ファンタジー即興葉桜(2)
魔法界では日照時間が少ない。午後四時だというのにもう空は薄い紫色に変わり始め、室内では蝋燭が琥珀色の玻璃越しにぼんやりとした光の環を壁に描く。
三つ並べられた机の上では、土色をした手捻りの小さな壺の中でこぽこぽと泡が音を立てている。ローブ姿の者たちが、各々の手で包み込んだ壺の中を息を詰めて見守っている。
「あっ」
一人が小さく叫んだのと、その者の手の中から眩い光が拡散したのが同時だった。
それを合図に、長机の方々から次々に光が発散し、机の上に、天井に、壁に線を引いていく。その色は白金、銀、翡翠色、碧、様々だ。
「一番はウェネ、二番はカトル、成績『優』、と。どう、他もほぼみんな、光を出せたかな……」
部屋の中央で頭を巡らせた桜子は、一番端の机の隅にまだ光を発していない壺を見つけた。
「まだ発光できないの、葉太」
「……桜子、これは選んだ
「今は『春川先生』」
ぴしりと諭して、桜子は葉太の手の中を覗き込んだ。水底には、ほんのり色づいた桜の花が沈んでいるばかりだった。
「葉太はどうしても光の魔法が苦手なのね……身を守るのに光と治癒魔法は会得しないと」
「わかっているけども」
壺を見つめたままの葉太の肩をぽんぽんと杖で叩いてから、桜子はそれを天井に向かって一振りする。杖先から発せられた光線が天井から吊り下げられた幾つもの蝋燭に当たり、たちまちのうちにそれら全てに火が灯った。
「じゃあ今日の授業はおしまい。みんな、光を『閉じて』壺を棚にしまってね」
***
即興葉桜二日目。続けるとは……言っていません。きになる方はエッセイをフォロー(笑)
普段下書きが残らない分、一発書きを残しておくのもいいかも。
葉桜、皆さんのをちょこちょこと読み進めています。読むならきちんと読まねば、ということでなかなかに読み進められていません。ごめんなさい。
十分休憩を終えます。仕事に〜もーどれっ!
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