第46話 電気を通す
ようやく、次の作業に進む事が出来る。
文章にすると「改札部屋から十字路部屋まで蛍光灯を付け電気ケーブルを通す」この1行で済んでしまう作業に、11日間も費やしてしまったのだ。おかげで十字路部屋までの道中は少し明るくなったのだが、蛍光灯から離れてしまうとダンジョン内はまだまだ暗いままだった。
さて、今日は休日で、いつもの様に父親の世話を済ませると、ゴルを連れて20時半にダンジョンにやって来た。
すでに必要な物、道具は十字路部屋まで運搬してあるので、段取りは済んでいる。ここからは新しい作業だ。
まずは11日もの長い間、封印してしまっていた十字路部屋の左手側にある蜂の巣部屋の掃除をしなくてはならない。
敬太の予想だと、中にいるニードルビーの数は数百匹は居るんじゃないかと思っている。
中を確認して、それから中身の殲滅だ。諸々の準備は整っている。
封印の杭を抜き、通路にはまっているコンパネの蓋を引っ張り出す。それからハンディライトで通路を照らし進んでいく。
「ブーーーンブーーーンブーーーンブーーーン」
もの凄い数の羽音が聞こえた。数十匹では効かない程の大音量。
ライトが奥まで届く位置まで進むと、大量のニードルビーが飛んでいるのが見えた。あれは木刀で叩き落しきれるような数じゃない、間違いなく数百匹はいるだろう。
敬太は急いで回れ右して通路を戻って行く。
また例のタイヤ作戦でやるしかないだろう。
抜かりなく、ちゃんとタイヤ等の準備はしてきてあるので問題は無い。想定内ってやつだ。
十字路部屋まで戻ると、一旦コンパネの蓋を通路に戻し、ニードルビーを逃がさないようにしてから準備を始める。
邪魔にならない所に薪ストーブ用の薪を組み上げ、着火剤に火をつけ薪にくべる。
着火剤の火は瞬く間に薪に燃え移り、組み上げた薪は大きな火に包まれていく。
前回の失敗から学び、タイヤを置くポジションやら焚火の位置やらを少し考えてタイヤを投げやすくしてある。
本数は減らさず4本で再チャレンジするつもりだ。今度は失敗はしないようにしよう。
薪に火が付きいい感じになってきたので、コンパネの蓋を通路から取り出し、タイヤを投げ込む準備をする。
ゴミ取りトングを使いタイヤの内側に火のついた薪を入れていく。
ここからはスピード勝負だ。
薪を入れつつタイヤの燃え具合をちゃんと見ておく。しっかりと燃えた薪をタイヤの内側に詰め込まないと、タイヤが燃え残るかもしれないので、ちゃんと詰めないといけないのだが、あまりしっかりと詰めていると今度はこの場でタイヤが燃え上がってしまい、投げられなくなってしまう。
前回の失敗が正にそれだったので、今回は見極めなくてはならない。
大丈夫だ、まだ・・・もう行くか。
燃え盛かる全部の薪をタイヤに詰められなかったが、タイヤが燃えてきてしまっているので順次、通路に投げ込んでいく事にした。
ゴムの焼けた匂いが鼻を突き顔を顰めながら火の付いたタイヤを投げ込み始める。
2本目、3本目と投げ込み様子を見ると、コロコロと転がって通路の奥にちゃんと行っているのが、タイヤから上がる火で分かった。
すると、十字路部屋に居るのに羽音が聞こえてきた。どうやらニードルビーが通路から溢れてきているようだった。しかし、ここで焦ってはいけない。4本目投入だ。
数十匹のニードルビーがブンブンと羽音を鳴らし、十字路部屋に溢れ敬太に突撃してくるので、急いでコンパネの蓋を通路に押し込んだ。
煙たい蜂の巣部屋から逃げ出ようとして、コンパネの蓋にぶち当たってくるニードルビーの激しい抵抗が続く中、なんとか所定の位置まで押し込む事が出来たので、しっかりと地面に杭を打って封印をしておく。
それから敬太の周りでブンブンと飛び回るニードルビーが鬱陶しいので、背中から木刀を取り出し片っ端から叩き落した。
ふぅ、上手くいったようだ。
今回はタイヤを4本とも入れられたので、十字路部屋の方はちょっと煙たいぐらいで全然耐えられる範囲だった。
逃げ出そうとしたニードルビーも全部倒せたし、大成功と言って良いだろう。
周辺の荷物を片付け、角材、コンパネを作業できる様な開いてる場所に並べていく。
今からはコンパネの蓋の作り直しをしようと思う。何度も出し入りさせていたので、今使っている蓋は痛んでいるし、なによりチカラづくで地面を引きずって移動させてるので面倒なのだ。ここは、これから何度も開け閉めする予定だし、もっとスマートな蓋にしたいと思っていたのだ。
考えているのは台車のように下にキャスターが付いた物だ。それならば移動させるのが楽になるだろうし、なにより毎回杭を打って蓋が外れないようにしていたのを、キャスターの下にタイヤストッパーを置けば動かなくする事が出来るだろう。
まずはコンパネを通路の形に切るところからだ。なるべく正確に鉛筆で形をなぞって行く。
出来たら電動丸ノコギリの出番だ。なんせここまで電気は通してあるのだ、使わない手はないだろう。
電ノコのコードを電源に差し、角材の上に寝かせているコンパネに向かう。するとシュイーンと良い音を立てて、あっという間に切り終えてしまった。文明の利器恐るべしだ。
続けてコンパネを何枚か寸法通りに切り、終わった時には床がおがくずだらけになっていた。
切り終えたコンパネを一応通路に当ててみてサイズを確認したが問題は無いようだ。
次は組み立てに入る。今回は箱型にする。四角い箱に通路サイズのコンパネを張り付ける感じだ。
角材を骨組みにして強度を高めた箱を作る。下にキャスターを付けるので、その分も考慮した通路より小さな箱だ。
ここで活躍したのが電動ドライバー。ウイーンと手元を照らしながらあっという間にビスを打ち込んでいく。DIYには欠かせない存在だよね。
大した時間も掛からずに、キャスターが付いた四角い箱が出来た。コロコロとそれほどチカラを使わずに移動できる物だ。
そこに通路の形に切り取ったコンパネを、高さを合わせ張り付ける。
大きな作業が終わり、一段落ついたのでスマホの時計を確認すると午前0時40分になっていた。
時間を確認して、弁当を買って来てない事を思い出す。
敬太は後片付けもせずに、床を散らかしたまま改札部屋へと急いで戻った。
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