第150話

 


それから私たちはヤックモーン王国から、ハズラットーン大帝国へと戻った。


ユキ様のところにエドワード様と私のいとし子を迎えに行き、私たちはエドワード様の住む皇太子宮へと住む場所を移した。


ユキ様も一緒に来たいと言っていたが、国同士の制約があるため、ユキ様がハズラットーン大帝国へ移住するということは難しかった。


ただ、旅行ということであれば最長一か月は国を離れてもいいという許可を得られたので、ユキ様はちょくちょく私たちの元にやってきた。


どうやら、エドワード様と私の子供であるアレキサンドライトの成長する姿を見るのが楽しみらしい。


それならば、早く相手を探して結婚して子供を産むことを進めたが、どうやら難色を示している。


どうやら今は恋愛というものをする気がないらしい。


マコト様は私たちと今も一緒に皇太子宮で皇太子付きの側近として忙しく過ごしている。


こちらもアレキサンドライトの世話をするのが好きなようで、時間があればしょっちゅう顔を見せていた。それは、エドワード様よりも頻繁だった。


どうやらマコト様もアレキサンドライトに夢中らしい。


あれから、ヤックモーン王国ではほどなくしてヤークッモ殿下が王として即位をした。


ナーオット殿下についてはナーオット殿下から地下牢で幽閉されているとだけ聞いている。


処刑されたのかと思ったのだが、いくら悪事を働いたと言っても義理とは言え一緒に育ってきた兄弟のため処刑することをためらっているようだ。


ただ、ナーオット殿下の言いなりでナーオット殿下に逆らうことができなかった私という人間に、してやられたということが相当堪えたようで、地下牢で壊れたようにずっと嘆いているらしい。


ナーオット殿下にとっては、ある意味処刑するよりも重い罰になったのかもしれない。


 


そして、ライラはというと私の中で目を覚ました。


今、私はライラと意識を共有しているような状態だ。


ただ、全面に出ているのは私だけれども。ライラも暗殺者として過ごしてきた経緯があるのであまり全面には出たくないらしい。


エドワード様の隣に立つ身としては、ライラの知識や考えはとても役に立つことが多くてとても助かっている。それに、ライラのお陰か私の性格もけっこう図太くなったと思う。


皇太子妃としてエドワード様の横に立つには少しくらい図太くないとやっていけない。だって、誰かが私の足をすくおうと虎視眈々と狙っているのだから。


でも、エドワード様はそんな私も愛してくれているというからこれでいいのだろう。


今までの私だったならば、きっとエドワード様の足手まといにしかならなかったのだから。


 

 




「エドワード様・・・。」


「なんだい。レイチェル。」


エドワード様にそっともたれかかれば、すぐにエドワード様が振り向いて私の髪を優しく撫でる。


「私、とっても幸せなんです。」


腕に抱いたアレクサンドライトをエドワード様に見せるように抱きかかえた腕を前に出す。


すると、すぐにエドワード様がアレクサンドライトをそっと私の手から抱っこし、エドワード様の胸に抱きこんだ。


「ふぁ・・・。」


急に抱きかかえられている相手が変わったことに驚いたのか、アレクサンドライトがぐずるように声を上げる。


「おやおや。お母様の方がいいのかい?でも、私にもアレクを可愛がらせておくれ。」


エドワード様は優しく微笑むと、アレクサンドライトをあやすように軽く左右に揺らした。


すると、その感覚が楽しいのか「だぁ~。」とアレクサンドライトが声を上げて笑顔を見せた。


「この目元がレイチェルに似て可愛いな。」


「口元はエドワード様に似ていますね。」


ほえほえと笑っているアレクサンドライトのふにふにのほっぺを触りながらエドワード様に言えば、エドワード様はとろけるように微笑んだ。


「私たちによく似ているな。こんなにも愛おしい存在があるだなんて知りもしなかったよ。ありがとう、レイチェル。」


「私の方こそ、ありがとうございます。」


私たちは、こうして今、幸せな日々を過ごしている。


ずっと、この幸せな日々が続くように願って・・・・・・・・・・・・。


 


 


End


 


 


 


長い間ありがとうございました。


このお話はこれにて完結となります。


また、後数話ですが、レイチェル視点の番外編という名の後日談を投稿させていただく予定です。


後日談になりますので、シリアス展開なしのイチャラブを予定しております。


今しばらくお付き合いいただければ幸いです。


 


最後に、まだナーオット殿下が地下牢で生きているのは、もしかしたら第二章が始まったり始まらなかったりするためのものかもしれません。


 



 


 


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