第10話

響けペレストロイカ「──というわけで、いかがでしたでしょうか、私こと大日本帝国海軍所属、特Ⅲあかつき型駆逐艦2番艦、『ひびき』を主役とした、前回第9話のほうは?」




佐世保の490「……ええと、『響』さん──いえ、『ヴェールヌイ』さんとお呼びしたほうが、よろしいでしょうか?」




響けペレストロイカ「いえいえ、時雨しぐれさん、この前回の第9話に対する【説明回】においては、僕のことはどうぞ『響けペレストロイカ』とお呼びください。僕も時雨さんのことは、『佐世保の490』さんとお呼びいたしますので」


佐世保の490「では、『響けペレストロイカ』さん、一体前回は、何だったのでしょうか? いかにも第二次世界大戦末期の、ソビエト軍の対日参戦を彷彿とさせるようなエピソードを、唐突に挟み込んだりして」


響けペレストロイカ「ああ、例のアレですよ」


佐世保の490「アレ、って?」




響けペレストロイカ「どこかの総理大臣閣下が、自分も敗戦国民のくせに、ロシアの対ドイツ戦勝利75周年記念式典に、参加するなどと臆面もなく言い出したことに、インスパイアされたわけなのですよ」




佐世保の490「……あー、なるほど」


響けペレストロイカ「一体、何を考えているのでしょうね?」


佐世保の490「アレって、もしかしたら、ロシア政府のほうから招待されたんじゃないんですか?」


響けペレストロイカ「だからって、のこのこ参加しにに行くなんて、どういう神経しているんでしょうね? きっと他の招待国からは、白い目で見られるに決まっているではないですか?」


佐世保の490「Web小説なんかでは、貧乏なヒロインが、悪役令嬢にお城のパーティに招待されて、その場違いゆえに赤っ恥をかかされてしまうと言う、お馴染みのパターンですよね」


響けペレストロイカ「むかし、『メンフ○ス・ベル』という、アメリカ軍マンセーの映画が流行った時、米軍の爆撃機がドイツ国内の軍需工場の爆撃に成功したシーンで、それを観ていた日本人の観客が拍手喝采をした際には、思わず反吐が出そうになりましたよ」


佐世保の490「わかります! 日本がドイツの同盟国だったことを抜きにしても、アメリカの無差別爆撃は別に軍需工場だけではなく、都市そのものを破壊していたのであって、女性や幼い子供を始めとして、何の罪もない人たちだって、大勢『殺している』のですよ⁉ それなのに東洋の平和ボケどもが、笑顔で拍手喝采するなんて、どこまでアメリカに洗脳されているんだよ⁉ ──って、感じですよね!」


響けペレストロイカ「こういったことを踏まえると、まさか某国を代表するプライムミニスターご本人様が、ロシアの対ドイツ戦勝記念式典にのこのこ参加するなんて、絶対に許されませんよ!」


佐世保の490「──あ、でも、一応日本は、ロシアの対ドイツ戦勝利に、少なからず『貢献している』と、言えるんじゃないですか?」


響けペレストロイカ「はあ? 何を言い出すのですか! 確かに日本はロシアと不可侵条約は結んでいましたが、積極的な軍事的協力なんて、一切行っていないではありませんか?」




佐世保の490「そう、まさにその『不可侵条約』なのですよ! ドイツ軍の猛攻によって、あわや首都モスクワが陥落せんとした時に、かつてノモンハンにおいて激戦を交わした日本軍と不可侵状態にあることは、まさしくロシアにとっても文字通りに『後顧の憂いを断っている』状態にあって、何の心配も無く全力でドイツ軍の迎撃に当たることができ、ロシアならではの過酷な『冬将軍』の助けもあって、辛くも撃退できたってわけなのですよ」




