掃除
「さあ、いつまでもくっついてないで、掃除を始めるよ」
日曜日。約束していた桃花の部屋を用意するために、これから掃除を始めようとしていた。
でも、良平と桃花はくっついて離れず、詩織が強制的に離そうと奮闘中。
「桃花の部屋って必要?」
「必要に決まってるでしょ」
あのイチャイチャぶりを見ている限り、二人でいては確実に勉強しない。
成績を下げないためにもどうしても桃花用の部屋は必要だし、詩織は絶対に部屋を掃除させようとするだろう。
「部屋があっても、私はずっとお兄さんといるよ」
「普段はいいよ。でも、テスト期間中は離れて勉強しないとダメでしょ」
「うぅ~……お兄さんが一秒たりとも離れなくていいと言ってくれたのに……」
「文句を言わない」
何を言っても無駄そうなので、良平は桃花の耳元で「夜にいっぱい気持ち良くさせてあげるから」と呟いてから離れた。
もちろん気持ち良くさせるのは噛みつくという意味で、いっぱいしてもらえるとわかって桃花は嬉しそうな顔をする。
そして腕捲りのポーズを取り、桃花は掃除をする部屋に入っていく。
「あちゃー、やっぱり少し埃があるか」
しばらく放置しているから、旅行で長期間家を空けていたかのようだ。
一応、テレビやベッド、テーブルなどの家具、家電はあるのだが、やはり掃除は必要不可欠。
両親がいたら掃除されていただろうけど、今年の春に父親の転勤が決まり、母親もついていってしまったため、誰も使っていない部屋は掃除されていない。
ちなみに桃花がここに住んでいるのは両親も知っている。
流石に両親の許可がなかったら、桃花を住まわせたりしないだろう。
「桃花はズボンじゃなくて大丈夫なの? 見えちゃうけど」
基本的に部屋着もスカートが多いようで、桃花がズボンをはいているとこは見たことがない。
今日は掃除をするのでしゃがんだりすると、スカートの中が見えてしまう。
「はい。お兄さんにはいっぱい見て欲しいです」
「そう……」
良平に見られたいのはいつも通りだが、掃除の時までそう思うようだ。
そんな桃花を見て、詩織はため息をつく。
「もうお兄さんには下着も裸も見られてますけどね」
「そうだな。肌はアニメのヒロインみたいに綺麗だった」
「そう思ってくれて物凄く嬉しいです」
これなら掃除するのにも関わらずイチャつく二人を見て、詩織はもうため息すらできなくなった。
「あのさ……掃除が終わったらいくらでもイチャついていいから、今は掃除に集中してくれないかな? 桃花は私の服を貸すからズボンに着替えること」
明らかに昨日の晩ご飯の時より詩織の機嫌が悪い。
カップルだったらご飯を食べさせ合ったりするから我慢はできるだろうが、流石に掃除の時は看過できないようだ。
詩織は文句を言っている桃花を自分の部屋に連れて行き、着替えさせに向かった。
☆ ☆ ☆
「着替えてなくない?」
着替えに行ったはずなのに、桃花の服は変わっていかなった。
「サイズが合わなかった……桃花スタイル良すぎ……」
詩織の言葉で全てを察した良平。
普通に考えたら詩織もスタイルは良い方だが、桃花のスタイルは圧倒的。
小柄な体型である桃花だけど、足は長くて腰は細くモデルを思わせる。
詩織もスタイルは良い方だが、やっぱり桃花には負けてしまう。
袖が長いだけだったら捲ればいいだけだけど、ウエストのサイズはどうしようもない。
桃花にとって詩織の服はでかいのだ。
「ベルト使えばいいんじゃないの?」
「ベルト使える服は貸したくない」
いくら親友とはいえ、貸したくない物もあるだろう。
桃花がズボンをはいていないということは、この家に持ってきていないのだろう。
部屋着はワンピースタイプか、良平のワイシャツを着ているかのどちらかだ。
「そうか。まあ、桃花にはしゃがまない作業をやらせればいいか」
「そうだね」
三人は部屋の掃除に取りかかる。
良平は高い箇所の埃を取っていき、桃花は掃除機で床を綺麗に、詩織は雑巾がけだ。
「自分の部屋だけでも大変なのに、他の部屋もやるの面倒」
「文句言わない。今までこの部屋を掃除してなかったツケがきただけだから」
そう言われるとぐうの音もでなくなってしまう。
どう考えても今まで掃除をしてこなかった自分たちが悪い。
「うぅ~……お兄さんとイチャイチャしたいよぉ……」
「いつもしてるでしょーが。少しくらい我慢しなさい」
掃除を始めて数分しかたっていないが、もう我慢できなくなってきた桃花に詩織は渇を入れる。
「桃花、少しだけ頑張ろう。終わったらずっとイチャイチャしていいから」
「お兄さんが言うなら頑張ります」
良平の言葉に張り切って掃除をしだす桃花。
「何でお兄ちゃんの言うことは聞くのかな?」
「彼氏の言うことを聞くのは当たり前じゃないの?」
「それはそうかもしれないけど……」
何やら納得できていなそうな顔をする詩織。
桃花にとって良平のことが最優先なので、彼氏のために頑張るこは当たり前。
だから良平の言葉は何でも聞く。
「掃除は頑張るけど、掃除機じゃお兄さんにサービスできません」
「しなくていいでしょーが」
「詩織はさっきからツッコミまくりだな。若いのに血圧上がるぞ」
「誰のせいだと思ってるのかな?」
詩織は二人に対して、少しの怒りの視線をぶつける。
「さて、掃除頑張るか」
「そうですね」
これ以上、詩織を怒らすと面倒なので、二人は真面目に掃除をするのであった。
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