第213話 包囲網
マシュハドの街にあるジャガ男爵の館の一室。
会議室のような広い部屋に、今回の捕獲作戦に参加する色々な顔が集まっていた。
まずは、上座になる場所に陣取るジャガ男爵の臣子達。
インカ・メザメ士爵、トウヤ・キジャク士爵、ホッカ・イコガネ士爵の3人。
次に、ジャガ男爵の兵士達を代表して、北門門番頭トワレと南門門番頭トウトウ。
そして、その脇にポテトウ傭兵団の団長アンデスに副団長のビンチェ。
その対面には冒険者ギルド関係者が座っている。
ギルド長のナベージュ、ギルド副長のヤスメ、職員のモモカン。
隣には、昨日王都から着いたばかりのプラチナランクPTもいた。
リーダのネル、副リーダーで回復役のリコ、斥候役のポリフ、ポリフの妹ポカリ、そしてドカの5人。
他には道案内としてシルバーランクPT「風の団」リーダーであるジェット。
新たにギルド長ナベージュが雇ったシルバーランク「星の音」のリーダー、フラット。
シルバーランククラスは全員が来ても意味が無いと、リーダーだけが呼ばれていた。
全員が席に着いたのを確認すると、上座に座るインカ士爵が口火を切った。
「今日は忙しい所集まってもらい感謝する。本当ならば顔合わせをした後、前祝などをしたい所ではあるが、今回は事が事だけに、このまま打ち合わせをして、明朝には出陣としたい」
ここに集まっているの面々は、既に事情を知っている者が多い為、何も言わず頷いているのが大半で、一部の知らされていなかった冒険者も、そんなもんかという顔をしているだけで、特に意見などは出てこなかった。
「それでは、まず、戦力の確認をしておきたい。誰が何名出せるか申告してもらい、それに基づき作戦を練りたいと思う。兵の多寡を知りたいのではなく、正確な人数を把握する為なので、虚偽の申告は慎んで頂きたい。よいかな?では私から、インカ・メザメ士爵200名!」
「「「おおーー」」」
インカ・メザメ士爵の200という数字に部屋の中がざわめく。
この「士爵」という身分は、とても偉そうに見えるが、実の所「準貴族」という扱いになっており、貴族の中では一番下の爵位となっている。その為「下流貴族」と呼ばれたり、時には貴族ではないと言う人もいる程、平民に近い貴族と言えるだろう。
日本に置き換えて言うと「バイトリーダー」ぐらいになるんじゃないかと思う。
そして、そんなバイトリーダー君が社員に「引っ越しするから手伝って」と言われて、当日友達を2人も連れて来た、という感じに近いだろうか。
「トウヤ・キジャク士爵50名です」
「ホッカ・イコガネ士爵100名だ」
インカ士爵続いて、同じ士爵である2人が申告をする。
村とも呼べない程小さな集落を1~2個治めているだけの士爵のチカラだと、数十人~百人程度がいいとこだろう。これが普通だ。
「北門門番頭トワレである。吾輩達は、北と南それぞれ50名、合わせて100名出す事になっているのである」
「南門門番頭トウトウです。トワレが申しましたように50名です」
この2人はマシュハドの街の衛兵のまとめ役だ。
普段は街の治安を守る為に働いているが、今回はジャガ男爵の兵士として参加するようだ。
「次はオレかな。ポテトウ傭兵団、団長のアンデスだ。うちは150名参加する」
最後にジャガ男爵が懇意にしている傭兵団が発言した。
傭兵団とは戦争やこういった小競り合いなどが活躍の場となる、対人戦に特化した戦闘集団になる。
冒険者と同じで、お金で雇われる連中なのだが、戦闘によって出世を目指している所が冒険者とは違っている所だろう。
大きな手柄を上げ、傭兵団ごと貴族に召し抱えられ、そのまま騎士団と名を改める程の出世をした傭兵団も少なくはない。
「以上となるな。それぞれを合わせると・・・600になるか。うん。十分な数だと思うが、どうかなギルド長?」
兵士と呼ぶ人達の数が出揃った所で、インカ士爵がギルド長であるナベージュに話を振った。
しかし、ナベージュはこれに応えず、代わりに隣に座っていたヤスメ副長が発言をする。
「件のゴーレム使いは100体のゴーレムを操るという話でしたが、先日訪れた所、更にハイゴーレムらしきものを7体所持していました」
「ハイゴーレムだと!?」
ヤスメ副長の言葉に場内が騒然とする。
「流石にハイゴーレムは・・・」
「それは見間違いじゃないのか?」
「そんな報告上がって来てないぞ!」
しかしその時、一際大きな声が会議室の中に響き渡った。
「それは、僕たちが受け持ちましょう!」
揃いの白金に輝く認識票を首に下げた5人組、言わずと知れたプラチナランクPT「暗黒の微笑」だ。
彼らは落ち着き払った態度を崩さず言葉を続けた。
「折角、こんな遠くまで来たのです。土産話に丁度いいではないですか?」
「そうだな。ゴーレムだけじゃつまらないと思ってた所だ」
「私らにかかれば、朝飯前って感じだねー」
そんな自信溢れる言葉に面白くない顔をした人達もいたが、大半の人達は感心し、勇気づけられていた。
「流石プラチナランクだ。心強いではないか」
「彼らには彼らの、私達には私達の戦いの場がありますからね。適材適所という事でしょう」
「では、『暗黒の微笑』の方々にハイゴーレムは任せるとしよう」
最後に、インカ士爵がプラチナランクPTにハイゴーレムを任せる事を認めると、話は兵の配置場所などに移って行くのだった。
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