響けペレストロイカ「──ッ。つまり、日本軍は間接的に、ソビエト軍の対ドイツ戦を、有利に運ばせたと言うの⁉」


佐世保の490「まあ、そういう意味からすると、某首相が、ロシアの戦勝記念式典にお呼ばれしても、それほど不思議は無いかなあって」


響けペレストロイカ「……かなり『こじつけ』臭くもありますが、確かにまったく根拠が無いわけではありませんね」


佐世保の490「でも、本当に日本のお陰で、ドイツに勝ったとすると、大戦末期に不可侵条約を一方的に破棄して、突如対日参戦したことは、絶対に赦せませんよね⁉」


響けペレストロイカ「そう、そうなのよ! だからこそ前回、あのようエピソードを、急遽挟み込んだわけなのです!」


佐世保の490「──ということで、作品自体の意義については、一応話がまとまりましたので、いよいよ中身のほうへと、解説を進めて参りましょう」


響けペレストロイカ「中身、というと?」


佐世保の490「今回、本作における最大の謎であった、私たち軍艦擬人化少女の、『正体』が判明したではありませんか?」


響けペレストロイカ「そうですね、──読者の皆さん、実は私たち軍艦擬人化少女は、かの有名なる『ショゴス』だったのですよ!」


佐世保の490「ショゴスと言えば、『不定型なメイドさん』──つまりは、何にでも変身することができる、クトゥルフ神話でお馴染みの、不定型暗黒奉仕種族!」


響けペレストロイカ「クトゥルフですよ、クトゥルフ!」


佐世保の490「確かにクトゥルフ──特に、ショゴスと言えば、メイドさんですが、忘れてはならないのは、『沙○の唄』!」


響けペレストロイカ「……ああ、確かに、シロクマ兵たちが、『赤黒い怪物の体内に閉じ込められた妄想』を見せられるところなんて、モロ影響を受けてるわ」


佐世保の490「虚○玄と言っても、『まど○ギ』ではなく、実は『沙○の唄』だったと言うw」




響けペレストロイカ「……それで、私たち軍艦擬人化少女が、ショゴスだったとして、そのような幻想を見せることはもちろん、己自身の右腕を砲門に変形させたり、無限に砲撃したりできるのは、どういった仕組みになっているかと言うと、何とすべては、現代物理学の中核を担う量子論と、心理学きってのオカルト理論である集合的無意識論とに、基づいていたのです!」




佐世保の490「はあ? 軍艦擬人化少女が、量子論や集合的無意識に基づいているですって⁉」




響けペレストロイカ「一見不変に見える万物が、長い目で見れば変化していっているのは、すべての物質における物理量の最小単位である量子が、ミクロレベルおいて形なき波と形ある粒子という二つ形態を繰り返していくことによって、徐々に変化を遂げていっているからで、よってショゴスが何にでも変身できるのは、己の肉体を意識的に形なき波にした後に、(再び形ある粒子として)思い通りの形態に構築し直すことができるからであり、しかもそれは自分自身だけではなく、周囲の物質を形なき波の状態にして、好き放題に変形させることすらも可能で、実は無限のエネルギーを維持したり、無限に弾薬を補給したりできるのも、大気すらも含む周囲の物体を再構築して、己自身の軍艦としてのエネルギーや、主砲の弾薬等にして、常に補充し続けているからなのです」




佐世保の490「な、何と、ショゴスの己自身や周囲に対する変形能力は、量子論に基づいていたわけですか⁉ だとしたら、シロクマ兵に幻想を見せた仕組みのほうは、どうなのでしょうか?」


響けペレストロイカ「そっちは、集合的無意識を活用しているの。何せ集合的無意識には、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってきているのだから、あのようなそれこそ『沙○の唄』そのもののイメージを、対象の人物を強制的に集合的無意識にアクセスさせることによって、直接脳みそに刷り込んで、まるで自分自身が狂気のクトゥルフ世界にいるように実感させることすら、実現可能なのですよ」


佐世保の490「……ちょっと待って、集合的無意識とアクセスって、それってまさに、私たち軍艦擬人化少女が、軍艦の兵装に変身メタモルフォーゼする時に唱えている、例の『呪文』そのものではありませんか⁉」




響けペレストロイカ「そりゃそうでしょう、他人を強制的にアクセスさせることができるんなら、自分自身だってアクセスできて当然なのでは? それに理論上、何にでもなれると言っても、その対象の形状情報データ等を知らなければ、そっくりそのままに変身することなんかできっこないのであって、そのためにこそ何かに変身する時には必ず、集合的無意識とのアクセスを行って、必要な情報データを己の脳みそにインストールしているってわけなのですよ」




佐世保の490「……ええと、以上の諸々を総合すれば、実はショゴスである私たち軍艦擬人化少女は、量子論と集合的無意識論に則ることによって、自分自身のみならず、周囲の人や物質を──下手したら、世界そのものを、自分の思いのままに情報データを書き換えて、どのような状態にでも変化させることができると言うことでは?」




響けペレストロイカ「そう、実は私たちは、世界そのものの改変レベルの、事象変換──つまりは、『何でもアリの魔法』を実現することができるの」




佐世保の490「えー、そんな⁉ これまで本作の作者は、頑ななまでに、物理的な世界の改変や、物理的な魔法の実現なんて、絶対にできっこないって主張してきたくせに⁉」




響けペレストロイカ「今回のように、『実は軍艦擬人化少女とは、ショゴスであり、真に現実的な魔法少女なのである』という、真理に思い至った瞬間に、軍艦擬人化少女が量子論と集合的無意識とによって実現できるなら、世界の改変や本物の魔法すらも、量子論と集合的無意識とによって実現できることに気づいたってわけなのよ」




佐世保の490「……すごい、魔法の実現まで、量子論と集合的無意識論によって実証してしまうなんて、これってまさしく、すべての創作物における、大革命じゃないの⁉ 一体この作者って、どこまで行くつもりなのよ⁉」




響けペレストロイカ「さあね、少なくともこの作品こそが、その『指標』の一つとも言えるんだし、せいぜいお手並み拝見と参りましょうよ♡」

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