。
何やら激おこで、半荘は落ち着くまでテーブルの上にスマホを置いて、音量が下がるのを待つ。
なかなか音量が下がらなかったので、半荘とジヨンは東郷の用件が全て理解できたようだ。
「ハァハァハァ……」
「落ち着いたか?」
息を切らす東郷に、ようやくスマホを手に持つ半荘。
本田も疲れたからか、音量を落として返事をする。
「ああ。でもな、作戦が失敗して、
「なんて答えていいか……。俺も、前もって聞いていたら、喜んで乗っていたよ」
それから二人で愚痴を言い合い、責任の押し付け合いをする。
スマホが繋がらなかったと言われても、東郷がパルス爆弾が来るかもしれないと言ったから半荘のせいではない。
ボートが韓国艦隊に向かって危なかったと言われても、韓国の刺客だと思っていたから仕方がない。
半荘の判断は間違いでは無かったのだが、上から怒られた東郷には通じないようだ。
「いいか! 今晩、もう一度部隊を送り込むから、動画の更新はするなよ!!」
「え……本当か? これで帰れる~!!」
半荘は喜びの舞いを踊りながらジヨンの手を取り、二人で騒いでいると、スマホから大声が聞こえて来た。
その声に、半荘はどうしたものかと質問する。
「何を騒いでいるんだ?」
「更新するなと言っただろ! 昨夜の動画が上がっているぞ!!」
「あ……」
残念ながら、時間指定をしていた動画が、止める間もなく流れてしまった。
その最後には、二人からメッセージがあり、夜には来ないでくれと頭を下げる半荘の姿が映し出されていた。
「夜じゃないと、バレるんだよ! てか、我々の行動が韓国にバレただろ! もう船は出せないからな!!」
「「そんな~~~」」
当然、二隻しか出していないのに、三隻のボートが動画に映っていたならば、どこのボートか韓国にも伝わり、救出作戦が難しくなるのであった。
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