第63話
青柳がそう言い、私と魁斗は神主に一礼をして車に乗り込んだ。
病院に着くまでの間、魁斗が後部座席でずっと「紫苑。紫苑」と大きな声で言っていた。
見ると、泣いているのだ。
青柳の運転の邪魔になるかと思って、静かにするように言うことも考えたが、このままにしておくほうがいいと判断した。
青柳もこの程度のことで集中力を乱したりはしないだろうし。
やがて病院に着き、紫苑の治療が終わるのを待った。
結果から言えば、紫苑のケガはたいしたことはなかった。
体を貫いた針は急所を外していたし、針が細かったために体内の損傷も少なかった。
若いし傷痕もほとんど残らないようで、短期の入院ですむとのことだった。
ただ医者がどうも好奇心が強いタイプのようで「あなたたち、そんな格好でなにをしていたんですか?」とか「あの女の子に刺さっていたもの。あれはなんですか? あんなものは今まで一度も見たことがない」とか何度も質問を繰り返すのには閉口したが、適当にごまかしておいた。
ただ医者はあの針をとある研究機関に送るとも言っていたが、私があれは私物なので渡せないと言い張り、それは阻止した。
調べたとしても結局なんだかわからないだろうが、あやかしの身体の一部がどこかの研究機関に渡るというのは、いいことではない。
私は名残惜しさ全開の医者から針を受け取った。
「で、紫苑に会えますか?」
「今は薬で眠っていますから。面会は明日になるでしょう」
「そうですか」
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