第488話【マサル異世界を創る2】

<<アルト視点>>

『星の創り方 レシピその1


まず手頃な場所を物色します。


宇宙には川のような魔素の流れがあります。

この魔素の流れの上に創ってはいけません。あまりに近くてもダメです。


時折発生する魔素の氾濫に流されてしまう恐れがあります。


但し遠すぎると、魔素の影響が受けられなくなるので、魔法が使えない星になるので注意が必要です。』


「ヤルタ、まず場所選びだってよ。どこか適当なところはないか?」


「今地図で調べてる。シール先輩からこの近くの魔素地図を借りたから、たぶんそんなにかからないと思うよ。


うん? アルト、スイム、ここなんかどうだ?」


「細い魔素の流れが3方から流れてきて合流する手前辺りだね。

太い流れからも離れているし、このくらいの細さじゃ氾濫の危険も少ないかもね。」


「うー-ん、細かい塵が多いのがちょっと気になるけど。それに、こんな条件の良さそうな場所が空いているのも気になるなあ。」


「ほら、スイムは考えすぎだよ。細かい塵が多い方が星を生成し易いじゃないか。」


「たしかにそうかもなあ。でも気になるんだよなあ。」


今回、室長や先輩達に質問するのは禁止されています。


その上、なんだかよく分からない人達が、ずうーっと僕達と行動を共にしてるんですよ。


室長にはどこかの会社の視察の人達だって聞いてます。


そこの会社発行の社内報か何かに特集記事として載せたいから、取材させて欲しいって。


あっそうだ、言い忘れてましたけど、僕達はこの仕事が終わるまで共同生活しています。


3人で一部屋借りて、そこが今回のプロジェクト室兼住居って感じです。


ジェイドさん、あっ、取材の方達のリーダーさんですけど、この人もこの部屋の隣に部屋を借りて住んでいるみたいです。


何か密着取材されているみたいで、緊張しちゃいますね。



さて、話しは戻りますが、細い魔素の流れが集まって太い流れに合流する手前に場所を決めました。


三角州って言うんですかね。緩やかに流れている魔素が合流している場所なので魔素の量は豊富です。


ちょろちょろ流れてくる魔素が集まってその一角だけ魔素が肥沃なんですね。


しかもその流れに乗ってきたのでしょうか。星の素になる塵も豊富です。



『星の創り方 レシピその2


星を創る場所が決まったら、中心に核を置きます。


次に核の周りに塵を集めて下さい。最初は小さな塵を置いてその塵が溶けたら少しずつ大きな塵を置いていきます。


核は魔素を吸うと高温になりますので、気を付けて下さい。


なお、最初から大きな塵を置いてしまうと、溶け方が不完全な場合があり、上手く星として固まらないことがあるので注意が必要です。』



「さあ、始めるぞ!スイム、核をひとつ置いてくれ。

ヤルタは風の魔道具で細かい塵を集めてくれ。俺は大きめの塵を集めてくるよ。」


ポーラ先輩からこの時の塵の大きさが重要だって聞いていました。


時間経過と共に出来るだけ均等な大きさのものを用意した方が溶け易くて不完全なところが残りにくいそうです。


また、適度に風を送ってやると均一に熱が通り易いって言ってました。


さて、塵もかなり集まりました。小さな星を10個くらい創る予定なので、それなりの量が必要です。


ヤルタが三角州の真ん中辺りに細かな塵を10ヶ所に分けて集めてくれました。

三角州内にあったたくさんの細かな塵が10個の山となっています。


その山の中にはスイムが置いた核が埋まっているのです。


集めてきた少し大きめの塵を10ヶ所に山の近くに均等に配置していきます。


核の高温で山が溶けだしたら、そこに投入できるような配置です。


「ふうー-。こんな感じかな。」


「そうだね、前に読んだマニュアルに書かれていた見本映像と似ているね。」


「プロジェクト〇『地球誕生秘話』で見たのもこんな感じだった。」


「じゃあ大丈夫かな。よし、核に点火していくぞ。」


端の方にある1つ目の核から点火していきます。


いきなり全部ってわけにはいきませんから。


「点火!」


点火の魔道具を1つ目の山に近付けると、山の中から赤い光が見え出し、直ぐに煙が立ち上って来ました。


やがて赤い光は輝きを増し、塵の山が徐々に溶けて崩れていきます。


溶けた塵は核に吸い込まれるように吸収され、核が少しづつ大きくなっていくのが分かります。


あらかた山が核に吸収されてきたので、近くに置いておいた少し大きめの塵から投入していきます。


少しずつ、大きさが均等になるように確認しながら核に乗せていくと、核の熱もどんどん上がっていくようです。


溶ける速度がかなり早くなってきたので、どんどん塵を追加していきます。


そしてついに1つ目の星の原型が完成したのでした。


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