第169話 陰謀渦巻く(4)
「言っておくが――」
「分かっているよ。君が、ピーナッツマンだということは世間的には伏せておこう。それは我々、日本国政府にとっても都合がいいからね」
「ふむ、それは対外的な政治に利用したいということか?」
「そのつもりはない。人間は信じたい物を信じたい生き物だからだ。君が、自分自身の言葉で日本ダンジョン探索者協会に所属している関係者だと言っただろう? その時点で、君は日本国政府が抱える戦力として周辺諸国には認識されているんだよ」
「なるほどな……。つまり正体不明の最高戦力として保持しておきたいってことか」
「そういうことだ」
「やれやれ」
とんだ食わせ物だ。
まぁ、俺の正体を大勢の人間に知られるよりかはいい。
死んでいるはずの人間が生きていると妹が知った時、どういう反応をするか分からないからな。
「――さて、君からの依頼――、山岸鏡花という人物の調査依頼。たしかに受けよう」
「そうか。何か進展があれば――」
「楠くんを通して江原くんに連絡を入れよう」
「分かった。それでいい」
話は終わった。
ソファーから立ち上がる。
「山岸君」
振り向くと同時に飛んできたカードを受け止める。
そのカードには、日本ダンジョン探索者協会の名前が書き記されていた。
「これは?」
「それは日本ダンジョン探索者協会が発行する冒険者カードだ」
「なるほどな」
たしかに名前は、山岸直人と記載されている。
「その冒険者カードは、銀行引き落としカード機能も兼ね備えている。もちろん君のカードは、Sランク冒険者だけに発行される特別製だから一日百万円までしか下ろせないATMカードとは訳が違う。そのSランク冒険者カードは口座にお金が入っている限り引き出し金額に限度額は存在しない」
「ほう。中々、便利なものだな」
「もちろんだ。そこには、約束どおり200億円が入金されている」
「ありがたく受け取っておくとしよう」
「山岸君。あとから知られると問題になると先に言っておくが――、君の名前で日本ダンジョン探索者協会に冒険者登録をさせてもらった。そのカードはピーナッツマンでは登録されていない。それだけは先に言っておきたい」
「いや、その方がいいだろ?」
ピーナッツマンで登録されているカードを使ったら一発で身バレしてしまう。
「最後に一言だけ言わせてほしい。伊東市の市民を助けてくれてありがとう」
夏目がソファーから立ち上がると頭をふかぶかと下げてきた。
「珍しいな……、政治家が一般市民の為に頭を下げてくるとは――」
「そうか……、そうかもしれないな。だが――、私は――、人は城、人は石垣、人は堀と言う言葉を信じているからな」
「なるほど……。そういう考え――、嫌いではない」
俺が知っている腐りきった政治屋とは、どうやら一味違うようだな。
――だが!
「そういう考えを俺に押し付けるような真似だけはするなよ?」
「分かっているさ」
夏目は、頷きながら答えてきたが――、どうも――、そのあたりは信用できそうにないな。
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