生理後
「お兄さん、生理終わりましたよ」
月曜日の朝、桃花が目覚めた良平に言った一言がそれだった。
生理が終われば良平は初めてを貰うと言ったため、桃花は朝から物凄くテンションが高い。
もう血は完全に出てないようなので、学校から帰ってきたら桃花は初めてを捧げるだろう。
「そうか。ついにか」
「はい。学校終わったらすぐに帰っていっぱいしましょう。詩織ちゃんには少し遅く帰ってきてもらって」
桃花のことだから、まず間違いなくしている時の声は我慢出来ない。
なので初めての時は詩織には外に出ていてもらう。
「いっぱいするのか?」
「はい。私にとってはずっと待ち望んでいたことですから」
学校で妊娠したと言って嘘をついてまで付き合おうとしたのだし、好きな人に初めてを捧げたいと思うのは自然なことだ。
良平が抱くと言ったのは、確実に桃花が頑張ったからだろう。
感情がほとんどない良平を脅して付き合うことになったが、それでも一途に諦めずに桃花が一生懸命だったからだ。
だから良平も桃花の想いに応えようとした。
感情を取り戻しつつあり、このままいけば良平が桃花にベタ惚れになることは火を見るより明らか。
「まずは学校だし、着替えようか」
「はい」
二人は着替え、ご飯を食べるためにリビングに向かった。
☆ ☆ ☆
「詩織ちゃん、もう生理終わったから今日は……」
学校へと向かっている最中、桃花は詩織にさりげなく遅く帰ってきてもらうようにお願いをする。
何のことだかすぐに察したらしく、詩織は「わかった」と頷く。
朝から今までにないくらいの笑みを浮かべているのだし、すぐに察することは出来るだろう。
「ヤりまくりなのは勘弁ね」
「それは……保証しかねるかな……」
桃花が「あはは……」と苦笑いしていることから、沢山するつもりなようだ。
「今まで心の奥底で溜め込んでたのが爆発したら凄そうだけど」
そう言いながら詩織は良平へと視線を向ける。
性欲が全くないと言ってもいいくらいに無反応だった良平が興奮したらどうなるか気になるのだろう。
「桃花が相手なら出来るだろうな。沢山かはわからないが」
「そう。悔いのないようにね」
「普段は手錠で繋いでいるくらいだから大丈夫」
「そうだった……」
二人が手錠をしていることに慣れてしまったようで、詩織は思わず苦笑してしまった。
手錠をしながら生活なんて普通じゃないし、今後も詩織の周りに二人以外には現れないだろう。
流石に外では外しているが、家ではほとんど手錠で繋いでいる。
「また外でもつけてみるか」
「やぁん。私がお兄さんのものって皆に伝わりますね」
「お願いだから本当に止めて。通報されたらシャレにならないよ」
感情が希薄なために、良平には羞恥心というのがない。
だから外で手錠をつけることも出来るし、この先も家では繋がったまま生活するだろう。
桃花は良平の言うことなら何でも聞いてしまうので、詩織が何を言っても無駄。
良平のために生きるのが桃花だ。
「了承を得てるんだからされないだろ」
「されるから。周りからはお兄ちゃんが桃花を誘拐したって思われるよ」
その言葉は良平にとって理解不能で、「うーん……」と首を傾げる。
一般的に考えて外で手錠をつけるなんてあり得ないが、良平にはその感覚がわからない。
やっぱり脳炎になったことがあるのが原因だろう。
普段の生活は問題ないのだが、後遺症で良平には常識が足りない。
「良くわからないけど通報されたら困るから止めとく」
「そうして」
やらないと言えば良平はやらないだろう。
何より警察に説明するのは面倒だ。
「まあ、手錠なんてしなくても桃花が離れることなんてないけどな」
「そうですね。私はお兄さんの側にいたいですし」
「じゃあ、手錠なんてしなくていいじゃん」
最もな意見である。
まだ桃花が良平に手錠をつける方が納得は出来そうだ。
「それにしても何か皆見てるな」
先ほどから同じ学校の生徒からの視線が良平たちに向けられている。
「お兄ちゃんが手錠つけて登校したからでしょ。私たちの学年でも噂になってるよ。学校一の美少女を手錠をつけて連れ回してる彼氏ってね」
「何それ?」
「知らないよ。お兄ちゃんの自業自得でしょ」
全くもってその通りだ。
手錠をつけて登校するなんて、どんなにSMが好きな人でもやらない。
「実は今も手錠持ってるんだが……」
「絶対につけないでね」
本気で手錠をつけようとする良平を、詩織は全力で止めるのだった。
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