38 更新の巻き


「ふぅ……こんなもんかな?」


 時は竹島の朝。

 半荘は指令室にこもり、スマホをいじって動画を更新していた。


 何故、更新できたかと言うと、突如、Wi-Fiが復活したからだ。


 昨夜、ジヨンが無線を使っていたので、半荘は無線を使えば、日本と連絡できるのではと試すために通信室にこもっていた。

 機械類をいじり、無線のチャンネルを海上保安庁に合わせようと頑張っていたら、Wi-Fiの機械が光っていたので、もしかしたらとスマホの画面を確認すると、何故か使えたのだ。


 前回は、一本目の動画を更新した途端通信を切られたので、今回は時間指定して、三本の動画を更新できるようにした。

 その三本も、一気に更新しないで、時間をずらしている。

 これは、半荘のいつもの癖。

 連続投稿しないほうが、再生回数を増やせるような気がすると、マイルールを守り続けている。


 それから一通りのニュースを閲覧してから通信室を出ると、部屋の前にはジヨンが立っていた。


「やっと出て来た」


「ん? 何か用か?」


「もうお昼よ。あなたも食べるでしょ?」


 ジヨンから時間を聞いた半荘は、腹をさすって空腹だと気付く。


「あ、そっか。急いで準備するよ」


「やる事もないから、準備してあげたわよ」


「本当か!? 女性の手作りなんて初めてで、ちょっと嬉しいな」


「レトルトで喜んでいいの?」


「あ……あはは」


 嬉しそうな顔をした半荘であったが、軍用の食事をチンした物が出て来ると聞いて、少し残念に思うのであった。


 そうして昼食を終えて、飲み物を飲んでいると、ジヨンが質問する。


「中で何をしてたの?」


「無線で日本に連絡取れないかとな」


「ふ~ん……それで、迎えに来てくれるって?」


「無線はダメだった。チャンネルは合ってると思うけど、通じないんだよな~」


「無線は? 何か他は繋がったの??」


「Wi-Fiがいけたんだ」


「本当!? じゃあ、スマホが使えるの??」


 ジヨンは慌てて自分のスマホを操作するが、その姿に、半荘は申し訳なさそうに答える。


「あ~……もう切れた」


「私も情報ほしかったのに……」


「ニュースなら見たから教えられるよ」


 肩を落とすジヨンに、忍チューバーに関するニュースを教えてあげると、驚いた顔に変わる。


「そんな嘘を大統領が言ったなんて……」


「な~? 酷いだろ~? そのせいで、俺を応援してくれてるサイトまで炎上したんだって」


「じゃあ、あなたは命を狙われているんだ……」


「みたいだな。でも、訂正する動画をアップしといたから、今頃そっちの大統領が大炎上だろうな」


「と言う事は……もう韓国から軍隊は来ないの?」


「さあな~? 形振りかまわず殺しに来るかも? ミサイルを撃ち込んだりとか」


 ジヨンはそんな事は無いだろうと考えたが、半荘ひとりならば、有り得るかもしれないと声を大きくする。


「私は!? 人質に取られてるって、知ってるよね?」


「いちおう、俺が人質にしたとなっていた」


「ほっ……」


「だから、その訂正の動画もアップしといたよ。あ、そうだ。事後報告だけど、よかったかな?」


「なっ……ダメに決まってるでしょ!」


「そうなの!? ファンはだいたいOKしてくれたから、てっきり……」


「どんな動画をアップしたのよ!」


「えっと……」


 ジヨンの動画は、たわいのない内容とは言い難い。

 一緒に食事をして握手した事はいいのだが、ジヨンが拳銃を向けるシーンや、通信室に入るなと言われたのにドアを開けたシーンまで写っていたのだ。


 半荘から動画の内容を聞いたジヨンは、声を大きくする。


「なっ、なんて事をしてくれたのよ! それになに? 隠し撮りなんてしてんじゃないわよ!!」


「勝手にアップしたのは謝るけど、隠し撮りしないと、俺が脅して言わせてるみたいだろ。それに、全部、たわむれってテロップ入れておいたし」


「ちょっとその動画見せなさい!!」


 ジヨンにの勢いに押された半荘は、スマホを見せるが、「変な顔をしたところを使いやがった」とか、「化粧が崩れていた」だとか、自分の容姿についての文句が多くて、怒るところは別にあるのじゃないかと思う半荘であった。

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