第24話 スキル
ダンジョン内の階段を上り、体育館ぐらいの大きさの部屋に出る。
そこには鳩ぐらいの大きさのニードルビーが数匹浮かんでいて、地面にはピルバグことダンゴムシが転がっている。
まずはニードルビー、蜂から倒そうか。
肩に担いでいたつるはしを置き、背中から普通の木刀「赤樫 小次郎」を抜く。
歩きながら浮いている蜂をバシバシと叩き落していき、向こう端の壁に着いたらUターンして落ちている一万円札を拾いながら戻ってくる。
ニードルビーを5匹仕留めたので、5万円だ。よしよし。
ダンプカーのタイヤみたいな形したダンゴムシ、ピルバグ。この部屋には6匹程転がっているので、つるはしを拾い近づいていく。
動かないダンゴムシ相手なら、スキルの試運転が出来るだろう。
ダンゴムシの手前で足を開き腰を落とし、つるはしを頭の上まで持ち上げスキルを使う。
「【強打】」
なんと言うのだろうか、バッティングセンターで大きな当たりをした時や、ゴルフで気持ちよく真っ直ぐに飛んだ時のような、いわゆる、芯を食った感じと言うのだろうか。手に伝わる衝撃は
要は、気持ちいいのだ。
パスンといい音をさせ、ピルバグにめり込んでいるつるはしを見ると、根元辺りまでダンゴムシに突き刺さっていて既に煙が噴き出している。いつもなら、つるはしは半分ぐらいまでしか刺さらず、そこからグイグイやって柄を起こしてやって、それで止めを刺しているのだが。スキルを使ったら一撃だったようだ。
不思議だ、どんな理屈なのだろうか。
だが・・・これは凄いかもしれん。
「【強打】」パスン
「【強打】」パスン
「【強打】」パスン
気が付くと、あっという間に部屋に居たダンゴムシを倒しきってしまっていた。
早い!疲れてない!良い事ずくめだ。
意味が分からない不思議なチカラだけど、これは使わない手は無いだろう。
地面に落ちているお金を回収して、鼻歌交じりで次の部屋に向かう。
これだと、今日もまた稼ぎの新記録作ってしまうかもしれない。
壁にあいている洞窟のような狭い穴を抜けると、同じ様な大きさ、同じような作りの部屋が現れる。
移動してきたこの部屋も体育館ぐらいの大きさで、蜂とダンゴムシの姿があった。
ここも、さっきと同じ様に蜂を木刀で叩いてから、残ったダンゴムシに取り掛かる事にした。
「【強打】」パスン
「【強打】」パスン
調子よくスキルを使い、ダンゴムシを煙に変えていっていたのだが・・・なんか、急に手が震え始めチカラが入らなくなってしまった。なんだろうこれ?
病気か毒か?分からない・・・。
症状としてはハンガーノックに近い感じがする。手が小刻みに震えだし、血圧が上がっているのか視界がグワーッってなって、チカラが入らない。
どうしたんだろうか?
ここはポーションを飲んだ方がいいのだろうか?でも勿体無い気もするし。どうしよう。残り1本だけあるポーション。今飲むべきなのか?
しばらくの間、ひとりでアワアワして、ポーションを飲むか飲むまいかと迷っていると、症状が少し落ち着いてきたので、逃げるようにして改札部屋へと戻った。
改札部屋へと戻り、装備を外し楽な恰好で休んでいると次第に手の震えは治まり、体にもチカラが入るようになって来た。
ふう、ビックリした。
しかし、なんだったんだろうか。最初は病気とか毒とかかと思ったんだが、そんな感じじゃない気がする。症状的には、ハンガーノックのような感じだったんだが、お腹は空いてないのでハンガーノックじゃない。
他に考えられるのは「スキル」の使い過ぎかもしれん。
調子に乗ってスキルをバカスカ使ってしまっていたのだ。
そう考えだすと、それが一番可能性があるように思えてきた。
何かスキルに回数制限とかがあるのかもしれない。もしそうであるならばもう一度スキルを使ってみて、また症状が襲ってくれば、原因はスキルだと言えるだろう。
使って何もなければ、原因はスキル以外だ。
ちょっと怖いけど確かめてみよう。スキルが関係してるのか?してないのか?
おもむろに立ち上がり木刀を手にした。ゆったりと構え2~3度素振りをする。
体の方は何ともない。チカラは入る様になっているし、手も震えていない。先程の症状は消え失せている。
「ふっーと」息を吐き、大きく息を吸い込む。
「【強打】!」
声に出し、スキルを使おうとした。だが、木刀の振りに【強打】を使った時のような鋭さは無く、ただの素振りの時と同じ様な感じだった。
スキルが不発したのかと不思議がっていると、先程も感じたハンガーノックのような症状がまた襲ってきた。チカラが抜け、手が震えだす。独特の辛さが襲う。
やっぱりこれはスキルのせいだったようだ。
症状は辛いが、毒とか病気では無かったのが分かって安心できた。
チカラが入らないので、床に体をなげうって楽な姿勢で横になる。
頭がボケーとしてきて、うまく物事を考えることが出来なくなってきた。
なんだか先程よりも症状が重い気がする・・・。
次第に瞼が重くなってきてしまったので、なんとか抗おうとしたが、意識は闇へと落ちていってしまった。
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