お祝い

「何で赤飯なんだ?」


 晩ご飯の時間になって良平と桃花がリビングに行くと、テーブルには赤飯があった。

 他にも良平が好きな鶏の唐揚げやポテトサラダなどがあり、凄い不思議に思う。

 唐揚げもポテトサラダもカロリーが高いいため、佐藤家の食卓では一緒に出ることが少ない。

 でも、今日は二つ同時にあるので、何であるのかわからずに良平の頭の中にははてなマークが浮かぶ。


「そりゃあお兄ちゃんと親友が初めてを捧げあったんだし、お祝いしないといけないでしょ」


 エプロン姿の詩織がそう言った。

 確かに今朝に伝えたので、準備するのは可能だろう。


「桃花が無理矢理奪ったならともかく、お兄ちゃんが同意したんでしょ?」

「そうだな」


 詩織は味噌汁をテーブルに運び終えるとエプロンを外した。

 初めてを捧げたということは、多少なりとも良平は女性に興味を持ったということだ。

 妹の詩織からしたら嬉しいのだろう。

 だからお祝いで赤飯や良平が好きな料理を作ったというわけだ。

 もし、桃花が無理矢理していたとしたら、詩織は今すぐにでも家から追い出そうとしていただろう。


「それにしても初体験を終えても手錠はするんだね」


 これだけは容認出来ないらしく、詩織は繋がれているとこを白い目で見る。


「もう一回手錠つけて学校に行こうと思うんだけどどうだろうか?」

「止めて。私が恥ずかしいから止めて」


 一緒に登校しているので、手錠で繋がれている二人がいたらあ詩織にとっては羞恥心しかないだろう。

 良平は本当に考えが他の人とずれており、桃花を独占出来るのであれば何をするのにも厭わない。

 それは婚姻届を出そうとしたことからわかるだろう。


「あえて手錠繋いで行って停学になるというのはどうだ? そうすれば学校に行かなくて済むから一緒にいれる」

「やん。お兄さんは天才ですか」

「絶対に止めて。わざと停学になろうとしないで」


 良平を好きになってから桃花の考えもおかしくなっていて、詩織は呆れたようにため息をつく。

 以前の桃花は少しあざとくて男を惑わす妖艶な性格をしていたが、今では良平のことしか考えていない。

 一途なのはいいことだが、もう少し自重すべきだ。


「停学になったら課題多いからイチャイチャ出来ないよ」

「そうだった……課題なんていらないぞ」

「そうですね。詩織ちゃんやらなかったらどうなるの?」

「知らないよ。てか本当に停学になる気でいるの?」

「お兄さんが望むなら」


 桃花の返答に、詩織は絶句してしまう。

 当の本人は嬉しそうにしており、九月になってから詩織はため息が止まらない。


「まあ、せっかく詩織が美味しいご飯を作ってくれたし、冷めないうちに食べちゃおう」

「そうですね。食べるのに時間かかっちゃいますしい」

「それは手錠つけてるからだと思うな……」


 三人は座り、詩織特性の美味しいご飯を食べ出す。

 唐揚げは下味もされており、口に入れた瞬間に肉汁と共に醤油に風味が広がっていく。

 これなら何個でも食べれるだろう。


「桃花、ポテトサラダを口移し」

「はい」

「唐揚げじゃなくてポテトサラダ?」


 桃花はポテトサラダを口に含み、良平の顔の前に。


「ん……んちゅ、お兄さ……んん……」


 口の中にはかるポテトサラダを舌を使って全て自分の口の中に入れて食べていく。


「汚い……」


 唐揚げだったらまだわかるが、形がすぐ崩れるポテトサラダを口移しする二人を見て、詩織はドン引きしている。

 一方桃花はとても幸せそうな顔をしており、むしろもっとしてほしいと思っているだろう。

 良平は相変わらず表情に出ていないので、何を考えているかわからないが。


「お茶も口移しで飲もう」

「はい」

「ええー……」


 飲み物んですら口移ししている二人を見て、詩織はドン引きしながらご飯を食べるのだった。

 詩織が「お祝いなんてしない方が良かった……」と呟いたのは言うまでもない。

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