第181話 蠢く陰謀(10)
鉄格子のある部屋。
牢屋に入れられて夢見心地のまま寝ている俺の耳元に牢屋の扉が開く音が聞こえてきた。
佐々木とは連絡はついていないんだが……。
「おい! 起きろ!」
「――ん?」
瞼を開けて扉の方を見ると、俺を捕まえた不精髭を生やした刑事と見たことがある男の二人の姿が見えた。
「お久しぶりです。山岸さん」
「…………あんたは……」
誰だ? と言う言葉を飲み込みながらスキル【神眼】で俺に話しかけてきた男を確認する。
ステータス
名前 山吹(やまぶき) 武彦(たけひこ)
職業 警察官 ※警察庁長官
年齢 57歳
身長 167センチ
体重 71キログラム
レベル1
HP10/10
MP10/10
体力14(+)
敏捷11(+)
腕力12(+)
魔力 0(+)
幸運 2(+)
魅力31(+)
所有ポイント0
「どうして、こんなところに警察庁長官がいるんだ?」
「覚えていてもらえて光栄です。いつぞやの病院以来ですね」
「そうだな」
居住まいを正しながら言葉を返す。
「君、席を外したまえ」
「山吹長官」
「席を外せと言ったのが聞こえなかったのか?」
「――わ、わかりました」
俺を捕まえた刑事が、牢屋から出ていく。
足音から十分離れたところで山吹が俺の方を見てくる。
「知られたくない話でもあるのか? そもそもどうしてお前がここにいる?」
「私が、この場にいる理由は山岸さんを助けようと思って来たからですよ」
その言葉に俺は肩を竦める。
「理由付けをするなら、もっとマシなことを言うんだな。お前の話には信憑性がない。そもそも千葉東警察署で起きた問題で俺は警察関係者には良くは思われていないはずだが?」
俺の言葉に山吹は懐からタバコを取り出すと火をつけ口に咥える。
「まぁそうなんですけどね。山岸さんの事は、警察関係者の中では非常に扱い辛い事になっています。――ただ……、あなたの力は、とても魅力的だとも警察上層部は考えています」
「何?」
「貴方が世界中に流した動画、あれは衛星通信を利用するしか方法が無かったと警視庁サイバー対策チームの担当は結論付けています。つまり、貴方は衛星通信をハッキングする技術をもっている……、もしくは長けている人物とコネクションがあると言う事になる。我々、警察関係者としては、山岸さんをヘッドハンティングしたいと思っています」
「やれやれ、俺が手を貸すわけがないだろう?」
そもそも世界中の通信衛星にハッキングをかけたのは大賢者であって俺ではない。
そういう評価を下されても迷惑なだけだ。
「なるほど……、たしかに日本国政府と繋がりがある貴方が、政府との仲が宜しいとは言えない我々、警察に力を貸すのは難しいでしょうね。それなら、この牢獄から出す交渉材料として、この松阪市に来た理由を教えてもらえませんかね?」
「後輩の帰郷の手伝いだが?」
「やれやれ、見え透いた嘘は困りますよ。山岸さん、何か政府からの密命を受けているんでしょう?」
「密命だと?」
「ええ、日本国政府は伊豆半島を爆撃したアメリカ合衆国の次世代宇宙兵器である『神の杖』に関しては、テロリストであるレムリア帝国が行ったことを日本国政府の公式見解として発表しました」
「ほう」
「つまり日本国政府は、アメリカ合衆国との交渉材料に使うために真実を隠蔽しようとしたのです」
「そうか。お前たちも普段から良く同じことをやるよな」
「――ッ! そ、それは……、いまは! それよりも! 大勢の市民が職を失い家々を失った方が問題でしょう! 日本国政府は、正しい治世! 正しい行い! 正義を民衆に知らしめないといけないのです! それが民主主義の在り方なのですから! 山岸直人、君もそうだと私は思っているのですが?」
「何を言っているんだ? 正義なんてものは、立場になって変わるものだろう?」
「いいや、ピーナッツマンである貴方なら分かるはずだ。海ほたるで、そして伊東市で大勢の人間を救いアメリカ合衆国の次世代宇宙兵器を破壊し何の見返りも求めていない貴方なら分かるはずだ!」
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