第48話 トイレ

 約2週間かかり完成した、蜂の巣部屋の罠。

 「コンセント」が部屋に出来てからは、ここを目指して頑張っていた。

 これで毎日何もしなくても40万円ぐらいは入ってくるようになるだろう。



 新しく作ったコンパネの蓋を押していき通路に入れる。サイズはピッタリで上手く通路に入った。下にキャスターが付いているので押すのが楽ちんで良い。

 通路に入れたらタイヤストッパーを置けばこれで動かなくなる。我ながら上手く出来たもんだ。



 改札部屋に戻りハードシェルバッグを開いて床に置くと、思った通り、ゴルが鳴きながら出てきたのでミルクタイムとする。


 ゴルが産まれてから1か月ぐらい経ち、そろそろミルク以外にも興味を持つかとお湯を沸かしている間に、小さい猫用の柔らかい固形の餌も置いているのだが、今のとこまったく興味を示さない。

 ミルクは面倒なのでなるべく早く固形の餌に切り替えて欲しいところだが、こればっかりは無理やり決められるものじゃないので、しょうがないだろう。ゴルのペースに任せるしか無いのだ。


 ミルクを作り終えると一目散に哺乳瓶に齧り付き、美味しそうに飲んでいた。


 ミルクを飲み終わったので哺乳瓶の片付けをして、それからふとゴルを見たら、何故か小さな水溜りの上にペタンと座っていた。

 お尻を濡らし、耳をへにゃりとさせながら微妙な表情で敬太を見ている。


 何してるんだか、と一瞬呆れたが、それがオシッコだと気が付いた時には、嬉しさが込み上げて来ていた。

 敬太は笑いながらゴルを抱え上げタオルで濡れたお尻を拭き、頭を撫でる。


「一人で出来たなぁ。よしよし」

「ミャー」


 今までは敬太がお股をテッシュで軽く擦って刺激を与えて、オシッコを促していたのだが、とうとう自分で出来たようだ。

 床にあったオシッコの水溜りもタオルで拭き取りながら、成長しているなぁと感動してしまった。



 後始末を終えてから猫のトイレ買わないとと思い、リクライニングチェアに腰掛け、ひじ掛けにあるタブレットを見る。

 すると画面に「レベルが上がっているのでダンジョン端末機ヨシオの前までお越しください」と表示されていた。

 ススイカの決済ぐらいならタブレットでも出来るのだが、さすがにレベル云々の話は無理なようだ。


 「よいしょ」っと掛け声とともに立ち上がりATMまで行って画面をのぞき込む。


『レベルアップおめでとうございます』


『レベルアップボーナス』


自動マッピング

椅子➡テーブル➡ベッド

ヨシオ音声

トイレ



 レベルアップボーナス。ふむふむベッドか。微妙だな。一応矢印の先だからいい物かも知れないけど、改札部屋で寝るような予定は無いからいらんよな。

 そうすると、う~ん。ゴルにも買うしトイレにしておこうかな。


「ピン」

『カードを置いて下さい』


 ススイカを取り出して、いつもの場所に置く。


『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意下さい』


 後ろの方で何かが現れた。

 ATMの前から振り返ると、部屋の隅の方の壁にドアが出来ていた。もうこの突然現れる現象に、敬太も慣れているので「トイレだな」と迷うことなくドアを開けに行く。


 ドアの先には畳一畳ぐらいのスペースに洋式のトイレと、何故か青い大きなポリバケツが1個置いてあった。

 狭いトイレのスペースに大きなポリバケツは邪魔なので、外に出そうと持ち上げると中身が入っていないらしく軽かった。


 新しく出来たトイレのスペースに謎のポリバケツ。


 とりあえずトイレを見てみたが何の変哲もない普通のトイレだった。レバーを捻れば水が流れ、明かりは天井に開いている丸い穴から差し込んできていて明るい。落ち着いた良いトイレだ。


 トイレのドアを閉め、部屋に戻りトイレの外に出したポリバケツを見る。軽かったので中身は入ってないと思うけど、念の為に蓋を外し中を覗き込む。

 やっぱり何も入っていなかった。何なんだろう?・・・。


 そう言えば、最近買い物とか食事とかを改札部屋でよくするので、ゴミが結構出てしまう。一応ゴミ袋にまとめてはいるのだけど、ゴミ箱が無かったからこのポリバケツは丁度良いかもしれない。


 さっそく新しいゴミ袋を広げポリバケツに被せておく。デカいけど誰に見せる訳じゃないので、まぁいいだろう。

 ポリバケツはゴミ箱になり、適当にテーブルの近くに置いておく事にした。



 忘れないうちにリクライニングチェアに腰掛けタブレットを手に取りネットショップを開く。ゴルのトイレを準備しておかないとね。

 トイレと砂と、はいポチっとな。


『カードをかざして下さい』

「ピピッ」


 物置の方から音がした。取っ手の黒い四角の上の部分が点滅する。


「ピッ」


 ススイカをかざし物置の戸を開けると、さっきネットショップで頼んだゴルのトイレと猫の砂が押し入れの中に置かれていた。

 これこれ、この買ったら直ぐ届く早さ、楽しい。


 トイレは組み立てて、砂を適当に入れておく。それからさっきオシッコを拭いたタオルも入れておく。なんか匂いを付けておくとトイレを覚えやすいらしい。

 気が早いかもしれないが準備だけはしておいた方がいいだろう。


 ゴルのトイレの梱包のゴミとかをポリバケツに入れたり、増えてきた荷物を整理したりしてから、ダンジョン装備を付け直しゴルをハードシェルバッグに入れる。

 ゴルのご飯の為に帰ってきたけど、まだやる事はたくさんあるのだ。



 十字路部屋に置いてある電動丸ノコギリとかの道具類を改札部屋に戻したりしていたら、あっという間に時間が経ち、朝7時のアラームと共にダンジョンを後にした。

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