第43話 ピザ

 改札部屋に戻ると装備を軽く外し、ハードシェルバッグからゴルを取り出して、水のペットボトルが入っていたダンボールに入れる。


「ミャーミャー」

「あれ?もう腹減ったのか?」

「ミャー」


 早くもゴルがご飯の催促をして来たので、カセットコンロを荷物が置いてある所から拾い上げ、テーブルの上に置いて、片手鍋にペットボトルの水を入れて温める。


 うん。テーブルがあると便利だな。


 哺乳瓶に粉ミルクをすりきり一杯。沸いたお湯を注いで良く振る。


「もうちょっと待っててな」

「ミャー」


 リクライニングチェアに座りミルクが冷めるのを待つ間、ゴルを膝にのせてこちょこちょして遊ぶ。ミャーミャーと騒ぐゴルの鳴き声が心地いい。


 頃合いをみて人肌になったミルクをゴルの顔に近づけると、待ってましたと言わんばかりに哺乳瓶を抱きしめ吸い付いた。


「誰も盗らないからゆっくり飲みなよ」

「ミー」


 哺乳瓶から口を放さずに器用にお返事してくれた。はぁ癒されるわ。



 ゴルの世話を済ませると、またダンボールに戻してやる。

 寝床に入ったゴルは、タオルの上にアゴをのせて幸せそうにまどろみ始めた。


 さて、ここからが本番だ。

 リクライニングチェアのひじ掛けにあるタブレットを手に取り、ネットショップを開いて、必要な物を買い漁る。


 通称ドラムと呼ばれる30mの延長コードがタイヤのホイールみたいな物に巻き付けてある物と、一体型LED蛍光灯3つ、コンクリート釘、アンカー、電動ドライバーをポチる。


『カードをかざして下さい』


 え?タブレットからもいけるのだろうか?


「ピピッ」


 言われた通りタブレットにススイカ(改)をかざしてやると決済音がなり、物置の方から物音が聞こえた。


 便利すぎるだろ・・・。

 

 リクライニングチェアから立ち上がり、物置の前に行きススイカ(改)をかざして戸を開けた。中にはネットショップで頼んだドラムなどが置かれている。


 しかし、何度見てもこのスピード感は凄いなと思ってしまう。

 完全に自動販売機のスピードでネットショップが使えているのだから。


 ドラムのプラグを改札部屋に出来た「コンセント」に差す。

 カラカラとコードをドラムから引き出していき、部屋の隅に這わせる。

 本当はこのコードをモールとかで隠した方が見栄えがいいのだろうけど、とりあえず今はいいだろう。


 改札部屋の扉の方までドラムを持っていったら、何処から外に通すか考える。

 扉の枠は金属で出来ているようだが、問題は無いだろう。


 早速、さっき買った電動ドライバーを取り出して、ドリルビットを取り付ける。抜かりなく金属用のやつだ。

 電源を入れるとウイーンと唸りをあげて勢いよく回転する。

 これで扉の枠の下の端っこに、溝を空けて電気コードを外に出せるようにするつもりだ。


「ウイイイイイイインゥゥゥゥ・・・」


 しまった、充電切れだ。それもそうか、買ったばかりの電動ドライバーが充電満タンなはずが無いのだ。

 電動ドライバーの箱から充電器を取り出して、ドラムに差し込みバッテリーの充電をする。すると赤いランプが光って充電中となった。



 予定が狂ってしまったので、敬太もご飯を食べる事にした。

 臨時収入が約800万円もあったのだから、少しぐらい良い物食べても罰当たらないよね?


 リクライニングチェアに座りタブレットを取ってデリバリーを開く。

 寿司、カレー、ハンバーガーなんでもある。しかしここは王道を行かせてもらう。ピザだ!もう何年間も食べていない。


 ピザは1回頼むと3千円とかいっちゃうからね。貧乏人は食べられないんだよ。半額弁当は1個200~300円やぞ、ピザは高級品なんだよ!


 どの具材が美味しいのか良く分からないので、目に付いた半分ずつのやつにしよう。アスパラが乗ってる奴とトマトが乗ってる奴。ついでにコーラの0カロリーのも頼んでしまおう。ぽっちとな。


『カードをかざして下さい』

「ピピッ」

「カチッ」


 ん?今テーブルの箱から物音がしたけど?


 音がしたテーブルの端っこに付いている白い箱を見ると、勝手に開きだして、中から薄平べったい箱がせり出してきた。


 あ、これ知ってるわピザの箱だ。ご丁寧にペットボトルのコーラも一緒に出てきた。


 何処から出てきたんだコイツらは・・・。

 

 ピザの箱を開けると湯気が立ち上り、美味しそうな匂いが辺りに漂った。

 プシッっとコーラの蓋を開けて一口飲んで口を湿らせる。

 コーラもコーラでキンキンに冷えてやがる。


 それから敬太は数年ぶりのピザを心行くまで堪能した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る