第25話
ソーサルの固有能力を持ち、かつ身体武装と同等の身体能力を生まれつき要する。だがそれは単なる付加要素でしかないことを祥介は知っていた。
ソーサルとて身体も心も、普通の人間と変わりはないのだ。殴られれば痛いし、斬られれば血は出る。当然、致命傷を受ければ死に至る。
「祥くんはソーサルの見分け方って知ってる?」
真澄の質問に祥介は唸りながら考える。
「固有能力を見るとか。あとは」
綾奈の髪色を除けば、見た目の容姿は蓮華も含めて普通の人間だ。やはり、選ばれた人類と仰々しく言われていても人間には違いないことを再認識する。
そこで区別の仕方を問われると答えはないようにも思えた。
他の、見分け方か。
悩んでいる祥介を見て真澄は沈痛な声で言った。
「そうやって悩んじゃうくらい普通の人と一緒なんだよね。身近にいる私達がそれをよく知っている。でもね、一つだけ確実にソーサルだと他人が断言できるポイントがあるんだよ。一番最初で、最後の見分け方」
「最初で最後……」
真澄は頷いて、十分に間を空けてからこう続けた。
「泣かないんだって」
「泣かない?」
「ソーサルに選ばれた人間は、生まれてきたときに泣いて生まれてこない。安心して、眠りながらこの世に命を授かるの」
人は誰しもが泣いて生まれてくる。
祥介は今までその意味を考えたことはなかった。そういうものだと、決まっているものだと思っていたからだ。
けれど、真澄は解釈によるけど、という前置きしてからこう説明してくれた。
子どもが泣いて生まれてくるのは悲しいからだ、と。
自分は選ばれなかった、という涙なのだと。
「リベラシオンは、大学病院から街の産婦人科まで網を張り巡らしてるわ。霊術師を潜り込ませているんじゃなくて、泣いて生まれてこない、でも健康な赤ちゃんを見たら教えてくれってね。単なる情報提供だからそれを止めることはできなくて。お金をちらつかせれば大抵の人はボランティア感覚で教えちゃうのよ」
「守秘義務はどこにいったんですかね」
「本当に。まぁ仕事に対してプロ意識が無くなったのはどの職業でも同じよね」
祥介は憤りを隠せず拳に力が入ってしまう。これまで真澄が人に苛ついたり、貶したりするところは見たことがないが、さすがの彼女も呆れたように深いため息をついていた。
「それじゃあ、その情報をリベラシオンが手に入れたら……」
「真っ先に動く。もちろん、母子ともに」
「イカれてる」
祥介は拳を机に打ち付けそうになるのを堪えた。何にどう動くのか、真澄ははっきりと明言しなかった。それは世界が歪んでいることを証明する言葉だった。
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