第54話 シゴクの友達作り

―――キナリがクリム・サテラ・シュリ(旧エビゴン)と話し終えて、大空洞内を照らす陽光球スフィアオブサンライトを設置した後、再びシゴクの元に戻ったところから話を再開する。


「戻ったわよシゴクちゃん。」

「うん、おかえり。何話してたの?」

「龍の巫女のサテラが居たからちょっと挨拶してきたのと、クリムゾンの眷属の子とちょっと話をしてきたわ。私達がこの島に到着する前に感じた気配、その正体があの子だったみたいね。」

 キナリはクリムの方に長い首を向けながら言った。

「ふーん。クリムゾンに眷属なんていたんだ。」

 キナリに釣られてシゴクもクリムの方に顔を向けた。

「なんだかサテラに似てるね。」

「ええ。あの子の名前はクリムと言って、サテラというかエコールの姿を模しているらしいのだけど、エコールの記憶を持っているから私の事も知っていたのよ。」

「え?何それ?」

「はっきりした理由は彼女にもクリムゾンにもわからないらしいわ。まぁクリムゾンはちょっと特殊なドラゴンだから、そんな事もあるのかもしれないわね。」

「ちょっと変なんてレベルの話じゃない気がする。私も眷属をたくさん作ってる方じゃないから、その辺の仕組みに詳しいわけじゃないけど。」

「まぁまぁ気にしても仕方ないわよ。それよりシゴクちゃんもあの子達と一緒に話をしてみない?サテラはあなたも知ってるから問題ないだろうし、クリムはあなたと似て落ち着いた感じだったから話が合うと思うわよ。あともう一人の子はよくわかんないけど、たぶん悪い子じゃないわ。」

 シュリは元々の深海海老から比べれば遥かに強力な生物に進化しているが、キナリから見れば取るに足らない存在であったため、あまり気にしていなかったのだ。


 キナリは他者との関りを避けようとするシゴクの消極的な性格を、矯正とまでは言わないが少しでも緩和できないかと策を弄しているのだった。しかしシゴクは実力だけならドラゴン種全体で見てもトップクラスであり、今までの人生(ドラゴン生)ではボッチで引きこもっていても特に問題なかったのが実情であった。ところが今回クリムゾンの出現によって普段は引きこもっているシゴクと一緒に出掛ける機会を得られ、またシゴク以上の力を持つクリムゾンとの戦闘を経て彼女が自身の未熟さに気付いたので、せっかくだからこのチャンスを生かそうと考えたのだ。

 なおシゴクが引きこもっている理由の一つがキナリのストーカー行為への対処であることを彼女は知らない。


 キナリの提案にシゴクは少し迷った様子を見せたが、思い立ったように口を開いた。

「うん、わかった。私も一緒に行くよ。向こうの話が終わるのを待っていてもいいけど早くお母さんの事を聞きたいし。それに私は必要ないから群れていないだけで、別に人付き合いが苦手なわけじゃないし。」

 シゴクは傍から見れば明らかに人(ドラゴン)嫌いで付き合いが悪いのだが、本人にその自覚は無かった。

「うふふ、そう言う事にしておくわ。それじゃ行きましょうか。」

「そう言う事ってどういう事?」

 シゴクの問いにキナリは答えず、ただ微笑むだけだった。


―――ここでようやく全員合流するわけだが、クリムゾン達がエビゴンの名前をシュリに改名した場面の直後へと繋がる。

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