第69話 ダンジョン 10階層 後半

家に戻り、緊急家族会議を開催する。

今回の氷龍からは今までのように力業では無理ではなかろうか。

作戦が必要だ。戦闘メンバーのみでは同じ戦略しか浮かばないのでメイドちゃんたちも参加してもらった。それでもなかなか決定的な良い案が浮かばない。そこで、学校の教師&王族のみなさんにもお願いしてみた。

 魔法は効きにくいというだけで全く効かないわけではない。いつも通りのごり押しでなんとかなるかは五分五分というところだろうか。やはりブレスが怖い。まともに食らったらただではすまないだろう。まずはスキルを奪ってブレスを封印するのが先決であろう。


①スキルスティールでブレスを封印 ← スカイ案

②デバフでステータス、HPを削る ← サクラ案

③スキルを奪ったと言っても基礎能力が半端ではないドラゴンなのでこちらの防御力も上げておく。 ← 元Aランク冒険者の教師

④倒れるまで殴る ← 戦闘メンバー


さすが元ゲーマーのサクラだ。デバフをすっかり忘れていた。デバフとは状態異常や防御力ダウン等のいろいろなマイナス効果のある魔法やスキルのことである。

①は俺が担当し、②、③は白ミレーが担当する。ミレーには各種バフ、デバフを強化した。それにしても、うちの戦闘メンバーは脳筋の集まりである。体調万全で向かうために今日はゆっくり寝ることにした。


いよいよ氷龍との決戦だ。やられる前にやれの精神で先制攻撃を仕掛ける。まずはスキルスティールでスキルを奪う。ブレスの他に耐性スキルも奪ったので魔法耐性も物理耐性も落ちたはずである。戦闘直前に白ミレーが全員に攻撃力UP、防御力UP、ヘイスト(速度UP)、マジックブースト(魔力UP)等のバフをかけた。すぐに黒ミレーに切り替え戦闘態勢に入っている。俺がスキルを奪い終えた直後に今度は黒ミレーからデバフが叩き込まれた。耐性を失っているためデバフが重ね掛けされていく。たまらず反撃に入った氷龍だが、ブレスを吐く体制になって初めてスキルを奪われていることに気付いた。気づいた時にはすでに遅い。一気に爆炎系魔法を叩き込む。炎と煙の中、氷龍が悲鳴を上げながら悶えている。魔法で弱らせたあとは物理攻撃で打ちちのめす。俺は日本刀を取り出し、居合い斬りの構えで精神集中する。トドメの居合い斬りの斬撃で首を切り落とす。すると抜刀術というスキルを覚えた。氷龍は光となって消えていった。今回も宝箱をGetした。宝箱を開けると冷気をおびた日本刀であった。もちろん、俺の愛刀となった。名前を氷鬼(ひょうき)とした。この刀には氷の追加ダメージがあるようだ。

 次の部屋へ移動すると今度は放電しながら光っている雷龍がいた。下手に攻撃すれば感電しそうである。とりあえず、先ほどと同じ戦法でいくことにし、全員が戦闘態勢にはいる。まず、スキルを奪う。すると放電が消えた。その瞬間、雷龍はスキルが消えたことに感づいた。吠えたあとに一気に間合いをつめてきた。リッカとカリンが盾を構えたが、雷龍の尻尾で薙ぎ払われ吹っ飛んで行った。やっと黒ミレーのデバフがかかり、動きが悪くなってきたので態勢を立て直す。リッカとカリンはステータスの高さとバフ効果でドラゴンの尻尾攻撃ですらキズをおわなくなったらしい。ただ、体重が軽いので吹っ飛んでしまった。間合いを取り直し、ティアから氷、水、風系魔法の指示が来たので一気に魔法を集中砲火する。最後は氷鬼の抜刀斬撃で首を切り落とす。なんとか雷龍も倒すことができた。宝箱からは双剣が出てきたのでシャナに渡した。右の剣は炎、左の剣は雷の属性を持っていた。

 まだ開けていなかった土龍と緑龍の宝箱をあけると両方とも大楯であった。土龍の方は土属性で、盾を地面に突き刺して構えると土壁(アースウォール)が発生し、地面と一体化して防御力が大幅に上昇する。緑龍の方は木属性で、地面に突き刺すと根を張り盾が拡大する。同じように防御力が大幅に上昇する。これで吹っ飛ばされることは無くなるだろう。カリンに土の盾、リッカに木の盾を渡した。水龍、風龍の宝箱には水の衣という火耐性がある軽装備と風のマントという敏捷UP効果を持ったマントが入っていた。水の衣をシルクに風のマントをエルザに渡した。

 次の部屋に入ると最後のドラゴンの光龍が立っていた。


「ここまでよく来たな。女神の使徒よ。待っておったぞ。」


光龍がしゃべった!


