修学旅行

「お兄ちゃん、早く行かないと遅刻しちゃうよ」


 修学旅行の朝、良平は玄関のとこで桃花から離れようとしいない。

 このままでは集合時間間に合わない可能性すらある。

 今までずっと一緒だったのに三日間も離れるのは良平と桃花には拷問だ。

 一切離れようとしない二人を見て、詩織は「はあ~……」ため息をつく。


「わかってる」

「うう~……お兄さん」


 桃花の方も全く離そうとしない。

 学校の授業だったら放課後になれば会うことが出来るが、修学旅行は泊まりがけなので一人だ。

 寂しいに決まっている。


「お兄ちゃん、桃花」

「わかったよ」


 名残惜しいが、学校行事だから仕方ない。

 良平は桃花から離れ、集合場所である空港まで向かっていった。


☆ ☆ ☆


「良平くん、ギリギリだね」


 空港着いた良平見つけた恵里菜が手を振る。

 ほとんどの生徒揃っているようで、夢乃とサラもいた。

 修学旅行は全員私服で、特に恵里菜は白いブラウスにハイウエストのプリッツスカートとお洒落だ。

 膝上だから綺麗な太ももがチラチラ目に入る。

 こっちでは気温が下がってきているからカーディガンを着ているが、沖縄に着いたら脱ぐだろ。


「まあ、色々あってな」

「そっかそっか」


 特に気にしている様子はなさそうだが、一瞬だけ恵里菜の表情が変わった。

 ギリギリまで桃花イチャイチャしていたことを見抜いたのだろう。


「にしても眠い……」


 朝早い時間に集合のため欠伸が止まらない。

 こんなに早く起きたのは本当久しぶりで、電車では爆睡していた。

 降りる駅が終点じゃなかったら乗り過ごしていたかもしれない。

 遅刻していたら行かなくて済んだのに残念だ。

 沖縄なんて面倒なだけで、桃花イチャイチャしていた方がよっぽど良い。


「そうだね。私も少し眠いなか」


 可愛らしく恵里菜も欠伸をする。

 でも、楽しみで眠れなかったのかもしれない。

 少しして先生が現れ、点呼して飛行機に乗る準備を始めた。


☆ ☆ ☆


「ねみ……」


 飛行機に乗った瞬間に良平は目を閉じて夢の中に入っていった。


「ちょっ──良平くん?」


 隣には恵里菜がおり、良平の頭は彼女の肩に乗っている状態だ。

 ここ最近良平のことが気になっている恵里菜には効果抜群で、頬が真っ赤になっている。

 恥ずかしさが一気に込み上げてきて、恵里菜は「あう~……」と良平のことを見れない。

 あざとい性格をしている恵里菜であるが、異性と触れ合うことに慣れていなかった。

 でも、自然と嫌な気持ちはなく、むしろもっとこうしていたいという気持ちすらある。

 凄い眠そうにしていたため、良平はしばらく起きないだろう。

 なので沖縄に着くまでの間は恋人同士のような時間を過ごすことが出来る。

 神埼さんでなくて自分に……そう思うと恵里菜は自然と笑みがこぼれてしまう。


「少しくらい良いよね?」


 短時間くらい独占してみたいという想いが出てきてしまい、恵里菜は良平の手を握る。

 指を絡め合うという恋人繋ぎで、恵里菜か「えへへ」と可愛らしく笑顔を見せる。

 他の男子からしたら良平は羨ましいと思うだろう。

 学校一の美少女と言われる桃花が彼女で、元・学校一の美少女である恵里菜にも好意を寄せられているのだから。

 ただ、良平は恵里菜に好意を寄せられていることに気づいてはいないだろう。


「確かにイチャイチャは止めれる気がしないね」


 良平と桃花がいっぱいイチャついている理由がわかった。

 一度味わってしまったら離れることなんて到底できはしない。

 ずっとこうしていたいという気持ちにかられると同時にどうしていいかわからなくなる。

 良平には桃花という彼女がいるので、告白しても断られることはほぼ確実だ。

 二人が別れるなんて考えにくい。


「やっぱり好きなのかな……」


 こうしてくっついていたいと思ってしまっているのだし、恵里菜は良平のことを好きになっている。

 名前を覚えてくれてなかったから仲良くしようと毎日話しかけていただけで、最初はこうなるなんて思ってもいなかった。

 彼女の首に噛みついたり手錠で繋いだりと良平はかなり特殊性癖なのだが、恵里菜はされても良いとすら思ってしまう。

 惚れてしまったマジックだろう。

 他の人にされたいなんて絶対に思えない。

 恵里菜は良平に身体を寄せ、沖縄に着くまで楽しむのだった。

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