第168話 陰謀渦巻く(3)
「分かりました。私の一存では決めかねますので――、総理のところまでご案内します」
小野平防衛大臣に首相官邸の中を案内され3階の南会議室に通される。
そこには多くのスーツを着た男達が忙しなく作業を行っている姿が見て取れた。
そんな連中の中で、ただ一人ジーパンとワイシャツにコートと言った出で立ちはとても目立つ。
誰もが部屋に入ってきた俺へと視線を向けてきた。
「こちらへ」
あとを付いていくと自衛隊の制服を着た男――、楠と話している夏目の姿が確認できる。
「山岸直人……、どうして――、ここに……」
楠が驚いた様子で俺の名前を呼んできた。
「楠、お前には関係ない。それより――」
「もう会う事は無いと思ったが……、いや――、私も君には聞きたい事があったのだ。こちらへ来てくれ」
「総理、私も――」
「楠くん。君程度の力では、彼の相手は無理だ。――いや、誰にも彼を止めることは出来ない。それは日本ダンジョン探索者協会の責任者に任命された君が一番良く分かっているはずだが?」
「――ッ!?」
「それに彼には借りがある」
夏目は俺が後を付いてくるのを確信しているかのように会議室を出ていく。
俺は、その後ろを付いていくと夏目は部屋の前で足を止める。
「君達は外で待っていてくれたまえ。私は、彼と話があるからな」
SPと思わしき男達は、不服そうな表情をしていたが夏目の言う事は絶対なのか黙って頷く。
夏目が部屋に入ったあと、俺も部屋に入ると扉は閉まる。
「好きな所に座ってくれたまえ」
部屋の中央には円卓上のテーブルが備え付けられており、ソファーがいくつも置かれている。
その中の一つに座ると、適度な反発を感じさせながらも座り心地はとても素晴らしい。
「――さて……」
向かい合うように日本国首相である夏目総理がソファーに座る。
「まず君には、お礼を言いたい」
「何のお礼だ?」
「誤魔化す必要はない。山岸直人こと、ピーナッツマン」
「……何を言いたいのか分からないな」
俺は肩を竦めながら言葉を返す。
「そうか……、それなら――、別にそれでもいい。これは独り言だが――」
「自分語りなら一人の時にしてくれ」
何が悲しくて男の独り言を聞かないといけないのか。
夏目が、俺の言葉に大きく溜息をついたのが見えたが、今更――、言葉を撤回するつもりもない。
「分かった。それで、頼みたい事と言うのは何かね? 君の頼みなら、市民を守ってくれたという貢献もあるのだから大抵のことは日本国政府としては力を貸そう」
「そういう上から目線は、俺は好きではないんだがな。頼みたいことは、俺の妹――、山岸鏡花を探してほしい」
「山岸鏡花?」
「ああ、俺のことは調べたんだろう?」
「報告を受けたのはアメリカ合衆国政府が君に興味を持ったということ。そして国内でスペシャルフォースが暗躍していると報告を受けていること。そして、君がピーナッツマンの着ぐるみを着た時の状況を【海ほたる】の監視カメラが捉えていたのを見たくらいだ」
「……そ、そうか……」
つまり、俺――、個人の情報は詳しくは調べてはいない。
ただ――、俺がピーナッツマンである証拠は握っているということか……。
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