第60話

針は紫苑の左胸の上あたりに突き刺さり、そのまま背中まで抜けていた。


「紫苑!」


魁斗が紫苑を見た。


するとあやかしが次の針を飛ばしてきたが、そのときには私と青柳が追いついていて、針を叩き落した。


「バカ! あやかしから目をはなすやつがあるか」


紫苑を見ると苦痛の表情を浮かべている。


「紫苑。紫苑。悪かった。俺が悪かった」


私は紫苑を抱き起こした。


その間にもあやかしが針を飛ばしてきたが、それは青柳が防いだ。


「魁斗、飛燕の言うとおりよ。化け物から目をはなすなんて。あんたやっぱりバカだわ」


「紫苑、いいからしゃべるな」


「バーカ」


そういうと紫苑は目を閉じた。


それを見た魁斗が紫苑からあやかしへと視線を移した。


「くそう、この化け物め。俺は怒っているぞ。とてつもなく。おまえに。でも一番怒っているのは、俺自身にだ!」


魁斗が戦鎚を構えた。


そこに針が飛んできたが、戦鎚でさばいた。


「くそっ、このやろう!」

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