第43話 洗面所

 古い自宅を部分的にリフォームして、洗面所と浴室だけがピカピカになった。

 リフォームから少し経った日の夜、歯を磨こうと真新しい洗面台の前に立ち、水を出した。そのとき、蛇口の平べったいハンドルに、自分以外の誰かが映り込んでいるのに気付いた。

 顔を上げるが誰もいない。気のせいかと思い、もう一度かがみ込むと、やはりもう一人人影が見える。

 髪の長さがまるで違う。やはり誰かが映り込んでいる。

 その日は台所で歯磨きを済ませた。

 布団の中でふと、洗面台や蛇口の形を変えたから映り込むようになっただけで、本当は今までもずっと洗面所に誰かがいたのではないか、という考えが頭に浮かび、改めてぞっとした。


 リフォームから一年が経った。

 今も時おり、洗面台の蛇口のハンドルには自分以外の影が映る。

 なぜか毎回、違う人物らしいのが、最近気にかかっている。

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