お風呂で洗いっこ
「お兄さん、気持ちいいですか?」
「ああ。いい感じだ」
「良かったです。いっぱい気持ち良くなってください」
一組の男女──良平と桃花が裸になっていた。
とは言っても変なことをしているわけでなく、お風呂で桃花がシャンプーを手につけ、良平の頭を洗っている最中。
先日、桃花が良平の頭を洗たいと言っていたので、早速してもらっているのだ。
お風呂に入ろうとした時に詩織に見られて、何やらニヤニヤとしていたが。
「これなら毎日してもらうのもいいな」
「ふふ、毎日してあげますよ」
シャワーでお湯を出し、頭についた泡を丁寧に洗い流していく。
「背中も流してあげますよ」
「わかった」
せっかくなので、身体も洗ってもらうことにした。
「んん……んしょ……」
良平の身体を洗うだけなのに何故か変な声が聞こえ、思わず桃花の方を振り返ってしまう。
「俺の身体を洗うはずなのに、何で自分の身体を洗っているんだ?」
洗っているというと言うよりかは、ボディーソープを何故か自分の身体に塗りだくっているようにも見える。
特に大きく育った二つのマシュマロの部分に泡が多い。
「やぁん……見たいなら言ってくれればいいんですよ」
「違う。何で自分の身体にボディーソープを塗ってるのかって聞いてるの」
「私の身体でお兄さんの身体を洗ってあげようと思いまして」
まさかの言葉に良平は絶句してしまった。
「手で洗え手で。そっちの方が汚れが落ちる」
桃花は不満で頬を膨らまし、「わかりましたよ」と言って良平の身体を手で洗い始める。
好きな人の肌を直接触れるということで、桃花はゆっくりと丁寧に、なるべく時間をかけて洗っていく。
「いつまで洗ってるんだ?」
「だって……お兄さんの背中を直接触れるなんて滅多にないですから」
「そんなに触りたいのか?」
「はい。興奮してきます」
少し息が荒くなり、桃花は良平に抱きついてきた。
手ではなく肌と肌の直接的な触れ合い……桃花の頬が赤くなって蕩けたような表情に。
「お兄さ~ん……」
そう耳元で呟いて、桃花は良平に「ふぅ~」と息を吹き掛ける。
「桃花……それ以上してきたら、今後はイチャイチャするの禁止にするよ?」
「嫌……それだけは嫌です。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
蕩けた表情から一気に涙目に。
好意を持ってくれるのは嫌ではないが、こういったことをしたいから付き合っているわけではない。
エッチなことをしようとしたら、どんなに脅されようが別れるつもりだ。
そういった行為も愛の形になるかもしれないが、今はまだしたいと思わない。
「悪いな。今はキスやイチャイチャで我慢してくれ」
「こっちこそごめんなさい……暴走しちゃいました」
良平に嫌われることが一番嫌なので、桃花はエッチなことを我慢する。
「お兄さん……別れないでいてくれますか?」
今にも泣いてしまいそうな瞳で、良平のことを見つめる。
「暴走しない限りはね。初体験は俺が好きになった時……これだけは守ってほしい」
「はい」
別れないでいてくれるのが嬉しいのか、桃花は良平に抱きつく。
今度は興奮してではなく、ずっと離さないといった想いを込めて。
「基本的に別れることはないから安心していい。家にいる時はずっとくっついていていいから」
「はい。絶対に離れません」
別れない証拠を示すために、良平は桃花にキスをする。
朝の時とは違い完全に良平の意思でのキス……桃花は嬉しすぎてさらに離れられなくなる。
「俺に性欲があれば良かったんだけどね」
「普通の人並にあったら好きにならなかったかもしれませんが、今になってはそう思います」
良平に普通の高校生並の性欲があったとしたら、既に初体験を済ませていただろう。
というか脅されなくても付き合っていたかもしれない。
「少し悲しませちゃったから、俺が背中を流してあげるよ」
「いいんですか?」
「もちろん」
ボディーソープを手につけ、桃花の背中を洗っていく。
「んん……はぁん……」
「変な声を出すなよ」
「だって気持ち良いんですもん。やぁん……」
良平はため息をついた。
確かに身体を洗ってもらうのは気持ち良いことだが、こんな声が出るほどなのだろうか?
桃花が敏感なだけの可能性があるのだが。
「前は自分で洗って」
「はい。お兄さんが洗ってくれるのが一番なんですけどね」
「前はそのうちな」
「てことはそのうちお兄さんは私のことを好きになってくれるんですね」
「絶対とは言えない」
「ふふ、詩織ちゃんが言っていたように、愛し合えるのは遠くないかもしれませんね」
好きになることは絶対とは言えないが、否定もできなかった。
「何か返事を保留しているクズ男みたいだな」
「お兄さんはクズなんかじゃありません。私が脅して付き合ってもらってるんですから」
確かに桃花ほどの美少女から告白されたら、好きでなくても付き合っているだろう。
絶対に彼氏なのをいいことに、桃花にイチャイチャしたり、エッチなことをしてくる。
良平は彼氏の名目を使わず、基本的にそんなことをしない。
「私はお兄さんといれて幸せですから。本当にもっと早く告白すれば良かったと思うくらいに」
桃花は良平の手をつかみ、自分の頬まで持ってきた。
「お兄さんの手温かい……ずっと触ってていたいです」
「これからいっぱい触れるよ」
「そうですね」
二人は身体を洗った後に、少しだけ湯船に使って上がった。
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