第34話

私は魁斗がなぜそれを当然だと思っているのかわからなかったが、わかっていることは、彼がそれを当然だと思っているということだった。


「まあ、動きやすい服にしろよ」


「それくらいわかってるさ」


――ほんとにわかってるのか、こいつは。



四日後、魁斗のアパートに行くと、魁斗が「待ってたぜ」と出てきた。


その格好ときたら、黒い革ジャンに黒い革のズボン。それらのいたるところから金属性のなにかが無数に生えている。


おまけに前髪の中央部分が直立して赤く染まり、それ以外は黄色に近い金髪。


パンクロッカーともビジュアル系ともつかないなにかだ。


印象としてはパンクロッカーに近いが、パンクロッカーでもここまでやるやつは、その方面に詳しくない私は見たことがなかった。


「それ、革だろう。動きに問題ないのか?」


「全然ない。つれは知る人ぞ知る名人なんだ。とくにこの手の服に関してはな」


こんな服の名人とは。それで生活が成り立つのかとも思ったが、成り立っているのだろう。


「飛燕は陰陽師のコスプレしないのか?」


「今日はあやかし斬りじゃないからな。それに前も言ったが、あれは陰陽師の正装であって、断じてコスプレではない」


「そんな細かいこと、どうでもいいじゃないか。とにかく今からいっしょに封印の風穴に入るやつに会いにいくんだろう。ならさっさと行こうぜ」


「まったく、こいつだけは」

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