第442話【ユートピア計画5】
<<ランス視点>>
お父様から連絡がきた。
宇宙清掃用の魔道具を強化したものと、恒星系を越えられる性能のロケットを用意しておくようにって。
ロケットに関しては恒星間を行き来するためのものがあるから良いとして、宇宙清掃用の魔道具って何に使うんだろうか。
あれって確か『電子レンジ』とかっていうアースの生活用品からヒントを得て作ったものだよね。
航路を確保するために宇宙にある細かい塵を除去する目的だったのが、マリス様の目に留まって、新たに星を作成する時の場所確保にも利用できるように拡張したやつ。
それをさらに強化するって、いったい何を作りたいんだろうか。
そんなことを考えながらも、せっせと宇宙清掃用の魔道具強化に取り組む。
「ふう、こんなもんかな。」
「お兄様~~」
「おっイリヤか。お兄様って呼ぶところを見るとお客様が一緒かな。」
イリヤに続いて転移魔方陣に現れたのはお父様と同じアース人の人達10人くらい。
「お兄様、お父様に頼まれていたロケットと装置出来ている?」
「ああ、出来てるよ。」
「良かった。あっこれね。じゃあ皆んな頼んだわよ。ジャンジャン複製しちゃって。」
アース人達は、ロケットとさっきできたばかりの装置を魔法で複製していった。
「イリヤ何をしてるんだい?」
「えっ、お父様から何も聞いていない?」
「ロケットとこの装置を用意するようには言われたけど。」
「そうなんだ。さすがのお父様も今回はかなり焦っているみたいね。
実は、この装置を国際連合加盟国全ての国に送ることになっているの。
それでね、もし星ごと誘拐されても、これを使って閉じ込められている時空空間を破壊しようってわけ。」
「はあああーーー?」
「今全てを話す時間が勿体ないから手短に話すと、今回の事件の黒幕と誘拐の手口が大体わかってきたのよ。
それに対抗するための処置よ。」
「なるほど、巨大な容積を持つ時空空間に誘拐された星が閉じ込められているってことか。
時空空間は物理攻撃が利かないから、内側から電磁波で壊せないかって発想だね。」
「さっすがお兄ちゃん。ご名答よ。じゃあ複製も終わったみたいだから、各星に配ってくるわ。じゃあね。」
そう言ってイリヤ達はそれぞれの転移魔方陣に乗って飛んで行ってしまった。
<<マイク視点>>
俺は今クーペ星にいる。マサル様から直接指示を受けてやって来たんだ。
マサル様曰く、今度狙われる可能性が高いのがこのクーペ星らしい。
先程まで秘密兵器を持ってきたイリヤ様と一緒にこの星の王と打ち合わせをしてきたところだ。
王には次狙われるかもしれないということは伏せてある。結構平和ボケしている星だから、そんなことを言ったら星自体がパニックになってしまう恐れがあるからな。
まあ、マサル様曰く、誘拐されても絶対気付かないだろうってことだけど。
俺はマサル様からある魔道具を渡されている。
恒星系を越えた星を観測できるものだ。観測って言っても目で見るようなものでは無い。
温度や湿度、大気の状況などを読み取れる優れものだ。
どうやら誘拐された後は恒星系、つまり地球で言うと太陽系ごと時空空間に閉じ込められるらしい。
だから恒星系外の星の状況が不明になったら誘拐されたと判断できるらしいのだ。
そして誘拐されたとわかったら、今回イリヤ様が持ち込んだロケットを恒星系外に
多数打ち込んで、内側から時空空間を破壊してやろうって寸法だ。
時空空間っていうと、あの魔物が大量発生する穴だな。あんなところに恒星系が入っちまうなんて、ちょっと考えられないが、マサル様がそう言うんだから間違いないだろう。
あっそうそう、俺と同じようにムラマサ達も同じ使命を持って他の星に散らばっているはずだ。
さあ、いつでも来やがれってんだ。
<<マサル視点>>
イリヤから、準備完了の知らせが届いた。
国際連合総長であるランスに先に連絡していなかったことを怒られてしまった。
俺としたことが、今回ばかりは焦っているのだな。
気を静めて落ち着かなければ。
一息つくために自動販売機のところまで行ってコヒーを飲む。
やるべきことはやったはずだ。心を落ち着かせて今までの作戦行動を振り返ってみる。
電波振動による時空空間の破壊か。
成功するかどうかはやってみないと分からないっていうのが本音だが、構造上物理攻撃は全く不可能だろう。
となれば振動による破壊になるが、空気の無い宇宙の事、電波を震えさせるくらいしか思いつかない。
まあ、何もやらないよりは何事もやってみてからだな。
そんなことを考えていると、イリヤから緊急連絡が入った。
クーペ星に駐留しているマイク君からの存在確認が消えたそうだ。
どうやらクーペ星を含めた恒星系が丸ごと消えてしまったらしい。
さあ、マイク君は上手くやってくれるだろうかな。
<<マイク視点>>
突然恒星外の星を監視していた装置から警報が鳴り出した。
その星が消えてしまったのだ。いや正確に言うと、その星が消えたのではなく俺が今いるこの星が時空空間に飲み込まれたのだろう。
マサル様の仰ってた通りになったようだ。
俺はロケットの発射スイッチを迷わず押す。
ロケット達は魔方陣を通して音も無く、恒星系外に飛んで行った。
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