第一章 相棒候補

殺し屋界の一匹狼

私達の国は戦争をしている。

かつて数十の国と対立、戦争をしていた。

そのため戦力がかなり落ちてしまっていた。

その結果として戦争に負けかけている。

そのニュースを聞く傍ら、今日のモーニングコーヒーを淹れる。

今日もいい音を奏でている。

仕事終わりに久しぶりの我が家に帰ってきたが、やっぱり我が家が一番というべきか、とても落ち着く。

コップに注がれた淹れたてのコーヒーは湯気を出し、温かく私の冷えた心身を癒してくれる。

リビングのソファーに腰かけると、黒猫の〈リズ〉が体を擦り寄せてくる。

こいつはもともと捨て猫だった。

ダンボールの中で母を探していたのだろう必死に鳴いていた。

この仕事をしている人にしては珍しいと言われているが、少し寂しいのだ。

私はリズの喉を触ってやりながら。


「リズ…ただいま。暫くの間帰って来れなかったが…どうだ、元気か?」


「ニャーオ」


問いかけに応じてくれたのだろうか。

そうなくと私の膝の上で丸くなってしまった。

あぁ、それをされると私が仕事に出られないのだが…


「リズ頼む、今からまた仕事なんだ、いかせてくれないか?」


そう話しかけても無視をするリズ。元気そうでよかった。

だがそうなついてくれるのは嬉しいが、今の私には少し困る。


「今日は大仕事なんだ、少し早めに出たいのだが…」


スマートフォンが鳴りはじめた。 

言わんこっちゃない…マネージャーだ。

渋々机の上に置いていたスマートフォンを取り、応答する。


「もしもし」


聞こえてくるのは私の専属マネージャー、エドガーの声。


『やぁ!元気かい?』


本当に元殺し屋だったのかと疑ってしまう。


「元気?と言われてもさっきぶりではないか?」


会ったり電話したりするときはいつもこうだ、今日は特に最高潮らしいが。


『そうだったな!実は、今日の会議は13時からになった。あと、仮眠を取っておいてくれ。』


真面目な声に戻るエドガー。


「なぜだ、私にはそんなものいらない。」


仮眠は余計な雑念が湧く、だから邪魔でしかない。


『いつものただひたすらにってのが出来たらいいんだが、今回そうはいかないみたいでな、少し脳を使うんだ。』


どういうことだ、いつもは俺に合わせて仕事をとってくるのだが。


「…わかった、寝ておく。」


仕方ない、彼は私の専属マネージャーだ、何かあるのだろう。


『それに、今回はいつもの倍の数がいるようだ、気を引き締めてくれ。』


「あぁ、わかった」


『あーとそれとだな、今日から新人育成を頼みたいんだ。』


私は耳を疑った。なんだと?新人?教育係ではないのだが。


「新人は私の邪魔だ。断る。」


『いや、そうならないように考えはあるさ、何年君のマネージャーをしていると思っているんだ?』


…そのとうりだ。


「そうだな…で、その新人という奴の情報を貰えないか?」


そう私がいうと、リズが不安げに体をなすりつけてくる。

心配してくれるのか、優しいなリズは。


『…で、役はスナイパー兼情報伝達。彼女は新人だが、かなりの腕だ。』


「そうか、その感じだと見せてもらったみたいだな。」


かなり興奮している様子だ。

私は他人に興味はないが、彼は何人もの腕を見ている。

そして彼がこんなにも興奮しているのは、俺と初めて会ったあの日以来だ。


『あぁ、彼女は君に並ぶぞ…。』


震えた声で私に告げると、大きなため息をついたエドガー。

私は危機感を感じた。

並ぶ…か、成績トップの私までたどり着けるというのか。

そう簡単には来れないはずだが。

それに私みたいな特殊能力があるということか?


「相当期待しているな?」


『もちろんだ、君の相棒候補だからな。それに、』


       〜♪


置き電話が鳴る。

私の方ではない。

ということは彼の方だろう。


『すまない、また会議で話そう。』


ツー…ツー…ツー…


「私に並ぶ力…か。」


リズはなおも体を寄せてくる。

ため息をもらし、リズに告げた。


「なあリズ、久しぶりの睡眠だ。寝ようか。」


先ほどまで飲んでいたコーヒーを置いて寝室へ向かった。

置かれたコーヒーからは湯気がまだ上がっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る