第133話 ミスリルソード

 2階層でピルバグを息を切らす事無く殲滅し終えると、3階層にある改札部屋を通り越して4階層に向かった。

 

 4階層にいるのはロウカスト。手漕ぎボートぐらいの大きさのバッタだ。

 このロウカストを敬太が1人で倒すとなるとスキル頼みになるのだが、今手にしているミスリルソードを使うと通常攻撃で簡単に切り伏せる事が出来た。


 武器って大切なんだと改めて考えさせられた。


 続く5階層はスラグと言う大きなナメクジがいる階層なのだが、ここはリポップする部屋が決まっているので罠が仕掛けてある。

 最近は点検もゴーレムに任せきりだったので、たまには自分の目でも罠の状態を確認しておいた。


 6階層。ここにはアースラットと言うちょっと大きな土鼠がいて、リポップする場所が決まってないので罠が仕掛けられない階層だ。


「ゴル。バッグに入るか?」


 敬太が自分でアースラットを倒していた頃、ゴルはずっとハードシェルバッグに入っていたのでどうするか尋ねてみたのだが、2代目ハードシェルバッグが気に入らないのかプイっと顔を背けバッグに入るのを拒否している。

 ゴルより大きく素早いアースラット。ゴルが襲われたら怪我しそうで怖いのだが、契約獣は一緒に成長するって事なので、過保護にするのは良くないのかもしれない。


「いいんだな?怪我するかもしれないぞ?」

「ニャー」


 どうやらゴルさんやる気のようです。

 まぁそこまでアースラットは強くないので、このまま行ってみるとしようか。


 【亜空間庫】からミスリルソードを取り出して、ちょろちょろ動き回っているアースラットを片っ端から切って行く。


 最初のうちは、おっかなびっくり敬太の後ろから見ていたゴルだが、6階層を殲滅し終わる頃には、大分モンスターに慣れたのか敬太の横で戦闘を見ているようになっていた。


「よし、終わったな。次行こうか」

「ニャー」


 振り回すミスリルソードが案外軽いのもあり、体が温まる程度の運動量で6階層を後にする事が出来た。


 7階層はまた罠が仕掛けてある階層だ。ドローンビートルって言う大きなカナブンの様なモンスターがいて、弾丸の様な体当たり攻撃に手を焼き、何体もの土ゴーレムがやられた日々を思い出す。

 毎日ゴーレムを作っては壊され、作っては壊され、ドローンビートルを殲滅させるのに大分苦労したもんだ。


 この階層もリポップする部屋が決まっているので、罠を仕掛けている。

 ドローンビートルの攻撃は結構激しいので、しっかりと罠をチェックしてから下の階層へと進んだ。


 8階層まで下りてきた。

 ここにはスケイダと言う大きなセミがいる。2階層、4階層、6階層と偶数階はリポップする場所が決まっていない様で、この8階層も罠が仕掛けられない階層となっていた。


「ゴル大丈夫か?」

「ニャー」


 念の為ゴルに確認を取ったが大丈夫らしいので、このままゴルを外に出したまま殲滅にかかる事にする。


 大きなセミのスケイダは、地面にひっくり返り腹を出したまま動かないのだが、敬太が近づき攻撃しようとすると「ミミミーーー」っと鳴き声をあげながら体当たり攻撃をしてくるので気を付けなければならない。

 一部の業界では、この攻撃にセミの「ファイナルアタック」と名付けているらしいが、これに対する正しい対処方法は未だに確立されていない様だ。


 さて、敬太はどう対処するかと言うと、「飛ばれる前に叩く」だ。

 「ミミミーーー」っというスケイダの大音量の鳴き声は、静かなダンジョンでは心臓がバクバクしてしまうぐらい驚いてしまうのだが、来るという心構えが出来ていれば幾分緩和させる事が出来る。


 なるべく静かに近づきスケイダを切りつける。ミスリルソードの切れ味があればスキルを使うまでもない。

 敬太のちょっと後ろで様子を見ているゴルは、たまにスケイダに気が付かれ「ミミミーーー」っと鳴き出されてしまう度に、体をビクッと震わせいるが、逃げ出す様な事は無かった。

 

 今はミスリルソードで余裕で倒せているが、木刀しかなかった当初はMP管理をしながらスキルを使いまくり苦労していたもんだ。

 近づく前に気が付かれ、大きな鳴き声と共に体当たりを喰らい、振り下ろした木刀を避けられてしまったり、たまに謎の液体を引っ掛けられ精神力を削られる様な事もあった。

 

「ふぅ~」

「ニャー」


 体を一から鍛え直した成果か、しっとりと汗をかいたぐらいで8階層も殲滅する事が出来た。

 スケイダは1匹で9万円も落とすので「自動取得」が無かったら、今頃部屋の中はお札だらけになっていただろう。だが「自動取得」のおかげでお金やドロップアイテムが落ちる事がないので、体力があれば次から次へとモンスターを倒せて行けて効率がいい。


 次の9階層は罠が仕掛けてあるので、今日敬太が倒すのはここまでとなる。

 思っていたよりもミスリルソードが凄くて、簡単に1日分の殲滅作業が終わってしまった。


「ゴル、どうする?」

「ニャー?」


 調子が良いので、このまま10階層のアメダラーに挑もうかと思い、ゴルに聞いてみたのだが返って来た答えは分からないという感じだった。

 まだヨシオに言われた【火槍】を覚えてないので倒せるかどうかは分からないけど、思っていた以上のミスリルソードの切れ味に期待してしまっている。


 無理をする必要は無いのだが、ちょっと試してみたいな。

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