第107話 ゴーレムの噂

 コンテナハウスの近くにある岩の上で、ちょっと遅めの昼食を【亜空間庫】に詰め込んできたお弁当を放出してゴルと一緒に食べた。【亜空間庫】にはダンジョンの改札部屋にあるデリバリーを使って、60食分を購入して持って来ているので、1人なら20日間ぐらい食料に困らないように準備してきてある。その他にもお茶類、ちょっとしたお菓子、ゴルのご飯、お水、それらも20日間分は入っているので、総量としてはちょっとしたお店ぐらいなら開ける量になっているだろう。


 さて、コンテナハウスに寝かせている奴隷の女の子に変わりは無く、無事を確認出来たので、とっととお金稼ぎに戻るとしよう。


 ゴルにハードシェルバッグに入ってもらい、辺りを【探索】で確認してからモトクロスバイクに乗り込んだ。


「頼んだよ」


 コンテナハウスを警備するのに置いているゴーレム達に別れを告げて、アイン鉱山の麓の森を西に向かって走り始める。

 ゴーさんに【通信】を入れてもらって、散らばっているゴーレム達に連絡を入れ、回収しやすいようにある程度纏まっていてくれるようにお願いしておく。


 頭の中の地図で集まるゴーレム達の様子を見ながら、森の西まで走って行って、それぞれの獲物を抱え集合しているゴーレム達を【亜空間庫】に獲物ごと回収していく。「実働部隊」はフォレストウルフを中心にラッシュボアも1匹狩って持ってきていた。思った通りラッシュボアもゴーレムだけでも狩れた様だ。「偵察部隊」の方は薬草類をしっかりと採集してくれたようで、それらもかなりの数があった。


 アイン鉱山の麓の森に放った全てのゴーレムを回収し終えたら場所を移動し、今度は南に向かった。そこではゴブリンを抱えるストーンゴーレム達を回収していく。


 常日頃から、他の冒険者に近づかないように言いつけておいたし、何かあったらすぐにゴーさんに伝える様に言っておいたので、ゴーレム達に破損しているような様子は見られなかった。大丈夫だと信じていたが、こうやって無事な姿を目にして、ようやく大規模にゴーレム達を展開していた不安が解消された。





 マシュハドの街の南門付近まで行き、門番の視界に入る前にはモトクロスバイクを【亜空間庫】にしまって、徒歩で南門を通過する。門番は敬太の首にある認識票を確認するだけで、すんなり通してくれた。


 街中をちょっと歩き冒険者ギルドに入ると、まだ日が高い時間にもかかわらず冒険者の出で立ちをしている人が多く目に付いた。随分早い時間に仕事から上がるのだなと思ったが、異世界の常識を知るほど冒険者ギルドに出入りしている訳では無いので、余計な事は口に出さずにカウンターの列に加わった。


「本当なんだって!」


 敬太が静かに並んでいると、前の方に居る冒険者が突然大声を出し始めた。


「ゴーレムの群れがモンスターを狩ってたんだよ!」

「またですか?!」

「まただと?もう報告があってるなら、どうにかしてくれよ!」

「ええ、分かっています。ギルドとしても早急に対応を取りたいと考えています。詳しい話をお聞きしたいので応接室へ来てください」

「分かった」


 前の方に居た冒険者は、皮鎧を身につけ腰には剣を携え、如何にも冒険者という佇まいで、敬太と同じカッパーの認識票を首から下げていた。彼の傍には仲間と思しき人らが居て、ギルドの職員が席を立ち案内を始めると、促されるままみんなで移動していった。


 ゴーレムねぇ・・・。


 確かに街の周りにゴーレムを半日ぐらいばら撒き、採集と討伐をさせていたのだが、こんなにも早く情報が伝わり報告されているとは思わなかった。少しやり過ぎたのかもしれない・・・。


 ダンジョンでゴーレムを使っていても、異世界人のモーブ達の反応薄いし、門番に電動バイクを取られた時もクモ型アイアンゴーレムを見せていて、そこでも反応が薄かったので問題ない物だと思ってしまっていた。


 なんとか金貨を33枚集めるまで、ハイポーションを手に入れるまでは、大事にならないで欲しい所だが・・・。


「え~っと、次の方どうぞ~」


 そんな事を考えていると、列が進んでいた様で敬太の順番が回って来ていた。

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