11話.今日は眠れなさそうだ。
「次は必ず、チョコケーキにする。ごめんね。本当にごめんね。」
先輩はとても泣き虫だったみたいで、泣きながら話した。
「それは来年もあたしと一緒にクリスマスを過ごしてくれるってこと?」
「そうなるといいね。」
そうだね。そうなるといいね。
「先輩、あたし今日寝て行ってもいいかな。」
先輩の動きが一瞬止まってから不自然にまた動く。
「そ、そうね。いいんじゃないかな。」
先輩が緊張していることがはっきりと見える。いつものちょっとした冷たさを見せたかったようだがバレバレだよ。今日の先輩はちょっとかわいい。
どうしよう。千花が私の家に眠っていくのは初めてだ。それも告白してからすぐの夜だ。本当にどうしよう。なんの準備もしていないのに大丈夫かな。普通の友達もなかったから普通の友達と夜の過ごし方も知らないのに、好きな人との夜の過ごし方だなんて知るわけないだろう!
とにかく冷静だ。いつものような冷たさを演じよう。ダメかもだけととりあえずはそれだ。でも本当にどうしよう。私、今日は緊張して一睡もできない気がする。まさか、もしかしてのことはないよね。まだ互いの気持ちを確かめて一日もたっていないのだから。あ、でももうキスもしたし、その次を求めてのことだったのだろうか。ああ、どうしよう。そう、とりあえず体をきれいにしてからにしよう。
お風呂にすると言ったら千花はいつもの笑顔で「じゃあ、食器はあたしが片付いておくね。」と言った。もしかして緊張しているのは私だけかな。そんなことを思いながら熱い風呂に入った。
風呂に入っていることを想像してしまう。これはだめだ。ベランダに出よう。冷たい風でも浴びると風呂に入ってもないのに熱を放っているあたしの体も少し冷えるだろう。
ベランダで見える空は曇っていて星も月も何もかも見えなかった。先輩と付き合うようになった夜だから少しは晴れてもいいのに。神様はあたしたちの恋愛をあまり応援してくれないのかなと思ってしまう。それでももし神様があるとしたらあたしは神様に感謝をしたい。愛葉先輩と一緒になれるようにしてくれてありがとうございますと。
先輩と一緒にしたかったものは多かった。だが先輩はめったに外にだようとしないからできなかったもののほうがもっと多い。でも今日からは先輩と恋人同士なんだからあたしがもっと強引にいろいろして回ろうと押し付けてもいいんじゃないかな。まず明日はないをしようかな。
先輩とのこれからのことが期待で今日は眠れなさそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます