第533話【異世界食糧計画(AFP)3】

<<イリヤ視点>>

AFPの存在感が大きく認知され、各星からの食糧物資援助の申し出も増えています。


非常に有難いことなのですが、いくつかの問題も出てきました。


一つ目は保存場所と、賞味期限管理です。


亜空間バッグに入れれば、大量に賞味期限を気にせずに仕舞えるため、一見問題なさそうですが、問題は、どの亜空間バッグにどのくらい入れれば良いか?と、その亜空間バッグの管理をどうすれば良いか?にあります。


「これは困ったね。亜空間はそれぞれ独立しているからなあ。

全ての国営倉庫の場所にマジックバッグを置くにしても、とこにどのくらいを入れておけば良いのか、想像もつかないや。」


食糧はかなりの数が集まっていますし、お兄様がセカンズで狩ってきた魔物も含めると、量的には1年分くらいは有りそうなんですけど、各マジックバッグに余裕を見て入れるほどではありません。


さて、どうしたものでしょうか。


「そんなの簡単じゃない。」


いつの間に現れたのか、マリス様が、声を掛けてきました。


「マリス様、何かアイデアがありますか?」


「当然よ。マサルさんに相談すればいいのよ。」


バタンバタバタバタ


思わず椅子から落ちそうになりましたが、隣にいたお兄様や司令室の皆さんは、それぞれ椅子から転げていました。


「まっ、まさかのマリス様発想!


でもこんなことでお父様を頼るのも……………」


「……マサルさん、ちょっと相談があるのよ。


司令室まで来れない?」


お父様って、今マリス様の上司じゃなかったっけ。


「マリスさん、会議中だったんですけど…」


数分後、お父様が司令室にやって来ました。


相変わらず律儀というか真面目というか。


「マサルさん、突然呼び出してごめんね。


実はね、えーと、イリヤちゃん、說明をお願い。」


お父様に食糧の配り方について相談します。


いくらお父様でも、こんな相談、困るよね。


「う~~ん、事情は理解した。


要は1つの巨大な亜空間に出口をたくさん作れば良いんだよね。


だけど、大き過ぎたら取り出す時に、大変だから…インベントリを分けると…

でもインベントリ間の移動が大変そうだな………


そうだ!インデックスを張ったらどうだろうか。


プライマリインデックスを張って、セカンダリは…


駄目だな、リレーショナル型だと再構築に時間が掛かり過ぎる。


ならばオブジェクト型ならどうだ。


それぞれの保管物をタイプ別にクラス化して……、そうだクラスの中に場所情報を持たせよう。


そして保管物それぞれをインスタンスにしてっと…。


これなら、場所で検索も出来るし、関連する情報も一元管理出来るな。


あとは亜空間にどうやってオブジェクト指向を適用するかだが…


う~~ん、インベントリ自体の動きがアバウト過ぎるから、亜空間の保存形式が想像出来ないよ。


よし、ならばオブジェクト指向データベース自体を作ってしまうか。


まだ、そのほうがイメージしやすい。


そうと決まれば、データベースの専門家を呼ぼう。」


何かわけの分からないことをブツブツ呟いていたかと思うと、お父様はそのまま何処かへ転移してしまいました。


そして5分後、戻って来たお父様は数人のアース人を連れて戻って来たのです。



「マサル様、こんな感じのデータ構造でよろしいでしょうか?」


「そうですね。さすがはデータベースの大家。


一介のサラリーマンだった俺にはここまで細かくは作れませんでしたよ。」


「いやいや、ここまでは地球の知識で何とかなるものです。


問題はここからですぞ。


この亜空間というところにどうやってファイルシステムを持たせるか…」


「たしか、ハードディスクの円盤上をビット単位に振り分けてそこにアドレスを与えてやるんでしたよね。


それから実際に保管するファイルを断片化されたセグメント単位に分けて、それぞれのアドレスの始点と終点のアドレスをチェーンで繋いだFATを作れば良いんですよね。」


「ええ、かなり初期の考え方ではありますが、単純な検索だけであれば十分でしょう。」


「了解です。理屈さえ分かればイメージしやすいので、作れると思いますよ。


亜空間ファイルシステム構築!」


お父様の目の前には小さなブラックボックスのような暗い円が開き、その横にはアースの博物館で見たことのあるモニターとキーボードが現れました。


恐らく、亜空間ファイルシステムとか言う物と、それをコントロールするための装置なんでしょうね。


相変わらず出鱈目な魔法です。


「おお!!懐かしいコンソールですな。


コマンドプロンプトまで出ているじゃないですか!


これなら、わたしの知識と魔法で、オブジェクト指向データベースを作り込むことが出来ます。


いやあ、素晴らしい!」


…………………………


3日後、全ての街や村に必要な物資を無事に届けることが出来たんです。


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