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最悪の時を迎えたのは翌日の昼前。前日の真夜中過ぎから吹雪が酷くなり、四人は寝ては覚めての時間を過ごす。朝になっても、うたた寝程度で身体を休める事しか出来なかった。建物の中からミシミシと音が聞こえ始めた。四人は転がるように外に出る。その瞬間、建物は崩壊した。雪が舞い散り転び逃げた皆の身体に降り注ぐ。
ついに寝る場所が無くなった。焚き木も替えの服もほとんど埋まった。
四人誰も口を開かない。開けない。
昼間なのが救いだが、この吹雪の中をソリを押して歩くのは無謀。酷くなればホワイトアウトでお互いの居場所すら分からなくなる。
三人が車中で寝て、一人がトイレで寝る事になる。松浦がトイレで寝ると言い出す。
建物の雪をどかすが壊れたコンクリートはピクリとも動かない。自販機の辺りが盛り上がってる。中に空間があるはず。そこら辺りの荷物を取れたら。と思い、佐々木と松浦が掘るが無駄な体力を使っただけ。
なによりも替えの服が少ない。汗をかいたり濡れたりしたら終わりだ。
一人が入れる大きさのカマクラを作る。トイレ。食事は温かいお茶をメインに空腹を満たしてる。体温調整のせいか頻繁に尿が出る。
帆を作る為のビニールシートはたくさんある。バリバリと凍っているが何回も叩き松浦はそれを身体から頭まで巻いた。
[充分温かい]
くぐもった声で皆に言った。
寝れるうちに寝とく。と言い松浦はそのままモゾモゾと動き外のトイレに入った。
アユミも自分の体調があまり良くないのに気付き、私も寝るわ。と車の中に入った。佐々木はユウキと同じ車に入る。
佐々木親子は結局眠る事が出来ず車から出る。ドアの音でアユミも出て来た。どうやらアユミも眠れないらしい。
砂糖入りのお茶かコーヒーを飲もう。
佐々木が言い出す。トイレでは松浦がピクリとも動かない。近付いて耳をすますとかすかなイビキ。
砂糖とコーヒーをもって来た佐々木は言った。
[松浦は寝てるよ。よく寝れるよな]
[羨ましいわ]
アユミが答えながら火を焚いた。
風が若干弱まってく中で三人は熱く甘いコーヒーとお茶を飲む。
[ねぇなんで二人で逃げないの?]
アユミが佐々木に聞いた。佐々木は答えた。
[家族だからな]
その答えにアユミは微笑んだ。そうだね。もう家族みたいなもんだね。と心からそう思った。
以前の私なら、私だけなんとか生き延びると思っていたし、それを行動にも移していた。それで他人が困ったり死んだりした事もあった。全く罪悪感は感じなかった。
でも今は違う。死ぬのは嫌だが多少の不利益でも助け合いたい。と思ってる。
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