「今日は氷龍と雷龍の2戦行っておるじゃろ。一度帰って休むが良いのじゃ。明日鍛えてやろう。万全の態勢で挑んでくるのじゃ。」


お言葉に甘えて一旦帰って休むことにした。

光龍の中身はおそらくメリーナであろうと想像しているが、気づかないふりをしてあげようと思う。女神は暇なのであろうか?

エルザが武器を持っていないことに気付き、急遽俺が鍛冶で作ることにした。

鉱物はMyダンジョンで増やしているし、ドラゴン等の素材もそろっている。何を作るか悩んだが、死神が持っている鎌(デスサイズ)にすることにした。エルザは身体能力が高いのでこれで物理攻撃もいけるようになるだろう。初めての武器鍛冶だがうまくいって良かった。それからこれまで奪ってきたステータス値をみんなに分配しメンバーのステータスの底上げを行った。


次の日、朝ご飯をしっかり食べ、光龍に会いに行った。


「おはようございます。光龍様。」


「おはようなのじゃ。それじゃあ、始めるぞよ。準備は良いか?」


全員が戦闘態勢になった。今回は鍛えてもらうので最初からのスキルを奪ったりはしない。ミレーには白ミレーで回復と支援に回ってもらう。エルザは無反応である。リッカとカリンが盾を構えスキルを発動、そこに尻尾攻撃が炸裂したが耐えた。新大楯の性能は凄まじい。ドラゴンの攻撃に耐えるということはもう敵無しだろう。光龍がブレスの体勢になったのでリッカがアースウォールを展開し、カリンも黒龍に変身しブレスの体勢になった。ブレスがぶつかり合い弾けた。ブレス後の硬直から復帰する前に左右からシャナとシルクが飛びだした。上空からエルザがデスサイズを振り下ろす。3方向からの攻撃を両手と頭突きで対抗されたが、攻撃はこれで終わらない。俺が全力の抜刀斬撃を土壁の影から放っていたのだ。気づかれて避けられたが間に合わず、左腕と尻尾を切り落とした。あとは右腕の攻撃とブレスに注意すればよい。とその瞬間は考えていた。しかし、光龍なので光属性の魔法は得意だった。不意をついてやっと与えたダメージだったが回復されてしまった。しかし、光龍の言葉で戦闘が突然終了した。


「まさかわらわがダメージを受けるとは思わんかったのじゃ。驚いたぞ、スカイとその仲間たちよ。合格じゃ。わらわ自身がダンジョンコアなので倒されるわけにはいかんのじゃ。だからここで戦闘は終了させてもらうぞ。」


「メリーナ様、鍛えていただきありがとうございました。まだまだ甘いことが分かったのでこれからも精進いたします。」


「気付いておったのか? わははは。。。 ちょっと恥ずかしいのじゃ。ダンジョン制覇の報酬を渡すとしよう。新たな祝福じゃ。スカイよ、受け取るがよい。」


俺の身体が光った。新たな祝福は『不老不死』というものだった。


「この祝福は、スカイの眷属であり婚姻関係になったものにも適用されるのじゃ。年齢は絶頂期で固定される。若いものはその年までは成長するから安心せい。年を重ねたものも若返るのじゃ。ただし、老化で死ぬことはないが、ダメージでは死ぬので気をつけるのじゃぞ。あと、たまには我も構ってくれても良いのじゃぞ? 最近連絡がないではないか。」


ちょっと拗ねていた。今はティアが居るから正直用事がないのだが、近況報告はしようと思った。

ダンジョンの外に転送してもらい、ギルドへ報告に行った。

10層の情報は500金貨の報酬でしかたなく売った。

あと、このダンジョンはメリーナが作って管理しているダンジョンであることも教えてあげた。このダンジョンは攻略困難なことから不落のダンジョンと呼ばれていたが、制覇されてしまったので今後は女神のダンジョンと呼ばれるようになるそうだ。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


ダンジョン編終了となります。

次号からは新たな章に入ります。

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