第173話 蠢く陰謀(2)

 東名高速へ乗り換えてから、しばらくクラウンは南下を続ける。

 途中、伊豆半島に落ちた【神の杖】の影響の余波による復旧作業で沼津IC付近で渋滞に巻き込まれはしたが、4時間後には浜松を通りこし名古屋市内へと車は向かう。


「ずいぶんと時間が掛かるのですね」

「そういえば、佐々木は車を運転したことはないのか?」

「えっと……、免許を持っていないです……」

「意外だな――」

「色々とあって……」


 佐々木が言い難そうにしている事から、何となく事情を察することが出来た。

 俺の予想が間違っていないなら、佐々木は運転が苦手なのだろう。

 まぁ、習志野駐屯地にダンジョン講習会に一緒に行った時も電車とバスの移動だったからな。

 

「あの……」

「なんだ?」

「えっと……、パーキングエリアに寄らないのですか?」


 足をモジモジさせながら、佐々木が聞いてくるが――、只でさえ沼津の工事渋滞に嵌まっていたのだ。

 パーキングエリアに停まる用事もない事から、そのまま松坂市まで進みたい。


「山岸様。連続での運転は、危険ですので一度、パーキングエリアで休憩を挟みたいと思うのですが――」

「そうですか。わかりました」


 たしかに連続運転は、集中力低下と運転の質を落とす。

 休憩は必須だろう。

 車は、美合パーキングエリアへと入る。

 駐車場に車が停まったあと、佐々木は――、そそくさと建物の方へと向かっていく。

 

「山岸様」

「相原さん、どうかしましたか?」

「彼女は、お手洗いに行きたかったみたいですので、休憩を取りました」

「そんな素振りは一切見せては……」

「パーキングエリアに寄りたいというのが女性なりの遠まわしのお願いだったんですよ」

「なるほど……、それならトイレに行きたいから休憩所に寄ってくれと言ってくれれば……」

「それが言えないのが女性ということですよ」


 ――そう言うと、相原さんはパーキングエリアに併設されている自販機に向かっていく。


「女というのは良く分からないな」


 アイテムボックスから、ヌカリスエットを取り出し飲み干しながらスマートフォンを取り出す。

 どうやら、名古屋市付近の高速道路は年始と言う事もあり空いているようだ。


「2時間くらいか……、この分なら、思ったより早く到着できそうだな。まぁ、俺も手洗いに言っておくとするか」


 パーキングエリアで、しばらく休んだあと車は高速道路を順調に進み1時間半ほどで嬉野パーキングエリアを超え松坂ICで降りる。


「ようやく松坂市に到着か……」

「はい。長かったですね」

「そうだな」


 車は、松坂市内に入る。


「相原さん、松坂駅周辺でホテルを二部屋借りてあるので――、そちらで今日は休みましょう」

「わかりました」

「――え? ホ、ホテルですか!? しかも二部屋ですか?」 


 佐々木は何を言っているんだ?

 俺と相原で一部屋。

 佐々木で一部屋の合計二部屋だろうに。

 3部屋も借りたらさすがに効率が悪いくらいは分かるはずだが……。


 

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