第83話 小屋作り
ゴーさん達に小屋作りを任せたまま、モーブと話込んでいた。
今まで森に会いに行ってた時は、警戒もあったのか何を言っても「うむ」としか答えてくれず、イエス、ノーの2択の答えしか聞けなかっのだが、ダンジョンに連れてきて、奴隷の枷を外し、新しい服を着せ、美味しい食べ物を一緒に食べたからなのか、モーブは良く喋るになっていて色々と教えてくれた。
ここはルシャ王国の西北端に位置し、ここから一番近い街はマシュハドと言うらしい。ダンジョンから東に行くとあって、モーブ達は追っ手から逃げ逃げ来たので正確には分からないが、距離は歩きで1週間ぐらいかかるらしい。
ルシャ王国の王都程ではないが、そこそこ栄えているので、まずはそこを目指すといいと教えてくれた。
それから、敬太が異世界で探しているポーションより強い回復薬は、その街に行けば売っているみたいで、金貨30枚以上という値段らしい。モーブの右腕より高いと言う話なので、それ相応の値段なのだろう。
日本の「円」ならば敬太のススイカ(改)に唸るほど入っているのだが、ポーションを手に入れるには、まず異世界のお金を稼ぎ出す必要がある様だった。
モーブと談笑していると、ゴーさんが敬太の背中をトントンと叩き作業が終わった事を知らせに来てくれた。モーブから聞ける異世界の新しい知識に夢中になっていた為、作業中なのをすっかり忘れてしまっていた。
「ありがとうゴーさん。今行くね」
モーブに目配せをして椅子から立ち上がり、小屋作りに戻る事にした。
目印として張った糸沿いに、敬太が指示した通り2mちょっとの高さがあるコンクリートレンガの壁が出来上がっていた。
部屋の大きさは5.4m×3.6mで、1か所だけ出入り口用にスペースを空けてあるが、ぐるりと四方を壁で囲んだだけの単純な作りだ。
クルルンとテンシンがゴルを抱きながら、少し離れた位置で出来上がった壁と、後片付けをしているゴーレム達を眺めている。
「すごいねー」
「すごいね~」
「ミャー」
さて、ここからは敬太の仕事だ。
早速、スケール(金属製のメジャー)を持って壁の中に入り寸法を測って行く。
それから、タブレットを使い次々と必要な資材を追加で購入し、ゴーさんたちに壁の近くまで運んで来てもらう。
次に、土台となる木材を寸法を合わせて切り出していく。
文明の利器、電動丸ノコギリ(丸ノコ)を使えばあっという間だ。
スケールで測り木材に印を付けたら、そこを切るだけ。
辺りに甲高い音を響かせ木材を切っていると、ゴーさんが傍でじっと敬太の手元を見ているのに気が付いた。
「やってみるか?」
ゴーさんに声をかけてみると、元気よくシュタっと敬礼ポーズをしてきたので、これも任せる事にした。やる気のあるゴーさんがいると作業が捗るわ。
敬太は必要な本数、必要な長さで木材に印を付けたら、切った木材を持って壁の中に入って次の作業に取り掛かった。
四方を壁に囲まれた壁の中は、蛍光灯の光が入ってこず暗くなっていたので、ランタンを改札部屋に取りに行き壁の上にあるだけ置いた。すると、作業に支障が無いぐらいには明るさを確保できた。
土台になる木材には、地面から木材を支える突っ張り棒の様な床束と言う物を、ビスで取り付ける。この突っ張り棒はネジ式で長さが調整できるので、でこぼこの地面の上でも土台となる木材を水平に支えられる物なのだ。
じゃんじゃんとゴーさんに木材を切ってもらい、手の空いてるゴーレムに運び込んでもらう。敬太は壁の中で黙々とそれらを組み立てていく。
段取り八分仕上げ二分と言う言葉にある通り、段取りの部分が作業の大半を占めるのだが、その段取り部分をゴーさん達にやってもらえているので、作業を楽に進める事が出来ている。
そうして、あっという間に床の土台を作り上げる事が出来た。
基本的な四角形の部屋なので、難しい事は無かった。
ゴーレム達に指示を出しウレタンボードを運び込んでもらい、床一面に嵌め込んでいく。所謂、断熱材だ。
それからその上に合板を打ち付けていけば床の完成だ。本当ならばこの上にキレイな床板を張ったり、畳を敷けばいいのだろうが、とりあえず今は置いておく。
次は出入り口にドアを付けてしまおう。ぐるりと囲まれた四角い壁に1か所だけ空いている出入り口。そこに、ネットショップで購入できたスチール製のドアを付ける。
木製のドアとかもあったのだが、昭和時代の団地に付いているようなスチール製のドアの方が頑丈そうだったので、こちらにした。
出入り口の足元にコンクリートレンガを水平に敷き詰めて、上にドアの枠を置く。
枠と壁との間に出来る隙間には、コンクリートレンガを割って嵌み込みモルタルで固める。そしたらモルタルが乾くまで誰も触らないように注意をしておくのを忘れない。子供達は離れているので大丈夫だろうけど、念の為だ。
次は屋根に使う角材の切り出しにかかる。
角材に印だけ付けて、切るのはゴーレム達に任せ、敬太は脚立を使って壁の上に角材を置いて、金具を使い壁と角材を固定する。
壁にはコンクリートビスを使いしっかりと打って、屋根と壁を一体化させて強度を高める。それからその角材の上に合板を打ち付ければ完成。屋根と言うよりは平らな蓋の様な感じだ。
この上にトタンやガルバリウム鋼板なんかを張り付ければ雨風に強くなるが、ここはダンジョンなので必要は無いだろう。
屋根から降りて作った小屋の中に入ると、光が差し込まず真っ暗なので、次は蛍光灯を付ける事にした。とりあえず今はランタンで明かりを確保しておく。
屋根裏の角材の間に、断熱材のウレタンボードを詰め込んだら、合板を張り付けて天井にする。ここも合板の上から更に天井ボードを張れ付ければ良いのだが、合板が剥き出しのままでも十分だろう。太陽が照り付けないダンジョンの中なのだ。そこまで断熱に気を使う必要は無い。
一旦小屋の外に出て蛍光灯の為の配線に取り掛かる。
電気ケーブルを通す位置を決め、コンクリートレンガの壁に電動ドリルで穴を開け、そこに電気ケーブルを通す。気になるようなら穴の隙間に発泡ウレタンスプレーでも吹き付けてやれば、穴は綺麗に塞がるだろう。
天井に蛍光灯を取り付けて、配線を繋げばチカッっと蛍光灯が点いた。
突貫工事の手抜き内装だが、寝るだけならば十分だ。
最後に出入口のモルタルが渇いたか確かめてから、ドアの枠にスチール製のドアを嵌め込めば小屋の完成だ。はぁー疲れた。
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