第52話 投資
先日、ブレイドラビットの罠が完成した。
その罠を作っている間にもレベルが上がっていて、レベルアップボーナスを2つ獲得していた。
ひとつはテーブルの矢印の先にあった「ベッド」。
もう一つはトイレの矢印の先に出ていた「シャワー」だ。
ベッドを選んだ時は、改札部屋にドアが現れ、中はベッドが置いてある部屋になっていた。所謂、寝室ってやつだ。
実はこのベッドが出来てから家に帰ってない。仕事を辞めたので家に帰る必要が無いのと、それぐらい罠作りに集中していたからだ。
もうひとつのシャワーを選んだ時は、トイレの脇にドアが現れ、シャワー室が出来ていた。脱衣所も何もないコインシャワーのような狭い箱型のシャワー室だったが、体を洗えるようになり、軽い洗濯も出来る様になった。家への足が遠のいた原因の一つでもある。
今までは夜勤をしていたので、夜中にダンジョン活動をしていたが、最近は朝に起きて夜に寝る、普通の生活に戻っていた。
夜中はATMの営業時間外となり電気が消えてしまうので避けるようにしていたら、自然と今のリズムになっていた。
ちなみにゴルはすっかり大きくなっていて、トイレもちゃんと覚えてくれた。
固形の餌もバリバリ食べられるようになり、いつも元気に走り回るようになった。
ただ少し甘えん坊さんで、いつも敬太の近くに居たがり、少し姿が見えなくなるとミャーミャー鳴きだすのは変わってない。
このままゴルには元気に育っていって欲しいと思う。
それで今日はスキルか魔法を取ろうとしている。何故ならススイカ(改)の残高が凄い事になっているからだ。
残高 37,676,430円
時間をかけて作った2つの「罠」によって、一日に約140万円稼げるようになっていて、寝ていても1週間で1千万円ぐらい貯まっていくのだ。
蜂の巣部屋から始まり2か月ぐらいかけて辿り着いた、罠による殲滅。今、考えられる最高のお金の稼ぎ方だ。
こうなると、次の目標の回復(中)以上の物を目指すのには、自分に投資するのが良いのではないかと考えて、今日は何か取ろうと思ったのだ。
まずはスキルから見ていく。
剛打 ¥3,000,000-
通牙 ¥1,000,000-
連刃 ¥1,000,000-
石心 ¥1,000,000-
見切り ¥3,000,000-
瞬歩 ¥3,000,000-
剛力 ¥3,000,000-
梟の目 ¥5,000,000-
駝鳥の目 ¥5,000,000-
うん。良く分からんね。
一番上の【剛打】っていうのは、敬太がレベルアップボーナスで得たスキル【強打】の上位スキルだろうか。同じ「打」って字がついているから、そんな気がする。
後は【見切り】とか【瞬歩】ってのは、何となく分かる。攻撃を見切ったり、素早く踏み込む感じが文字から読み取れる。
梟の目、駝鳥の目は、何か見えるようになるのだろう。多分・・・。
残高が3,700万円あるので、何かしら取得しておきたいのだが、何を選んだらいいのか文字だけなので分からない。
う~ん、何となく想像がつく【剛打】いってみようかな。
「ピン」
『カードを置いて下さい』
いくぞ~。
ススイカ(改)を置いた。
画面が切り替わりパワーゲージが出てきて「しばらくお待ちください」の文字が点滅する。すると例のスポンジケーキに挟まれる感覚がやって来た。
なんとも言えない待ち時間がしばらく続く。
やがて「しばらくお待ちください」の文字が消え、スポンジケーキの感覚も消えた。
『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意ください』
言われる通りにススイカ(改)を手に取ると、スキル【剛打】を理解出来た事が理解出来た。
思った通り【剛打】は【強打】の上位互換だったようだ。
よしよし、これでバッタとも戦えるようになるだろう。
後は、魔法も見ておこう。
火玉 ¥10,000,000-
水玉 ¥10,000,000-
風玉 ¥10,000,000-
土玉 ¥10,000,000-
光玉 ¥100,000,000-
闇玉 ¥100,000,000-
スロウ ¥500,000,000-
空間 ¥1,000,000,000-
相変わらず無茶苦茶な値段だ。1千万円、1億円、5億円、10億円。
10億円とか買うやつがいるのだろうか、高すぎる。
今、敬太が持っている魔法はレベルアップボーナスで得た【クイック】と言う時間魔法だけなのだが、何か条件を満たしていないようで未だに使う事が出来ない。
なので、切り札的なポジションで1個は使える魔法を取ってもいいかなと思っている。
項目の上の方にある4つの火、水、風、土の1千万円シリーズなら手が届くし、現実的だろう。
定番で言えば「火」になる。攻撃魔法の代表格だ。
「水」も回復とか絡みそうで持っていて損はなさそうだ。
「風」は微妙かな?あんまり知らない。
「土」は当たりはずれが凄そう。
悩ましい。情報が少なくて決め手に欠けてしまう。
「風」は微妙そうなので無しだな。「水」もポーションがあるので後でもいい気がする。
そうなると残りの2択になる・・・よし。このペットボトルの蓋を投げて、表だったら「火」裏だったら「土」にしようか。
「それ!」
投げたペットボトルの蓋は壁に当たり床を転がり、ゴルに足で弾かれ遊ばれてしまった。
「ゴル、だめだって」
「ミャー」
「なんでー」って顔をされてしまった。そうじゃなくてコイントスの様にやりたかったんだけど・・・。
ペットボトルの蓋はゴルの前で裏になって止まっている。
「裏か~。まぁ、ゴルも参加したと思えばいいか」
「ミャー」
よし決めた。「土」でいってみよう。
ATMの画面をタッチしてススイカ(改)をかざすと、またしてもスポンジケーキの様な感覚がやって来る。
それから待機時間が終わり、ススイカ(改)を手に取ると魔法の【土玉】を理解出来た事が理解出来た。
どうやら土魔法の【土玉】とはゴーレムの核を作り出す魔法のようだった。
ゴーレムと来たか。
攻撃魔法で土とか石を飛ばす様なものを期待していたけどハズレだったようだ。
残高 24,676,430円
いきなりダンジョンから放り出された時の事を考えて2千万円はキープしておきたいので、また稼いだら挑戦してみよう。
今回はスキル【剛打】と魔法【土玉】を覚えた。
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