第60話 ゴーレム4

 何故か元に戻ったコミュニケーションがとれるゴーレムと話し合いをして、希望、要望なんかを聞きだしてみた。


 聞きだしたって言ってもゴーレムは「はい」か「いいえ」かの意思表示しか出来ないので、敬太が思い付く事を「はい」か「いいえ」で答えてもらっただけなんだけどね。


 それでも分かった事は色々とあった。例えば「仲間が欲しい」とか「仕事がしたい」だとか、ゴーレムの要望は分かったし、生態についても「眠らない」「ご飯は食べない」とかが分かった。

 ただ、ゴーレムの核を顔にめり込ませたのはどういった事なのかは、聞いても本人も分からない感じだったので、断りを入れてから【鑑定】をさせてもらった。



『鑑定』

ゴーレム

スキル 同期LV1 吸収LV1

森田敬太の使い魔



 やはり、あれはスキルが関係しているのだろう。何となくそんな気がしたので【鑑定】をしたのだが、ゴーレムのスキルに【吸収】とあるので、まぁ間違いないだろう。それで【同期】あたりで元のやつに戻ったという感じだろうか。

 想像でしかないが、それらしいスキルがあったので、一応の納得がいった。


 それから「使い魔」という扱いになっているも気になった。確かゴルは「契約獣」とかいう扱いになっていたと思うのだが、それとは何が違うのだろうか?


 知らない単語がたくさん出てくるので覚えきれない。

 そのうち解明できる日は来るのだろうか・・・。




 時間をかけたゴーレムとの話し合いの結果、決めた事が何個かある。


 敬太が寝る前にMPが余っていたら【土玉】を使って「ゴーレムの核」を作り、仲間を増やしていく事。

 これはゴーレムの要望にもあった「仲間が欲しい」ってのもあるのだが、魔法の【土玉】にはレベルがあって、使い込むほどレベルが上がって行く仕組みらしく、当然レベルが上がればゴーレムが強くなり危険が減る。ようは一石二鳥なのだ、やらない手は無いだろう。


 次にゴーレムに仕事をさせる事。

 どうやらゴーレムは何か役割が欲しいらしく「仕事がしたい」って考えが強いらしい。なので罠の見回りや、ダンジョンに付けた蛍光灯が切れていないかとか、雑用みたいなのしか思いつかなかったのだが、それでもシュタッっと敬礼ポーズをして、やる気を見せてくれたので任せる事にした。


 それから最後にゴーレムの名前を付けた。

 「ゴーさん」だ。敬太からすると助けられた事がある命の恩人なので、なんとなく「ゴーレム」だとか「お前」と呼ぶのに抵抗があったので勝手に名付けたのだけれど、名前を呼ぶとシュタッっと敬礼ポーズをしてくれるので、満更でもない感じがしている。



 ゴーさんとの話し合いで、聞きたい事も聞け、なんとなく一段落したので、作業に出る事にした。

 ゴーさんに仕事をやってもらうのにも、ダンジョン内を自由に移動出来るようにしておかないといけないのだ。


 ダンジョン内の2か所の階段は、既に土で盛りスロープ付き階段にしてもらったのだが、後1か所、体育館部屋から蜂の巣部屋に行くのに階段があるので、そこにも土を盛ってゴーさんの短い足でも上れるようにしておかなければならない。



 ネットショップで運搬用一輪車(通称ネコ)とシャベルを買って、ゴルとゴーさんを連れると体育館部屋を突っ切り、蜂の巣部屋へと上る階段まで来ていた。

 ゴーさんはもう手にハンドスコップを持ち臨戦態勢だ。


「よし!やろうか」


 敬太の声と共に動き出したゴーさんは、短い足でテコテコ移動して、壁際の邪魔にならない所の地面をほじくり、小さなハンドスコップいっぱいの土を持って階段まで行き、その土で段差を埋めるように盛り、短い足を使ってトントンと土を固めてテコテコと壁際まで戻って行っていた。


 なるほど、こうやって少しずつ少しずつやってくれていた訳か。


 ここは敬太も手伝いをしていく。シャベルでゴーさんと同じところを掘り、土を一輪車に載せて階段まで運ぶ。そしたら、一輪車を傾けて積んでいた土を全て降ろして、シャベルで土を撒く。


 ふむ、ゴーさんは足が遅いから移動に時間が取られるようだな。


「ゴーさん。俺が土を運ぶから、ゴーさんは運んだ土を盛る係ね」


 ゴーさんは階段で土を踏み固めていたが、敬太が声を掛けると顔を向けてきてシュタッっと敬礼ポーズをして返事をしてくれた。



 それからは敬太がひたすら土を掘っては運び、ゴーさんはペシペシと階段に土を盛り固めていった。


 階段の踊り場まで作業が進むと、階段を上りきった先の十字路部屋で土を掘り、階段に土を降ろしていく事で作業効率を上げた。


 2人でチカラを合わせると2時間かからないぐらいで、階段をスロープ付き階段に変える事が出来た。


 これでゴーさんがダンジョン内を自由に行き来出来るようになった訳だ。


 ついでに、蜂の巣部屋の前まで来ているので、ゴーさんに罠についての説明をしておいた。見回りをして貰うには必要だからだ。

 ゴーさんには難しい話かもしれないけど、一応一通り説明しておく。


 あそこのランプが消えてたら教えてねとか、この中に蜂が居たら教えてねとか、見ておいて欲しいポイントだけを伝えておいた。

 これに対してゴーさんはやる気満々で敬礼ポーズをしてくれたので、まぁ任せてみようかと思った。

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