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[セミも食べられるよ]
とユウキが隣に座って言った。アユミは顔をしかめる。
[元々は甲殻類。エビやカニと一緒だから。尻尾の中を食べるんだ]
[美味しいの?]
[うーん。味はしないよね。中国じゃセミの唐揚げとかあるから大丈夫]
[中国はおかしいんだよ]
アユミは食べたくないので文句を言った。
[日本人がナマコや生卵、生魚を食べるのはイギリス人やフランス人からしたら、とても信じられないんだって。それと同じだよ]
アユミはユウキのウンチクに抵抗する。ユウキのは屁理屈だ。
[ここは日本だし]
[僕も同じ事を父さんに言ったよ]
ユウキは笑って言った。
私はユウキと同じ精神年齢か。とアユミは心の中で悪態をついた。
[お父さんは?]
[父さんは周りを調べてる。おかしいんだ。父さん、凄くワクワクしてるんだって]
とユウキは笑って答えた。
[佐々、お父さんがそう言ったの?]
ユウキはうなづく。
佐々木はけっこうクールな態度なのに、ワクワクとか言うんだ。意外と可愛いかも。とアユミは少し笑った。
笑ったせいか少し元気が出てきた。
[ユウキも洗いなよ。病気になったら大変だし]
ユウキは従う。洗いながら、
[ねぇ、松浦さんとアユミさんは恋人?]
と聞いてきた。
[どちらかといえば兄弟かな。頼りない兄貴って感じ]
アユミは誤魔化す。飲み屋でよく使ってた模範解答。
[ユウキは私の弟ね]
アユミは言う。
[父さんとは?]
[うーん。父さんは兄貴になるんじゃないかな。凄く頼りになる兄貴]
アユミは笑って答えた。
[変なの。僕も父さんもアユミさんの兄弟って]
ユウキも笑いながら言った。
[この世界がもうおかしいから何でも有りなのよ]
[その兄貴が帰って来たぞ]
後ろから佐々木が言った。二人振り向く。話を聞いてたみたいだ。
[もう一人の兄貴は?]
佐々木は笑って言った。
[まだ寝てるわ]
アユミも笑って答えた。
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