第170話 ゴーさん
ダンジョンの入口からモトクロスバイクで走る事15分、そこからまた15分、そしてまた15分先へ。点々とストーンゴーレムの残骸で出来た山を残しながら、合計45分もダンジョンから離れた場所にゴーさん達は居た。
先日渡したリヤカーを使い、えっちらおっちらとストーンゴーレムの残骸を集めているのが見えてくる。
「お~い!ゴーさん!」
敬太がバイクで駆けつけると、いつもの様にゴーさんがシュタっと敬礼ポーズをして出迎えてくれた。
「いや~、思ったより進んでるからビックリしたよ」
流石、24時間休む事無く働き続けられる、ゴーレム達ならではの進行速度だ。
早速敬太は、今日の分の「ゴーレムの核」をマジックポーションを飲み飲み作りだし、【亜空間庫】から取り出したアイアンゴーレムの残骸を使って、新しくアイアンゴーレムを生み出していく。
新しく生まれたアイアンゴーレムは、出来た傍からゴーさんに【同期】され仕事に取り掛かって行く。
これでアイアンゴーレムは65体になる。1日に10体ずつだが確実に増えていっていた。
敬太は周りを見渡し「ゴーレムの核」を抜かれて石の塊となっているストーンゴーレムの残骸を【亜空間庫】にしまっていき、いつもならばこれでゴーさん達に後は任せて帰る所なのだが、今日はもう一つ用事があるのだった。
「ゴーさん、ちょっと来て」
辺りが片付いたので、山を作る場所を先に進めようと移動し始めていたアイアンゴーレム達と一緒に、敬太の元を去ろうとしていたゴーさんを呼び止める。
サミー達に攻め入られてから、ゴタゴタと後片付けに追われていたので、すっかり忘れていたが、ゴーさんをバージョンアップしたかったのだった。
【亜空間庫】の中からサミー達が持っていた青みがかったミスリル製の武器や防具を取り出す。
モーブとも相談したのだが、まともに扱えそうなのがミスリルの槍しかなかったので、今回手に入れた槍以外の物は全てゴーさんのバージョンアップに使ってしまう事にしている。
大ぶりな斧、体が隠せるぐらい大きな盾、籠手、胸当て2つ。
それらをごじゃっと地面の上に置くと、それなりの量がある様に見えた。
手の平に乗るぐらいの大きさの石でもストーンゴーレムとして動ける様になるので問題ないと思うのだが、一応確認を取っておく。
「ゴーさん、これだけ量があれば大丈夫?」
敬太が尋ねると、ゴーさんはシュタっと敬礼ポーズをして問題ない事を伝えてくれた。
今からやろうとしているのは、「ゴーレムの核」の移し替えだ。
1度だけゴーさんを土の体から鉄の体に移し替えた事があったのだが、やってから1年近く経っているので、記憶が少し怪しく、これもゴーさんに確認をする。
「え~っと、確か長押しすればいいんだよね?」
敬太に核の移し替えのやり方を聞かれたゴーさんは、短い腕を上げシュタっと上げ敬礼ポーズをして、長押しで合っている事を教えてくれた。
ゴーレム達の作りは球状の塊が2つ重なった雪だるまの様な体で、それに短い手足が付いているだけの簡単な物だ。顔の鼻の部分には「ゴーレムの核」が半分だけめり込んでいて、弱点丸出しなのだが、それが気に入ってるのか、この形は体の素材が変わってもそのまま受け継がれている。
そして、その外に飛び出している弱点の「ゴーレムの核」を指で5秒程長押ししてやると、ポロっと核が顔から外れ、移し替えが出来る様になるのだ。
「1・・・2・・・3・・・4・・・5っと」
ゴーさんを地面に寝かせ「ゴーレムの核」を長押しした。
すると、ポロリと簡単に「ゴーレムの核」が外れた。
ゴーさんの緑色の「ゴーレムの核」は敬太の手に握られ、ゴーさんだった鉄の体は、鼻の部分が抉られた様にへこんでいて、地面に横になったまま動かない。なんだか不思議な感じだ。
それから、今度は地面に置いてあるミスリルの盾に、外したゴーさんの「ゴーレムの核」を押し当てる。すると大した抵抗も無く「ゴーレムの核」はミスリルの盾に沈んでいき、見る見るうちに盾がドロリと溶け出し、周りの斧や胸当てなんかのミスリルの武具も巻き込んで、ひとつのスライムの様な柔らかそうな物となり、そこからいつものゴーレムの形に変形して行った。
出来上がったゴーレムは敬太の腰ぐらいの高さで、少し細身な感じがする。やっぱり少し材料が足らなかったのかもしれない。
『鑑定』
ゴーさん(ミスリルゴーレム)
レベル 33
HP 109/109
MP 33/33
スキル 同期LV3 吸収LV3 通信LV3 変形LV3
森田敬太の使い魔
鑑定してみると大分レベルが上がっていた。
前に見た時は、レベル14とかその辺だったと記憶していたのだが、【吸収】で壊れたゴーレム達の経験値を吸いまくって、レベルが爆上がりしていた様だ。
一方、スキルの方はあまり変わった感じは受けない。飛びぬけた物は無く、かと言って劣った感じの物も無い。至って平坦な印象を受ける。
「どう、新しい体は?」
敬太の前で突っ立ったままでいるゴーさんに、新しいミスリルの体の感想を聞いてみると、思い出した様に腕や足をパタパタと動かし始め、具合を確かめていた。
その様子は、子供が「やったー」っと新しい体に喜んでるようにも見えて、微笑ましかった。
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