第78話 クリムゾン陣営の脅威度
遅れてやってきたサテラの介入により、不審者扱いを受けていたセイランも有耶無耶の内に場に馴染んでいた。誤解も解けたところでセイランは海岸に来た目的を果たす事にした。
「いいタイミングできてくれたねサテラ。」
「何がですか?」
今しがた来たばかりのサテラにはセイランが先ほどまで置かれていた状況など知る由もなかったので、彼女が何を言っているのか分からなかった。
「こっちの話だから気にしないで。」
「はぁ、そうですか。」
釈然としないサテラを後目にセイランはクリムゾンと再び向き合った。
「さて、一応私の事は思い出してくれたみたいだから本題に移るけど、あなた達は何をしにここに来たんだい?」
「んー?なんだっけ?朝ごはん?」
クリムゾンはいまいち今回の旅の目的を理解していなかったため、とりあえず覚えていた直近の予定を口にした。そしてその言葉を聞いたシュリの腹の虫がぐーっと鳴った。
「姉御ー、早くご飯食べに行きましょうよ。俺腹ペコっすよ。」
どうやらスフィーも空腹を感じていたらしくシュリの意見に同意して頷いた。
「なに?あなた達食事をとりに来ただけなの?」
セイランは今までの会話からクリムゾン陣営の中核を担うのがクリムだと見極めていたので彼女に問いかけた。
「ええまぁ朝食をとりに来たのは間違いないですが、そのためだけに町に出てきたわけではないですよ。サテラから私の事を聞いている様ですし既に知っているかもしれませんが、私の目的はクリムゾンへの挑戦者を探す事です。そして今回の旅は世界情勢をより詳しく知るのが目的ですね。」
セイランが勘違いしているならあえて真の目的を開示する必要はないのだが、クリムは昨日の活動を通して自身には会話の駆け引きは向いていないと把握していたので正直に話そうと考えたのだった。
セイランはあまりにも素直に目的を話すクリムを一瞬訝しんだが、彼女が嘘をついている様子もないので信用した。
「なるほどね。事情は分かったよ。それでこれからどうするつもりなんだい?」
「まずは四大国のいずれかに向かうつもりだったのですが、その前に四大国の現状を交易所で聞いておこうと再度この町を訪れたのですよ。」
「あなた達そのままで四大国に行くつもりなの?」
「何かまずいですか?」
「クリムゾンは当然として眷属であるクリムとアクア、それとスフィーだったかしら?あなた達みたいな強力な魔力を持つ者が集団でやってきたら間違いなく大騒ぎになるよ。シリカは辺境の小さな町だし、青龍会が治安維持やらなんやら戦闘行為を担っている関係で魔力感知できる人間は居ないけれど、大国には軍隊もあれば魔法を研究する機関もあるからね。私がわざわざ魔力を擬装していたのもそう言った理由だよ。」
「そうですね。その事は私も軽率だったと考えていたところです。」
「あれ?俺はいいんすか?」
シュリはそれほど強くないのでナチュラルにハブられていた。
セイランはクリムゾン達の目的を聞き、彼女達が世界に混乱を招く様な意図を持っていないと分かったが、このまま好きに行動させるとその意思とは関係なく問題が起きるのは必至だと考えた。そしてひとまずは様子を見に来ただけであり、あまり彼女達に干渉するつもりは無かったセイランだが、目に見えている爆弾を放置するのも気が引けたので、彼女達の目的が滞りなく達成できる様に少し手を貸そうかと思案していた。
一方クリムもまた考え事をしていた。セイラン並びにサテラはクリムゾン達の魔力を感知して調査に乗り出してきたのはクリムも分かっていた。そして旅先で実力のある者に目を付けられ警戒されてしまうと、クリムゾンへの挑戦者を探すという目的に支障が出かねないので、今後はもう少し慎重に行動しようと反省した。
なおクリム以外の仲間達はセイラン達が何故海岸に現れたのかさえ分かっておらず、クリムの反省とは裏腹に呑気に雑談しているのだった。
「まだ話長引きそうっすか?ひとまず朝飯食べに行きましょうよ姉御。」
シュリが再びお腹を鳴らしながら催促した。
これにセイランが応じた。
「ああ、引き留めて悪かったね。私としてはもう少し話が聞きたいんだけど・・・そうだ、一緒に食事をとらないかい?食事代は私が持つよ。」
「いいんですか?私としても聞きたいことが有ったのでその提案自体には賛同しますが、奢ってもらう義理は無いと思いますよ。」
「いやなに、ちょっと提案というか頼みたい事も有るから手付料だと思ってくれればいいよ。もちろん頼みごとを受けるかどうかは話を聞いてから判断してくれていいよ。」
「そうですか?よく分かりませんがそう言う事ならご馳走になりましょうか。」
クリムは一応クリムゾンに目配せして判断を仰いだ。
「うん、いいんじゃない。」
クリムゾンは元より交渉ごとはクリムに一任するつもりだったのですぐに了承した。
「あなた達は昨日もハーレ・アイナで食事をとったみたいだけど、あいにくこの町でまともな食事処となるとあそこしかないから同じ場所でいいかな?」
「はい、お任せします。」
「よし。それじゃ移動しよう。」
「はーい。」
こうしてセイランに連れられて一行はレストランハーレ・アイナへと向かった。
セイランの頼み事とはなんなのか、また彼女に聞きたい情報は何があるか、頭の中で整理しながらクリムは歩き出した。
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