第295話 撤退戦(6)相沢side

 山岸直人という人物に同行してもらいダンジョン内でモンスターを数えきれない程倒した。


 その結果――、私のレベルは500に到達した。

 そしてレベルが500になると同時に視界にはゲームのようなシステムウィンドウが出た。

 そこには魔法習得可能と表記されていた。

 表記の下の項目には3種類の魔法が表示されていて――、私は自身よりもレベルが高いであろう山岸という人物に指示を仰いだ。


 魔法というのはダンジョンを出てからでも使えるというのは、日本ダンジョン探索者協会の掲示板で書かれていた。

 ただ、基本的に冒険者というのは秘密主義者が多く出てくる情報はほとんどない。

 情報が圧倒的に少ない――、それは命が掛かっているダンジョンに潜って稼いでいるのだから、切り札を持ちたいという冒険者にはとっては至極当たり前の事で、無暗に聞くのはタブーとされていた。


 ちなみにレベル500超えの冒険者の数は大手ギルド以外は零細にも、それなりの数はいる。

 そしてレベル500を超えた場合には例外なく何の魔法を覚えたのか? と、いうことを国に届け出をしなければいけないけど、届け出をする人は恐ろしく少ない。


 ――何故なら……。


 公務員に教えることは情報流出が確定だと誰もが思っているから。

 過去に遡って星のように個人情報・組織情報を流出させ誰も責任を取らない――、そんな社会人失格のような無責任な人間が官僚になれる日本という国に、何の魔法を習得したかを教えるのは自殺行為だと冒険者は分かっていたから。


 だから、ダンジョンが出来て6年近く経過しているけど……、未だにどんな魔法が存在しているのかを知っている人は限りなく少ない。

 知っていても、せいぜい身内――自分達の所属しているギルドくらいなもの。


 だから、私は山岸直人という人物に魔法のことを聞いても、たぶん答えてはくれないと思い彼に何の魔法を選べばいいのか聞いた。

 その結果、治癒魔法を覚えることになったけれど、その魔法はとても便利だった。



 魔法を覚え順調に22階層まで夫の痕跡を調べながら踏破したところで、見た事が無いモンスターが出た。

 それは、鳩羽村の日本ダンジョン探索者協会が発表したことがない形のモンスター。

 彼は、私に戦うか? と、聞いてきた。

 だけど、生理的に嫌悪感が勝って彼に倒してほしいと目で訴えたところで――、モンスターがいきなり粉々に――、木片に散った。


 一瞬――、私は何が起きたのか理解できなかった。

 レベル500を超えた私が知覚できない攻撃。

 まだまだ自分が未熟だと知らされた瞬間でもあった。


 ――それと同時に、43階まではダンジョン内を踏破出来ると確信した。


 ……そう。

 ダンジョン地下22階層の休憩所の状況を見るまでは……。


 地下22階層は怪我人で溢れていた。

 そんな中、彼……山岸直人という人物に日本ダンジョン探索者協会より依頼があった。

 それは突然、ネット回線に繋がらくなった現状を打破して欲しいという依頼。

 インターネットに繋がらなくなると言う事はダンジョン内でのGPSも役に立たなくなり攻略難易度は跳ね上がる。

 彼は、その依頼を快く引き受けていた。

 やはり、彼は普段は面倒そうにしているけど根は良い人なのかも知れない。


 それは、戦国無双から私を助けてくれた時に再確認できた。

 ……でも、本当は理解していなかった。


 本当に強いというのは何なのかということを。




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